水平思考ショートストーリー

顎(あご)

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・ワニの人質

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 とある川のほとりで、親子が遊んでいた。 そこへ、一匹の大きなワニがやってきて子供を捕まえてしまった。

 「お願いワニさん! 私の子を食べないで!」母親は泣いて訴えた。

 「せっかくのご馳走だ、簡単には返してやれないな」ワニは真っ赤な口を開いて言った。

 「お願い、一回だけチャンスをちょうだい」

 「それなら、俺がこれからやることを言い当ててみろ! そしたら子供を返してやる! だがもしハズレなら、躊躇なくこの場で食ってやるからな!」
 もちろんワニは最初から子供を返す気など無かった。もし母親が正解を言ったとしても適当に嘘をついて子供を喰ってしまおうと考えていた。

 心の中でほくそ笑むワニをよそに、母親は少し考えてから、こう答えた

 「分かった。ワニさんは今から私の子供を食べるつもりね」

 「ガハハハ!! 残念だがハズレだ! それじゃあいただきま……あれ?」

 ワニは大口を開けたままピタリと動かなくなった。

 母親はワニの腕から我が子を取り返すと、口をあんぐりと開けたまま茫然と立ち尽くすワニを残し、悠々と川を後にした。


 なぜワニは動かなくなってしまったのか?

















【解説】
 ワニが子供を食べる場合、母親の答えは正解となるので食べる事はできない。ワニが子供を食べない場合、母親は不正解となる為子供を食べる事が出来るが、食べようとした瞬間母親の答えが正解となってしまう為、やはり子供を食べる事が出来ない。
 
 ワニが子供を食べようが、食べまいが自己矛盾に突き当たり身動き出来なくなってしまうのだ。

 

 
 
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