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第4章
12.トゥ・ゴゥ(13)
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京介と過ごした夜の濃密な甘さに蕩けた後、お互いを抱き締めあって布団に潜りながら交わす会話は優しかった。
「海、でしょ?」
「うん」
「真っ白な、海」
「そう」
「京介が見てるの、見えました」
「美並も見てた?」
「綺麗でしたね」
「綺麗だったね」
「あんなのが見えたの初めてです」
「僕も」
熱を交わすだけではなくて、この時間があるから人は、繰り返し体を求めるのではないか。
磨かれて静謐な感覚で、美並はまだ頬を染めて嬉しそうな真崎を見つめる。
「また見たいね………美並?」
沈黙した美並に真崎は敏感に反応した。
静かな海だった。思い出すと気持ちが広がり心が和む。
けれどそれだけではなくて、そこで美並は何者かに出会った気がした。
出逢った何者かに強く励まされた気がした。
進もう、前へ。
「話さなくちゃいけないことがあります」
ごくり、と真崎の喉仏が動いた。さっきまで切ない声をあげ続けていた部分だと思うと気恥ずかしくて、照れ臭い。それでも冷静になりたくて、布団を押し開けると、真崎も手を添えてくれた。
「……ひょっとして……もうこれで終わりとか、そういうのじゃないよね?」
不安そうな声に微笑む。
「孝さんのことです」
「孝?」
真崎が眉を寄せた。すぐに熱を落として静かな色をたたえる瞳に、少し惚れ直す。
「孝さんを殺した犯人」
「うん…」
続くことばを真崎は受け止められるだろうか。
「私が捕まえられるかもしれません」
「捕まえる…」
繰り返しても顔が呆然としている。
かもしれない、でない。捕まえるつもりだ。
わたしのいみはなんですか。
真崎に求めるものではなかった。自分で証明しなくてはならなかったのだ。
見えないものを見てきた。
それが美並のありようで、そのようにしか生きられないなら、それを全うすることで意味が見えて来るのかもしれない。
「だから、京介……この指輪を預かっておいて下さい」
汗で濡れた指から、そっと指輪を抜き取った。
真崎はきっと誤解している。顔色がもう真っ白だ。
それでも約束でき、願うことができるのは一つだった。
「京介、そこに居て下さい」
伝えたい。伝わってほしい。
今ほど真崎を望んだことなどない。
シャワーを浴びながら、周囲の光景が粉々に崩れて行くような喪失感を味わっていた。その足元に、ただ、真崎の存在があるのを感じ取っていた。
だから。
「どうか、お願い、そこに居て下さい」
指を絡め、真崎の手を額に当てて懇願する。
「無理を言っているのはわかっています。京介が不安なこと、辛いこと、大変なこともわかっています。けれど……私に行かせて」
誰にも見えない姿を、誰でも見える姿に浮き彫りにするために。
誰にも触れられない真実を、誰もが掴める現実にするために。
「美並………っ」
滲んだ涙を見られたくない、そんなちっぽけなプライドがまだ邪魔をする。
首に吸い付き、跡を残した。
「京介……京介」
「あ…あ」
震える声をあげて、呆然としていた真崎が自分を引き寄せてくれて。
擦り寄った体の耳を含んで声をあげさせ、微笑んで涙した。
戻らなくては。
ここへ絶対戻らなくては。
『誰か』を認識できなくなるような日々に落ち込む前に。
とろけた顔で目を開けた相手を見つめ、溢れる涙に構わず呟く。
「愛してます」
真崎が息を呑む。
「あなたを」
「…み」
「誰よりも、大事に想ってる」
もう一度、刻印を重ねる。
「待って……る…っ」
喘ぎながら誓う声に頷いた。
「君だけを待っている、ずっと、ここで」
「……京介…っ」
もし、二度と帰れない旅路に向かうとしても、真崎は同じ答えをくれるだろう、美並が待って欲しいと願ったのだから。
その信頼に、胸が詰まった。
「海、でしょ?」
「うん」
「真っ白な、海」
「そう」
「京介が見てるの、見えました」
「美並も見てた?」
「綺麗でしたね」
「綺麗だったね」
「あんなのが見えたの初めてです」
「僕も」
熱を交わすだけではなくて、この時間があるから人は、繰り返し体を求めるのではないか。
磨かれて静謐な感覚で、美並はまだ頬を染めて嬉しそうな真崎を見つめる。
「また見たいね………美並?」
沈黙した美並に真崎は敏感に反応した。
静かな海だった。思い出すと気持ちが広がり心が和む。
けれどそれだけではなくて、そこで美並は何者かに出会った気がした。
出逢った何者かに強く励まされた気がした。
進もう、前へ。
「話さなくちゃいけないことがあります」
ごくり、と真崎の喉仏が動いた。さっきまで切ない声をあげ続けていた部分だと思うと気恥ずかしくて、照れ臭い。それでも冷静になりたくて、布団を押し開けると、真崎も手を添えてくれた。
「……ひょっとして……もうこれで終わりとか、そういうのじゃないよね?」
不安そうな声に微笑む。
「孝さんのことです」
「孝?」
真崎が眉を寄せた。すぐに熱を落として静かな色をたたえる瞳に、少し惚れ直す。
「孝さんを殺した犯人」
「うん…」
続くことばを真崎は受け止められるだろうか。
「私が捕まえられるかもしれません」
「捕まえる…」
繰り返しても顔が呆然としている。
かもしれない、でない。捕まえるつもりだ。
わたしのいみはなんですか。
真崎に求めるものではなかった。自分で証明しなくてはならなかったのだ。
見えないものを見てきた。
それが美並のありようで、そのようにしか生きられないなら、それを全うすることで意味が見えて来るのかもしれない。
「だから、京介……この指輪を預かっておいて下さい」
汗で濡れた指から、そっと指輪を抜き取った。
真崎はきっと誤解している。顔色がもう真っ白だ。
それでも約束でき、願うことができるのは一つだった。
「京介、そこに居て下さい」
伝えたい。伝わってほしい。
今ほど真崎を望んだことなどない。
シャワーを浴びながら、周囲の光景が粉々に崩れて行くような喪失感を味わっていた。その足元に、ただ、真崎の存在があるのを感じ取っていた。
だから。
「どうか、お願い、そこに居て下さい」
指を絡め、真崎の手を額に当てて懇願する。
「無理を言っているのはわかっています。京介が不安なこと、辛いこと、大変なこともわかっています。けれど……私に行かせて」
誰にも見えない姿を、誰でも見える姿に浮き彫りにするために。
誰にも触れられない真実を、誰もが掴める現実にするために。
「美並………っ」
滲んだ涙を見られたくない、そんなちっぽけなプライドがまだ邪魔をする。
首に吸い付き、跡を残した。
「京介……京介」
「あ…あ」
震える声をあげて、呆然としていた真崎が自分を引き寄せてくれて。
擦り寄った体の耳を含んで声をあげさせ、微笑んで涙した。
戻らなくては。
ここへ絶対戻らなくては。
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「愛してます」
真崎が息を呑む。
「あなたを」
「…み」
「誰よりも、大事に想ってる」
もう一度、刻印を重ねる。
「待って……る…っ」
喘ぎながら誓う声に頷いた。
「君だけを待っている、ずっと、ここで」
「……京介…っ」
もし、二度と帰れない旅路に向かうとしても、真崎は同じ答えをくれるだろう、美並が待って欲しいと願ったのだから。
その信頼に、胸が詰まった。
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