嫌われ者の僕

みるきぃ

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男前風紀委員長

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腰もしっかり押さえつけ、離れられなかった。




「─なにあれ」

「─もしかして、最中なんじゃね?」




僕たちに向かってさっき歩いていた人たちがそう話している。




「ん?誰だ、お前ら!!こっち見んじゃねぇ!雑魚ども!」



すると、花園くんも気づきすぐさまその人たちに毒を飛ばす。僕はその途端に顔を花園くんの胸板に押さえつけられた。






「中に入るぞ!」


花園くんはそう言ってドアを開け、僕を抱えて中に急いで入った。





「─今の小さい子誰、すげぇ美少年…」


「─泣きそうな顔してたよ。あれ無理矢理?超可愛かった…つか、あんな子いたっけ?」





バタンッー



「い、痛いで…す、っ、花園く、ん」




抱えられたまま、寝室のベッドに投げられた。





「はっ、痛い?あおいより俺の方がもっともっと、…ものすごく痛いんだよ! 」




「ご、ごめ、あっ、いッ!」


また前髪を掴まれる。





「その袋なに」


花園くんの目線が下にいく。



「こ、これは」



花園くんにプレゼントとして渡そうとしたもの。クッキーと花の人形。こんなものあげたら余計に怒らせてしまうかもしれない。何も答えない僕に痺れを切らしたのか袋を奪い取り中身を出した。

 

「あーーー!!もしかして、これ神影にもらったのか!」



「ち、ちがっ…!」



それは花園くんにあげようと僕が買ったもの。もしかして、さっき会長さんと会ってるところを見て…勘違いしてるんだ。



「このくそ!こうしてやる!」



花園くんはさっき袋から出した花の人形を手にとって顔を強く引っ張って引きちぎった。




「っあ、」


待ってと止める時間もないくらい簡単に引きちぎってしまった。



…うそ。無残にも顔と体が離れ、中からは綿が出ている。



「何で泣くんだ!そんなに大事なのかよ!!…俺があげたもの取られた時、そんな顔しなかったのに他の奴からもらったものだとそんな顔して…ッ!」



花園くんは、力強くそのバラバラになった人形を床に投げ捨てる。視界が涙でぼやける。違う。これは誰からもらったものでもない。花園くんにプレゼントするために買ったもの。まさか、こんなことになるなんて…。数分前、これをプレゼントして喜んでくれる花園くんを勝手に想像していた。だけど僕がすることはいつも悪い方向に行ってしまう。





きっと、言葉が足りないから。

だから何も伝わらない。



ゆっくりと僕は伝えるため口を開く。



「は、花園くん…それは、じ、自分で買ったんだ…、だから誰からももらってない」



涙を拭って、僕はわかってほしくて言葉に出した。



「じゃあ、何のために買ったんだよ!こんなもの!!」



「…っ」



な、何のために…。言葉が出てこない。花園くんにプレゼントするためにって言えばいいのに出てこない。だって、あげる予定だったそれは引きちぎられて綿が出て…。今さら言えるはずない。




きっと言ってしまえば、花園くんを傷つける。僕は後先何も考えず言ってしまったのが間違いだった。



「…クソッ!ほら何も言えねぇじゃないか!!あおいの嘘つき!!!!!俺を騙そうとした!!」





「んむっ!」



頬をぎゅっと掴まれる。

い、痛い…。




「…あおい、舌を出せ」



花園くんはかなり怒っている。



「ほら、はやく!!」



ビクッ


こくりと頷き、震えながら花園くんの言う通りにする。羞恥が襲うが、ゆっくりと舌を出すと花園くんは躊躇いもなく僕の舌をくわえて、食べるように覆った。



く、苦しい…。



何で花園くんがこんなことしてるのか分からない。怒っているのはわかるけど、何でこんな…。それが済んだあと、花園くんは口角をあげる。




「あおいは俺の運命の相手。それをわからせてやる」




そう言って、熱い視線で花園くんは僕のシャツのボタンを外した。







ガブッー


「い、…痛いッ」




強く、血が出るほど僕の首の近くを噛む。それは一ヶ所にとどまらず場所をかえていく。そして、痛みがじりじりと広がっていった。歯形だらけで紅くなっていた。





こ、怖い…。

怖い…怖い。





に、逃げたい。

今すぐここから離れたい。




恐怖に僕は、そんなことを考える。





だ、誰か…誰か助けて。

…痛い。



誰も僕なんか助ける人いないのにそう願ってしまう。…花園くんがおかしい。普段の花園くんと今の花園くんは全くの別人みたいだ。僕が知ってる花園くんは、こんな顔しない。きっと僕がそうさせてしまっている。



最低だ…。何とかして…離れなきゃ花園くんを不幸にさせてしまう。



「は、花園くん…っ」



もう僕は花園くんの隣にいる資格ない。友達って言ってくれて嬉しかった。浮かれた自分もいた。だけど、もう僕が隣にいたらきっと駄目になる。だからこれでもう最後。



ちゅっー

僕は花園くんの頬にキスを落とした。今までありがとうの意味を込めて…。



「えっ…あおい…今。…あおいから…」



花園くんは、ハッと思考がとまり、頬を押さえた。



「ご、ごめんね…今までありがとう…っ」


僕はそう言って、花園くんから抜け出し、そのまま走って飛び出した。




…泣くな、弱虫。涙を拭い、僕はひたすら走った。とりあえず走った。僕と関わらない方がきっと花園くんもいいに決まってる。会長さんも花園くんも怒らせてそんなの嫌なのに…僕はどうすればいいだ。




「──あおい?あおいだよな…?おい、何があった」




あ、れ…?この凛々しい声って…。走るのに夢中になっていた僕は立ち止まって、前方から歩いてきた委員長さんとばったり会ってしまった。



「い、委員長さん…」


まさか、こんな時に会うなんて…




「お前眼鏡はどうした?それに何でそんな格好…、ボロボロじゃないか」



僕はそのまま飛び出して来たからシャツは乱れ、ボタンが全部外された状態。眼鏡は花園くんのところに忘れてしまったけど予備はある。





「え、これは…その」



委員長さんにまで迷惑をかけてしまう。早くどうにかして、説明してこの場を切り抜けなきゃ。だけど、頭が混乱していて上手く言えない。何をどう言えば大丈夫なのかもわからない。考えれば考えるほど、頭の整理ができない。




『あおいーーーー!!!何で逃げるんだ!!』





ビクッ

「…っ!」




すると、まだ姿は見えてないけど遠くから花園くんの大きな声が聞こえてくる。


は、花園くん…。ど、どうしよ。せっかく逃げてきたのに…。




「…なるほど、理解した。そういうことか。こっちに来い」



「え、ちょ…あのっ」




何かを察した委員長さんは僕の手を握り、そのまま手を引いてどこかへ連れて行った。連れてこられた場所はあの豪華な雰囲気が漂う風紀室。




「…これは酷いな」


委員長さんは、僕の首元を見てそう痛々しく言った。そして、奥の部屋から救急箱を持ってきて手当てをしてくれた。




「歯形がこんなくっきり…どんだけマーキングされてんの」



「い、痛っ…」



少し消毒がしみて、電気が走った感覚になった。



「すまない。加減ができていなかった」




次は優しく、鑷子を用いて綿球をポンポンと消毒してくれた。




「い、いえ…大丈夫です。こ、こんなことまでさせてごめんなさい…でも、ありがとうございます」



消毒は少ししみて痛いけど、軽くなった気がした。委員長さんには助けられてばかりだ。




「気にするな。前にも言っただろ。何かあったら俺がいるって」

 

本当に委員長さんは頼りになる人だ…。


で、でも



「…っそ、そんな恐れ多いです…もうこれで大丈夫なのでありがとうございます」


僕と関わったら委員長さんまで不幸な目に合わせる。


「何を言っている。俺は風紀委員長だ。こんなことがあって見逃せるほど馬鹿じゃない」



委員長さんは、真っ直ぐに何の揺れもなく言った。




「…っ」



唇が震える。


涙もろいのは昔からだけど優しくされるのはやっぱり不慣れで温かさを感じて泣けてくる。




「お前の痛みはよく伝わってくる。ここなら誰も責めないから安心してもいい」



委員長さんは、泣きそうな僕の頭を優しく撫でる。





…僕、本当



「…ご、ごめんなさ…いっ」



涙が次々に溢れてくる。一度出ると止まることを知らない。



「そうだ、弱くなっていい。…まーた、風邪引きそうな格好になってるからボタンを留めるぞ」


委員長さんは、クスッと小さく笑い、僕のシャツのボタンを一つずつゆっくりと丁寧にかけ直してくれた。それから涙も止まり少し落ち着いて、委員長さんは温かい紅茶を淹れてくれた。




「で、他には何もされてないか?」



「はい、大丈夫です。されてません…。あ、あの今日は本当にありがとうございました…紅茶も美味しかったです」


飲み終えた紅茶のカップをご馳走さまでしたと言って机に置いた。




「そうか、ならいい。もし、何かあったらすぐここに来い。俺が守ってやるから」




委員長さんは、風紀委員長ってこともあって本当にかなりしっかりしている人だ。こんな僕相手にも真剣になってくれるなんて尊敬する。





「…と、とても嬉しいです。ありがとうございます」


委員長さんのその優しい言葉。弱い僕は、その優しさに甘えたくなってしまう。





───
─────

……。



 



「なぁ!こっちを向いて!!あおいーーー!!!!あおいってば!!」




あれから一週間が経ち、花園くんは登校できるようになった。



「俺を置いて先に行くなよな!!せっかく迎えに行ったのにあおいいないし」


僕はなるべく花園くんと顔を合わさないようにしている。


顔を見なくても、花園くんは今頬を膨らませて不機嫌になっていると思う。僕は、花園くんと関わるのはあれで最後にした。だけど、花園くんはまたこうやって僕に話しかけてきてくれる。正直、こうやってずっと無視するのはとても胸が苦しい。僕だって、誰かに無視されるのは辛い。だけど、それよりも僕と関わって不幸にさせるのはもっと嫌だ。だからできるだけ花園くんとは距離を置きたい。




「あーおーい!俺、もうあのことは怒ってないから俺のこと見て?なあ!」



花園くんは椅子に座っている僕を後ろから抱き締めてそう言った。








ごめんね…花園くん。

もう傷つけたくないんだ…。
 








僕は本当に最低な人間。



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