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爽やかストーカー
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しおりを挟む【中野健太side】
1年Dクラス。中野健太。皆からは爽やかスポーツマンなんて言われている。まぁ、なんせDクラスはスポーツ中心のクラスだからね。
俺はその中でもズバ抜けて運動神経が良い方に当たる。
「おーい、中野ー」
クラスメートの一人が俺の名前を呼んだ。
「なに?」
すると、なかなか言いにくそうな顔をしていた。これは嫌な予感がするとすぐに察した。
「マジわりぃけどさ、俺、今週体育倉庫のボール数える担当でそれなのに今週ずっと指導されることになっちまってて…中野頼む!お前が当番の週、俺がやるから交換してくれ」
手のひらを合わせて俺に懇願してくる。
今は授業が終わり、放課後。
ちっ。この後、“大事な用事”があるってんのにこのクソが。俺が爽やかだから何でも引き受けると思い込みやがって。内心、悪態ばかりついていて実際は爽やかもクソもない。正直無理だ。でも、断るわけにもいかねぇ。…仕方ない。これもあおいちゃんの相応しい男になるためだ。
「別に良いよ」
「え、まじ!?サンキューな!!あー神様だぜ!あっ、これ倉庫の鍵な」
めちゃくちゃ感謝した後、俺に鍵を渡してそのまま走り去って行った。あおいちゃんのためと思ったら何でもできる。
あおいちゃん。
手の届かない存在。
だからもっとあおいちゃんに釣り合う、相応しい男になるため弱音は吐かないようにしている。
君が出て行ってから俺は毎日君のことばかり考えてる。
そろそろ我慢の限界だよ。戻っておいで。
生で君の傷つく顔が見たい。
あー、だめだ。まだあおいちゃんに相応しくない俺がそんなことを考える資格はない。
「さっさと、これ終わらすか」
鍵をぎゅっと、握る。
まあ、“大事な用事”もこれが終わったら丁度いい時間帯だろう。
────
──────
「…よし、これで最後っと」
頼まれたボールを数えた後、俺は習慣になっていた用事を済ませに行くためある場所へと向かっていた。
それは、
「──はぁはぁ、あおいちゃんが使ってた机…」
誰もいなくなった放課後。
あおいちゃんのクラス、つまりZクラスで俺は息を荒くした。机の上を何度も何度も繰り返しながら触りまくった。実際の君に触れない分、代わりのもので補う。あおいちゃんが使っていた物は全て愛しく感じる。
「はぁはぁ、あおいちゃんが座っていた椅子…ちゅっ」
机から椅子へと移動してちゅっとキスを落とす。出会ったのはあの日だ。まだまだ初々しかった君。今でも鮮明に覚えてる。今じゃ宝物だ。
「ちゅっ…ちゅっ…どうして君は俺のものにならないのかな…」
狂ったように俺は口づけしまくる。
「…あぁ、閉じ込めたい」
誰もいない放課後の教室で、週に一度はこれが日課。
最初は、舐めちゃおうかなって軽い気持ち程度だったけど今では快感だ。
「俺は…心配なんだよ君が」
最近、俺は焦っている。どんどん、あおいちゃんが皆に知られていく。
もう嫌なほどわかる。ずっと君を目で追っていたから。たくさんの虫がついちゃったね。
いつか、本当に誰かのものになるんじゃないか。そう、ひやりと嫌な冷汗が伝うばかり。
俺の中で焦りが次々に生まれていた。
早く何か手を打たなければ、あおいちゃんが危ない。
それから、しばらくして二人の愛の巣だった寮へ戻るとあおいちゃんがたくさん写った写真が迎えてくれた。
俺の癒しコレクション。
「ただいま、あおいちゃん」
写真の向こうの君にキスをする。疲れて帰ったきたものがあおいちゃんを見るだけでリセットされる。
「…また、この可愛いお口で“お帰り”って言ってほしいな」
写真に触れながらそう思った。
…君が恋しい。
そう、俺とあおいちゃんは元同室だった。まぁ、元って言っても今でも同室であることは確実なんだけどね。あおいちゃんが出て行ったから一人部屋状態。戻ってきてほしい。
俺はDクラスであおいちゃんはZクラス。珍しい組み合わせだった。
もうこれは神様が二人を繋げようと導いてるようにしか思えない。
またあおいちゃんの泣いている顔が見たい。
ショックを受けてる君をみたい。
もっと意地悪したい。
俺は好きな子ほどいじめたくなっちゃう性癖の持ち主みたいなんだ。
…あおいちゃん限定だけどね。
自室のベッドに腰をおろし、ポケットからスマホを取り出した。
待ち受けはもちろんあおいちゃん。
前に盗撮したやつ。
コケて痛いのを我慢しているところのあおいちゃん。
あー、たまらなく可愛い。
弱々しいから守ってあげたくなっちゃうけど痛みに耐えている方がゾクゾクする。
この画面に何度も何回も欲を出したことがある。 お気に入りだ。
「…会いたい」
画面越しじゃ君が足りない。
だけど、あおいちゃんの幼なじみに脅されて今は迂闊に近づけなくなっている。あの幼なじみは何するかわからない。あらゆる手を使って排除していく。だから俺はひっそりとあおいちゃんに近づく機会を探してる。
だけど、なかなかその機会があらわれない。
俺は慎重派だ。
物事って冷静に考えないと裏目に出ちゃうよね。俺は馬鹿じゃないからちゃんと考えて行動する。そこら辺の能無しとは格が違う。
でも会えないというのは変わらないからこのイライラは募るばかり。
「はぁ…」
深いため息が溢れる。
…つまらない。
こんなにつまらなかったっけって思うほどあおいちゃんのいない日々はつまらなかった。出て行ったあと俺がいなくて寂しがると思った。
あおいちゃんも俺と同じで俺を恋しがると思った。
だけど違った。
俺がいなくてもあおいちゃんは平気そうだった。俺は平気じゃないのに。日が経つにつれ、後悔するようになった。
追い出すようなことしなければ良かったって。
そしたら君は出て行かずに、ずっと俺のそばにいたのかなって。
今はあおいちゃんのコレクションがあるから理性を保っている。だけどそろそろ、いじめたくてたまらなくなっている。
…そういえば、あの時はやばかったな。つい、前のことを思い出した。あおいちゃんがいじめを受けている場面に出くわしたことがあった。
傍観でもこんなにゾクゾクするなんて初めて知った時だった。
あれは痺れた。
好きな子の苦しむ顔ってとてつもなく可愛い。
今日は隣の部屋で眠ろうかな。
隣の部屋。
そこは、一つ空いた部屋。
あおいちゃんのだったところだ。
荷物も全部まとめて出ていちゃうなんて本当参った。
ガチャッ
元あおいちゃんの使っていた部屋の中に入る。
週に一度は掃除しているから埃っぽくない。
ここは全て俺の癒したち。
部屋中あおいちゃんの写真が貼ってある。隅から隅まで。机の引き出しにはUSBが山ほど保管されていて、動画を保存している。
これ見たらどんな反応するのかな。
「ふははっ」
楽しみでしょうがない。
この気持ちは遠足前のワクワクと同じ。
いつかその日が来たら俺たまらなくなる。 早く俺の元に戻って来ないかな。放置プレイや焦らしプレイはする方は好きだけどされる方は好きじゃない。
「会いたい…ハァ…会いたい…あおいちゃん会いたいよ」
もう我慢の限界だ。
あおいちゃんが以前使ったいたベッドに倒れて、シーツをぎゅっと掴み匂いを嗅いだ。
あおいちゃん…あおいちゃん好きだ。好きだよ。好きすぎてどうかなりそうだ。
俺、誰かにこんなに執着するなんてあおいちゃんが初めて。
こんな俺にさせたあおいちゃんには責任とってもらわないとね。
…あおいちゃん、もういいよね?
君も俺に会いたがっているだろうし、そろそろ行動に出るね。
会ったらどう意地悪されたい?
突然、優しくするのもきゅんってなるよね。
たまには優しくしようか。
だけど、苦しむ顔がみたい俺としては迷う。
どんな表情でもあおいちゃんは可愛いから会うのが楽しみだ。
あと、悪い虫どもをあおいちゃんの中からどうやって消そうか。そこは一番よく考えないといけないな。これからは俺以外の奴のことなんて考えてほしくないからね。
「…待ってて、あおいちゃん」
その熱のこもった声があおいちゃんの部屋の中に響いた。
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