つい勢いで後輩の童貞を奪っちゃうような女ですが、こんな私でも愛してくれるんですか?

春音優月

文字の大きさ
上 下
77 / 96
【第二部】

77、前の彼氏も同じこと言ってた

しおりを挟む
「ずっと一緒にいるって言ったじゃないですか。俺のことが信じられない?」
「信じてないわけじゃないけど、慧は入学式の時に私に一目惚れしたって言ってくれたでしよ? それって、前の彼女と付き合ってた期間と被ってるよね」
「それ言われると、何も反論出来ないです」
 
 それを指摘すると、慧はうつむいて大きなため息をつく。
 
 元カノと付き合ってた期間に慧からアプローチされたわけじゃないし、大学に入る前にはもう上手くいってなかったって言ってたから、こんな言い方をするのは可哀想だったかもしれない。それでも、どうしても言わずにはいられなかった。
 
 しばらくの間気まずい時間が続いた後、慧はようやく顔を上げて私と視線を合わせる。
 
「前の彼女のことはちゃんと好きだったし、こんな言い方したら前の彼女に失礼かもしれないけど。でも、花音先輩とは全然違うんです。
俺にとって花音先輩は特別なんです。こんなに誰かを好きになったことは初めてなんです」
 
 切実にそう訴えてきた慧は私が恩田先輩に言われたことと全く同じことを言っていて、全力で地雷を踏み抜かれたような気分になる。
 
 ———あれは、たしか去年の夏の終わり頃だったかな。
 
 恩田先輩は私と付き合う前は同じサークルに好きな人がいて、告白までしたけどフラれたんだって。まだ恩田先輩を好きになる前に、本人から直接それを聞いたことをよく覚えている。
 
 はっきり気持ちにケジメはつけてるって言ってたけど、それでもやっぱり同じサークルに前の好きな人がいるっていうのはすごく不安だったな。
 
 私が恩田先輩を好きになっちゃって、押して押して付き合ってもらったような形だったから余計に不安だったのかも。付き合ってからはたくさん好きだって言ってくれたしいつも優しかったけど、それでも不安だった。
 
『いいですよ~だ。どうせ私はまいちゃん先輩には敵わないよ。私が好き好きって言うから可哀想に思って、ボランティアで付き合ってくれたんでしょ』
『何でそんなこと言うんだよ。ボランティアで付き合ったりしない。昔はまいちゃんのことが好きだったけど、今は花音のことが好きだよ。花音のことが一番好きだ。こんなに誰かを好きになったことは初めてなんだ』
 
 ちょっとしたことですねて、みんなでカラオケに行った時にこっそり部屋を飛び出した私を恩田先輩が追いかけて抱きしめてくれた時に言われた言葉。あれはすごくすごく嬉しかったなぁ。
 
 私だってあんなに人を好きになったのは恩田先輩が初めてで、あの時の私にとっては恩田先輩が全てだったから、涙が出るくらい嬉しかったの。
 
 でもそう言ってくれた恩田先輩も、結局私を好きじゃなくなって、私から離れていった。
 
 あんなに私のこと好きだって言ってくれたのに。
 ずっと一緒にいられるって信じてたのに。
 慧も恩田先輩と一緒で、いつか私から離れていくの?
 
 ……慧と恩田先輩は違う人だって分かってる。
 重ねちゃダメだって分かってるのに、勝手に思い出の中の恩田先輩と慧が重なってしまう。
 
 だって、慧と全く同じこと言ってた恩田先輩だって離れていったんだから、そしたら慧も……ってどうしても思っちゃうよ。
 
「今は私のことが好きかもしれないけど、私と別れて次の彼女が出来たら、すぐに私のことなんてどうでも良くなるよ」
「だから、何でそんなこと言うんですか」
「だって……っ。恩田先輩も慧と同じこと言ってたけど、私から離れていった!!」
「え」
「……あ」
 
 感情が溢れ出して、勝手に口からついて出た言葉を後悔した時にはもう遅かった。とっさに口を押さえた私を慧はじっと見つめてくる。
 
「恩田先輩って誰ですか」
 
 静かに発せられた慧の一言に、私の身体がびくりと震える。
 
 もうダメだ。完全に終わった。
 慧のことを今までも散々傷つけてきたと思うけど、今回はもう確実に修復不可能。
 
 慧と恩田先輩を重ねてしまったことのショックやら罪悪感やらで気持ちがぐちゃぐちゃになって、涙がボロボロと溢れ出す。
 
 泣きたいのは慧の方だと思うのに、慧はそんな私との距離を詰め、優しく抱きしめてくれた。
 
「泣かないで。大丈夫だから」
「だ、いじょぶじゃないよ。だって、わたし……っ」
「恩田先輩が誰なのか知らないし何があったのか知らないけど、俺とその人は違う人間です。俺は花音先輩から離れない。花音先輩を不安にさせないようにがんばるから、俺のことを信じてくれませんか?」
 
 なだめるように頭を撫でられ、余計に涙が止まらなくなる。今彼と元彼を重ねるという一番やってはいけないことをやらかしたのに、どうしてこんなに優しくしてくれるんだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

恋とキスは背伸びして

葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員 成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長 年齢差 9歳 身長差 22㎝ 役職 雲泥の差 この違い、恋愛には大きな壁? そして同期の卓の存在 異性の親友は成立する? 数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの 二人の恋の物語

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~

菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。 だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。 車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。 あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

禁断溺愛

流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...