つい勢いで後輩の童貞を奪っちゃうような女ですが、こんな私でも愛してくれるんですか?

春音優月

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【第二部】

46、付き合ってるのかな

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 まだまだ暑い九月中旬、新学期が始まるまであと一週間となった。私は今年で二回目だけど、毎年この時期に合宿を行うことがうちのサークルの慣例になっているみたい。
 
 合宿とはいっても相変わらずゆるい感じだけど、文化祭に向けてそれなりに練習も必要だし、ほぼ全員が参加することに。
 
 バスを一台借りて、それから荷物乗せるために車出せる人は出してもらって。大学から三時間ぐらいのところにある山の中のホテルに向かう。
 
「聞いてる?」
「ごめん、聞いてなかった。ちょっと酔ったかも」
 
 隣の席の一花に話しかけられて振り向くと、一花は心配そうな顔で私を見る。
 
「カーブきっついよね。大丈夫?」
「もうすぐ着くから我慢しとく」
「帰りは慧に乗せてもらったら? バスよりはまだ酔わないでしょ」
「行きに乗ってきた子たちが帰りも乗るだろうし、私はいいよ」
 
 一花はまだ何かを言いたそうにしてたけど、答える元気もなかったので窓の外を見ると、それ以上話しかけてくることはなかった。
 
 慧の車で一緒に行くか聞かれたけど、断っちゃったんだよね。
 
 慧と付き合い始めて、もうすぐ一ヶ月。
 慧とは上手くいってるけど、サークルのみんなにはまだ内緒で付き合ってる。
 
 車に乗せてもらうぐらいで怪しまれることはないかもしれないけど、なんとなく気が引けるというか。付き合う前よりも慧との距離に気を使っちゃう。
 
 *
 
「コンビニ行ってくるね」
 
 軽くバス酔いしながらもどうにかホテルにたどり着き、六人部屋に荷物を置いて、少ししてから席を立つ。バスから降りてだいぶマシになったけど、まだ微妙に気分が悪い。
 
「私も行く~」
 
 なんかすっきりする飲み物でも買いに行こうとしたら、同室のまゆみも追いかけてきて、一緒に行くことになった。
 
「今年も綺麗なことで良かったね」
「そうだね。コンビニまで遠いのがちょっとアレだけどね」
「去年もそうだったよね」
 
 まゆみと世間話をしながら階段を降りると、ロビーのところに慧とみくちゃんがいた。お互いに軽く手を振ったりしてその場を通り過ぎる。
 
「慧くんとみくちゃんって仲良いよね」
「みたいだね」
 
 ロビーから出て話しかけてきたまゆみに同意すると、まゆみは少し距離を詰めてきた。
 
「付き合ってるのかな?」
「え~?どうだろね」
「授業でも一緒にいるとこみたよ」
「学部一緒だし、被ってる授業多いんじゃない? 付き合ってるのかもしれないけど」
「花音、慧くんと仲良いんだし、何か聞いてないの?」
「そういう話あんまりしないからなぁ」
「ほんと~?」
「今度聞いてみる」
 
 ニコっと笑顔を作ると、まゆみも納得したようで、すぐに別の話に話題がうつっていく。
 
 今度聞いてみるも何も、慧の彼女は私なんだけどね。付き合ってること内緒にしたいって言ったのは私だけど、ものすごくやりにくい。
 
 コンビニからホテルに帰ると、ロビーのところにまだ慧とみくちゃんがいて、まゆみに目配せをされる。
 
 慧とみくちゃんかぁ。
 私も男子と二人で話すことよくあるし、あんまり気にしてなかったけど、仲良いんだよね。さすがに二人で出かけたりはしてないんだろうけど、学部も一緒だからサークル以外でも会ってるんだろうし。
 
 慧とみくちゃんに何かあるなんて思ったことないけど、まゆみのせいで私までモヤってきた。
 
「ね、なんかあやしいでしょ」
「かもね」
 
 階段のところでまゆみに話しかけられて頷くと、また距離を詰めてきた。
 
「何でさっきからそっけないの?」
「え?そっけなくないよ?」
「絶対そっけないよ。こういう系の話振ったら、いつもならもっとノッてくるのに。あ、分かった。仲良しの慧くんがみくちゃんにとられて面白くないんだ」
 
 意外に鋭いまゆみに一瞬言葉に詰まっちゃったけど、どうにか笑顔を作って誤魔化す。
 
「やめてよ~。そこまで嫉妬深くないもん。慧が誰と仲良くしても自由だよ」
「だよね。さすがに彼氏でもないんだから気にしないよね」
 
 う……。実は彼氏なんですけどね。
 ほんとっにやりづらい~!!
 
「そうだよ、変な冗談やめてね」
「ごめんごめん。花音なら他にいくらでも男いるよね」
 
 全く悪びれもせずに満面の笑みを向けてきたまゆみに、私も笑顔を返す。今までの私の行いが悪いせいだけど、なかなかに辛いものがある。
 
 でもやっぱり、この状況で慧と付き合ってるってますます言えないよね。
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