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【第一部】
18、純粋だった頃に戻りたいね
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七月最初の土曜日。22時にバイトを終え、制服から私服に着替えて外に出ると、従業員用出入り口を出たところに藤田くんがいた。
「おつかれさまです」
「おつかれ~。どうしたの?」
「そういえば連絡先聞いてなかったと思って」
「あ~誰か紹介するって言ってたね。どんな子がタイプ?」
すっかり忘れてたけど、言われて思い出した。カバンの中からスマホを取り出すと、藤田くんは苦笑いを浮かべる。
「紹介はもういいんだ。それより花音ちゃんの連絡先教えて」
「え? うん。もちろん」
ん~? 懐かれた?
藤田くんの反応を不思議に思いながらも、とりあえず連絡先を交換する。
「あの、さ」
「うん」
「良かったら、これから何か食べに行かない?」
「これから? いいけど……あ、ちょっと待って」
言いにくそうに切り出してきた藤田くんからの誘いを受けようと思ったけど、通知音に気がついてスマホをタップする。スマホをチェックすると、メッセージの差出人は慧だった。
『バイト終わった。そっちは?
現地集合? 迎えに行く?』
そうだった、今日は慧とラーメン食べに行く約束してたんだよね。酔い潰れた私を迎えに来てくれた日以降、ちょくちょく誘ってくれるようになった。
ひとまず『現地集合で』と高速でメッセージを返したあと、両手を合わせて片目を瞑る。
「ごめんね。今日友達と約束してたんだ。
今度バイト終わったら食べに行こ?」
「……うん、分かった。また連絡するね」
バイバイと藤田くんに手を振ると、慧と約束してたラーメン屋の方へと歩き出す。
*
「明日大丈夫ですか?」
にんにくラーメンを頼んだ上に、テーブルの上に置いてあったにんにくをそれにどっさり入れると、正面にいた慧が嫌そうに顔をしかめる。
「うん、明日は何も予定ないんだ~」
「口が臭くなりますよ」
「ん~……あ、じゃあさ、慧もにんにく入れたらいいじゃん。そしたら匂い気にならないでしょ」
「やめろって」
承諾も得ずに慧の醤油ラーメンにもどさっとにんにくを入れると、慧は慌てて手を伸ばす。止めようとしても、もう入れちゃったけどね。
「先輩は予定ないかもしれませんが、俺は夕方からバイトあるんですよ」
「え、ごめん。でも夕方からなら、さすがに匂い消えるでしょ。モウマンタイ♡」
「問題ありだよ」
笑ってごまかすと、慧はため息をついてにんにく入りのラーメンを食べ始めた。
*
「おいしかった~楽しかった~。はぁ~話足りないな~」
ラーメンを食べ終わって外に出て、慧の腕に自分の腕を絡ませて夜道を歩く。
もう23時近いからそこまで混んでなかったけど、ラーメン屋でそんなに長居出来ないもんね。まだまだ話したかったけど、食べ終わったらすぐに出てきちゃった。
「家来ます?」
「いいの? やったぁ」
露骨に残念がっていると慧が誘ってくれたので、満面の笑みで慧に抱きつく。
「歩きにくいから離れて」
そんなことを言いながらも、慧も私から離れようとはしない。
「照れてるの~? 可愛い♡」
「は?」
顔を覗きこむと慧はぷいっと視線をそらしたけど、その頬はわずかに赤くなっている。
いいなぁ、この反応。ピュアで羨ましい。私もこの頃に戻りたいなぁ。
「おつかれさまです」
「おつかれ~。どうしたの?」
「そういえば連絡先聞いてなかったと思って」
「あ~誰か紹介するって言ってたね。どんな子がタイプ?」
すっかり忘れてたけど、言われて思い出した。カバンの中からスマホを取り出すと、藤田くんは苦笑いを浮かべる。
「紹介はもういいんだ。それより花音ちゃんの連絡先教えて」
「え? うん。もちろん」
ん~? 懐かれた?
藤田くんの反応を不思議に思いながらも、とりあえず連絡先を交換する。
「あの、さ」
「うん」
「良かったら、これから何か食べに行かない?」
「これから? いいけど……あ、ちょっと待って」
言いにくそうに切り出してきた藤田くんからの誘いを受けようと思ったけど、通知音に気がついてスマホをタップする。スマホをチェックすると、メッセージの差出人は慧だった。
『バイト終わった。そっちは?
現地集合? 迎えに行く?』
そうだった、今日は慧とラーメン食べに行く約束してたんだよね。酔い潰れた私を迎えに来てくれた日以降、ちょくちょく誘ってくれるようになった。
ひとまず『現地集合で』と高速でメッセージを返したあと、両手を合わせて片目を瞑る。
「ごめんね。今日友達と約束してたんだ。
今度バイト終わったら食べに行こ?」
「……うん、分かった。また連絡するね」
バイバイと藤田くんに手を振ると、慧と約束してたラーメン屋の方へと歩き出す。
*
「明日大丈夫ですか?」
にんにくラーメンを頼んだ上に、テーブルの上に置いてあったにんにくをそれにどっさり入れると、正面にいた慧が嫌そうに顔をしかめる。
「うん、明日は何も予定ないんだ~」
「口が臭くなりますよ」
「ん~……あ、じゃあさ、慧もにんにく入れたらいいじゃん。そしたら匂い気にならないでしょ」
「やめろって」
承諾も得ずに慧の醤油ラーメンにもどさっとにんにくを入れると、慧は慌てて手を伸ばす。止めようとしても、もう入れちゃったけどね。
「先輩は予定ないかもしれませんが、俺は夕方からバイトあるんですよ」
「え、ごめん。でも夕方からなら、さすがに匂い消えるでしょ。モウマンタイ♡」
「問題ありだよ」
笑ってごまかすと、慧はため息をついてにんにく入りのラーメンを食べ始めた。
*
「おいしかった~楽しかった~。はぁ~話足りないな~」
ラーメンを食べ終わって外に出て、慧の腕に自分の腕を絡ませて夜道を歩く。
もう23時近いからそこまで混んでなかったけど、ラーメン屋でそんなに長居出来ないもんね。まだまだ話したかったけど、食べ終わったらすぐに出てきちゃった。
「家来ます?」
「いいの? やったぁ」
露骨に残念がっていると慧が誘ってくれたので、満面の笑みで慧に抱きつく。
「歩きにくいから離れて」
そんなことを言いながらも、慧も私から離れようとはしない。
「照れてるの~? 可愛い♡」
「は?」
顔を覗きこむと慧はぷいっと視線をそらしたけど、その頬はわずかに赤くなっている。
いいなぁ、この反応。ピュアで羨ましい。私もこの頃に戻りたいなぁ。
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