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9、大嫌いな男からの贈り物
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「失礼いたします。入ってもよろしいでしょうか」
ミアが枕を塵とした時から間をおかずして、ドアの向こう側から若い娘の声が聞こえてくる。
「入れ」
さきほどアデルが言っていたメイドだろうと察したミアは、裸のまま娘を迎え入れた。メイド服を着た人間の娘はミアにうやうやしくおじきをしただけで、裸で仁王立ちをしているミアを見ても動揺した素振りを見せない。
メイドの娘は、移動式のクローゼットを廊下から引っ張ってきて、ミアの前にそれを配置する。
「何だ、これは?」
「アデル殿下からの贈り物でございます。どれでもお好きな衣装をお召しになるようにとのことです」
メイドから手渡された着心地の良いレースの下着を身につけたあと、ミアはずらりとかけられたドレスに視線をうつす。
赤、青、紫、桃色、白、黄、水色、黒、緑、茶色。そこには様々な色のドレスがかけられていたが、どれもフリルとリボンがたっぷりついた愛らしいデザインのものであった。
魔界にはあまりないデザインのドレスを見たミアは、それらの物珍しさに目を見張る。
「まあ! なんて可愛いらしい。きっとミアさまによくお似合いですね!」
近くまで飛んできたかと思えば、リリスは嬉しそうにミアの顔を覗き込む。惚けていたミアは我に帰ると、リリスの顔を睨みつけた。
「偉大な大魔王の娘であるこの私に軟弱な人間の衣装を用意するとはな。これはまた早速酷い嫌がらせだ」
「そんな~ミアさま~。どうしてそのようなことばかりおっしゃるのですか」
背中の羽をパタパタさせながら、どうにかミアを取りなそうとするリリスをミアは徹底的に無視。見下していた人間にあっさりと力負けしたことによほどプライドを傷つけられたのか、いつにも増して機嫌が悪いようだ。
「今日はどれをお召しになりますか、ミアさま。お召し替えのお手伝いをいたします」
メイドの娘はアデルを庇うわけでもなく、とりなそうともせずに、淡々とそう告げる。彼女にどこか不気味な印象を受けたミアは、無意識に一歩後ずさった。
「けっこうだ、人間の手を借りる気はない。お前はもう下がれ」
「承知いたしました、失礼いたします」
体勢を低く保っていたメイドはニヤリと口の端を上げ、静かに部屋から出ていった。
「……」
「ミアさま? どうかなさったのですか?」
「いや……。さっきのあの娘。何か嫌な感じがしなかったか?」
「そうでございますか? ミアさまは人間をお嫌いでいらっしゃるから……」
またミアの人間嫌いが出たとリリスは困ったような顔をしていたが、当のミアは顎に手を当てて何かを考え込んでいた。
「あれは、人間というよりもむしろ——」
「ミアさま?」
リリスの大きな瞳で見つめられ、ミアはハッとしたように顔を上げる。
「大したことではない。立て続けに人間に会ったから、ストレスになっているのかもしれないな」
ミアは首を大きく横に振ると、ドレスをじっくりと見定め始めた。
「これが一番マシか」
ミアが手に取ったのは、ミアの瞳や髪と同じ赤色のドレス。裾がふわりと広がる可憐なデザインで、胸元と腰の部分には大きなリボンがついていた。
ミアはドレスを手に持ち、鏡の前で一度当ててみる。
可愛いドレスを前にミアの瞳は輝き、頬もわずかに緩んでいた。
嬉しそうにしているミアにリリスはそれを指摘しようとしたが、そんなことを言ったらまたご機嫌を損ねることはまず間違いないため、仕方なく口をつぐむ。
ミアが枕を塵とした時から間をおかずして、ドアの向こう側から若い娘の声が聞こえてくる。
「入れ」
さきほどアデルが言っていたメイドだろうと察したミアは、裸のまま娘を迎え入れた。メイド服を着た人間の娘はミアにうやうやしくおじきをしただけで、裸で仁王立ちをしているミアを見ても動揺した素振りを見せない。
メイドの娘は、移動式のクローゼットを廊下から引っ張ってきて、ミアの前にそれを配置する。
「何だ、これは?」
「アデル殿下からの贈り物でございます。どれでもお好きな衣装をお召しになるようにとのことです」
メイドから手渡された着心地の良いレースの下着を身につけたあと、ミアはずらりとかけられたドレスに視線をうつす。
赤、青、紫、桃色、白、黄、水色、黒、緑、茶色。そこには様々な色のドレスがかけられていたが、どれもフリルとリボンがたっぷりついた愛らしいデザインのものであった。
魔界にはあまりないデザインのドレスを見たミアは、それらの物珍しさに目を見張る。
「まあ! なんて可愛いらしい。きっとミアさまによくお似合いですね!」
近くまで飛んできたかと思えば、リリスは嬉しそうにミアの顔を覗き込む。惚けていたミアは我に帰ると、リリスの顔を睨みつけた。
「偉大な大魔王の娘であるこの私に軟弱な人間の衣装を用意するとはな。これはまた早速酷い嫌がらせだ」
「そんな~ミアさま~。どうしてそのようなことばかりおっしゃるのですか」
背中の羽をパタパタさせながら、どうにかミアを取りなそうとするリリスをミアは徹底的に無視。見下していた人間にあっさりと力負けしたことによほどプライドを傷つけられたのか、いつにも増して機嫌が悪いようだ。
「今日はどれをお召しになりますか、ミアさま。お召し替えのお手伝いをいたします」
メイドの娘はアデルを庇うわけでもなく、とりなそうともせずに、淡々とそう告げる。彼女にどこか不気味な印象を受けたミアは、無意識に一歩後ずさった。
「けっこうだ、人間の手を借りる気はない。お前はもう下がれ」
「承知いたしました、失礼いたします」
体勢を低く保っていたメイドはニヤリと口の端を上げ、静かに部屋から出ていった。
「……」
「ミアさま? どうかなさったのですか?」
「いや……。さっきのあの娘。何か嫌な感じがしなかったか?」
「そうでございますか? ミアさまは人間をお嫌いでいらっしゃるから……」
またミアの人間嫌いが出たとリリスは困ったような顔をしていたが、当のミアは顎に手を当てて何かを考え込んでいた。
「あれは、人間というよりもむしろ——」
「ミアさま?」
リリスの大きな瞳で見つめられ、ミアはハッとしたように顔を上げる。
「大したことではない。立て続けに人間に会ったから、ストレスになっているのかもしれないな」
ミアは首を大きく横に振ると、ドレスをじっくりと見定め始めた。
「これが一番マシか」
ミアが手に取ったのは、ミアの瞳や髪と同じ赤色のドレス。裾がふわりと広がる可憐なデザインで、胸元と腰の部分には大きなリボンがついていた。
ミアはドレスを手に持ち、鏡の前で一度当ててみる。
可愛いドレスを前にミアの瞳は輝き、頬もわずかに緩んでいた。
嬉しそうにしているミアにリリスはそれを指摘しようとしたが、そんなことを言ったらまたご機嫌を損ねることはまず間違いないため、仕方なく口をつぐむ。
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