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第331話 季節はずれのデコレーション
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ドアを開け、店に入る。
ムーディーな間接照明、品のある調度品。そして、ほどよい音量の渋めのジャズが二人を迎える。
まだ時間が早いせいか、去年、星崎をあざむく為の『やらせ写真』の撮影に協力をしてくれた四人の姿は見あたらない。
今後もし、彼らと顔をあわせる機会があれば、現状報告をかねて挨拶をしよう――
佐野は、そう思いつつユキのあとに続く。
このように佐野が全く緊張もせず、ゆったりと振る舞えるのはユキが一緒だというのもあるが、カウンターの向こうに顔なじみのオーナーがいるからだ。
いつもユキと共に作業服姿でキャラメル・フェアリーの特別室へ、ランチを食べに行っているから、その延長という感覚なのだ。
「いらっしゃいませ」
昼間と同じ笑顔でオーナーが頭を下げる。
佐野とユキはカウンター席に座り、水割りを注文する。
「どうぞ」
オーナーはその場で手早く作り、各々の前へグラスを置く。
「そして――こちらは、私からです」
そう言って、何かが盛られている一枚の白い皿と、二本のフォークを佐野とユキとの真ん中へ置いた。
薄暗い間接照明ゆえ、皿の中身の詳細はよく分からない。強いて言えば、白っぽい立体的な何かである。
「ありがとうございます」
佐野とユキは、ひとまず礼を言い、それから二人して皿の中をのぞき込む。だがすぐに顔を見合わせ、困惑の表情をオーナーへ向けた。
というのも、皿の上には生クリームとイチゴのショートケーキが一つ。しかもその上には、サンタクロースをかたどった砂糖菓子のほか、ひいらぎの葉や星の形をしたクッキーが所狭しと飾られていたからだ。
「とうに年は明けてしまいましたが、遅めのクリスマスということで、どうぞお二人で素敵な聖夜をお過ごしください」
オーナーは微笑みながらそう言って、二人の前から静かに離れる。そしてカウンターの隅でシャンパングラスを磨き始めた。
「そうか……オーナーは、去年の末から今日までの間、俺達がここへ来れなかった理由を知っているから、こんな粋なはからいをしてくれたんだな」
ユキが季節はずれのデコレーションが施されたケーキを眺めながら、感慨深げに言う。
俺達――?
佐野はその言葉に疑問を抱き、小さく眉根を寄せるのだった。
ムーディーな間接照明、品のある調度品。そして、ほどよい音量の渋めのジャズが二人を迎える。
まだ時間が早いせいか、去年、星崎をあざむく為の『やらせ写真』の撮影に協力をしてくれた四人の姿は見あたらない。
今後もし、彼らと顔をあわせる機会があれば、現状報告をかねて挨拶をしよう――
佐野は、そう思いつつユキのあとに続く。
このように佐野が全く緊張もせず、ゆったりと振る舞えるのはユキが一緒だというのもあるが、カウンターの向こうに顔なじみのオーナーがいるからだ。
いつもユキと共に作業服姿でキャラメル・フェアリーの特別室へ、ランチを食べに行っているから、その延長という感覚なのだ。
「いらっしゃいませ」
昼間と同じ笑顔でオーナーが頭を下げる。
佐野とユキはカウンター席に座り、水割りを注文する。
「どうぞ」
オーナーはその場で手早く作り、各々の前へグラスを置く。
「そして――こちらは、私からです」
そう言って、何かが盛られている一枚の白い皿と、二本のフォークを佐野とユキとの真ん中へ置いた。
薄暗い間接照明ゆえ、皿の中身の詳細はよく分からない。強いて言えば、白っぽい立体的な何かである。
「ありがとうございます」
佐野とユキは、ひとまず礼を言い、それから二人して皿の中をのぞき込む。だがすぐに顔を見合わせ、困惑の表情をオーナーへ向けた。
というのも、皿の上には生クリームとイチゴのショートケーキが一つ。しかもその上には、サンタクロースをかたどった砂糖菓子のほか、ひいらぎの葉や星の形をしたクッキーが所狭しと飾られていたからだ。
「とうに年は明けてしまいましたが、遅めのクリスマスということで、どうぞお二人で素敵な聖夜をお過ごしください」
オーナーは微笑みながらそう言って、二人の前から静かに離れる。そしてカウンターの隅でシャンパングラスを磨き始めた。
「そうか……オーナーは、去年の末から今日までの間、俺達がここへ来れなかった理由を知っているから、こんな粋なはからいをしてくれたんだな」
ユキが季節はずれのデコレーションが施されたケーキを眺めながら、感慨深げに言う。
俺達――?
佐野はその言葉に疑問を抱き、小さく眉根を寄せるのだった。
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