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第314話 悩ましい事態に陥る
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金曜日になった。ユキと一緒に花壇へ行く日である。
ユキに誘われたのは火曜日だ。それ以後の佐野の心情たるや、盆と正月が一緒に来たような騒ぎであった。
もちろんそれはおくびにも出さず、いつも通りのテンションと集中力で仕事をこなす。
だが一方で、デートにありがちな大問題も発生していた。
服装である。
ユキの提案で、最初に別の所で食事をし、それから花壇へ行く予定となっているのだが、その店はユキの行きつけだという。
となれば、大手ゼネコン勤務のユキのこと、高級レストランの可能性は大である。
また、花壇もラフな格好で入れるような雰囲気の店ではない。
ユキに連れられて初めて足を踏み入れた際、客層を含め、全てにおいてセンスと品が良く、また、そこかしこにさりげなく置かれている調度品の豪華さにも圧倒されたからである。
よって、スーツ着用はすんなりと決定したのだが、それからが問題なのだ。
佐野はスーツを二着持っている。一着は喪服なので除外。残る一着は安価な化繊であるうえに、ユキと初めて出会った夜――つまり、古山建設での忘年会で、一口も料理を食べられぬまま、ただ延々と鍋物のあく取りと、他の社員が食い散らかした皿の取りまとめをさせられた挙げ句、二次会へは星崎によって置いてきぼりにされるという、黒歴史まみれのスーツなのだ。
金曜日まで時間はあるとはいえ、昼間は仕事がぎっしりとつまっており、夜は残業もある。なので新たにスーツ一式を都心のファッションビルへ買いに行くことは不可能である。
また、通販という方法もあるが、サイズが合わなければ悲惨である。特にズボンの裾。ジャケットの袖もごまかしがきかない。それに、配送日も間に合うかどうか難しい。
結果、佐野は仕方なく、ユキと初めて出会った時と同じ格好で、ユキと初めてデートをするという、何とも悩ましい事態に陥っているのであった。
ユキに誘われたのは火曜日だ。それ以後の佐野の心情たるや、盆と正月が一緒に来たような騒ぎであった。
もちろんそれはおくびにも出さず、いつも通りのテンションと集中力で仕事をこなす。
だが一方で、デートにありがちな大問題も発生していた。
服装である。
ユキの提案で、最初に別の所で食事をし、それから花壇へ行く予定となっているのだが、その店はユキの行きつけだという。
となれば、大手ゼネコン勤務のユキのこと、高級レストランの可能性は大である。
また、花壇もラフな格好で入れるような雰囲気の店ではない。
ユキに連れられて初めて足を踏み入れた際、客層を含め、全てにおいてセンスと品が良く、また、そこかしこにさりげなく置かれている調度品の豪華さにも圧倒されたからである。
よって、スーツ着用はすんなりと決定したのだが、それからが問題なのだ。
佐野はスーツを二着持っている。一着は喪服なので除外。残る一着は安価な化繊であるうえに、ユキと初めて出会った夜――つまり、古山建設での忘年会で、一口も料理を食べられぬまま、ただ延々と鍋物のあく取りと、他の社員が食い散らかした皿の取りまとめをさせられた挙げ句、二次会へは星崎によって置いてきぼりにされるという、黒歴史まみれのスーツなのだ。
金曜日まで時間はあるとはいえ、昼間は仕事がぎっしりとつまっており、夜は残業もある。なので新たにスーツ一式を都心のファッションビルへ買いに行くことは不可能である。
また、通販という方法もあるが、サイズが合わなければ悲惨である。特にズボンの裾。ジャケットの袖もごまかしがきかない。それに、配送日も間に合うかどうか難しい。
結果、佐野は仕方なく、ユキと初めて出会った時と同じ格好で、ユキと初めてデートをするという、何とも悩ましい事態に陥っているのであった。
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