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第278話 自覚なき真の根性悪が露呈する
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佐野は、自分の転職を我がことのように喜んで嬉し泣きする鈴木によって、全く自覚していなかった己の心の闇に気づいたのだった。
古山建設というブラック企業に長く居すぎたせいで、すっかり人間不信となり、社内で唯一、気心の知れた仲である鈴木にでさえ壁を作っていたことに。
また、人の優しさや思いやりなどは単に理想であり、この世には絶対に存在しないのだと心の奥底で頑なに信じていたことも。
その結果、病的な保身に走り、くだらぬ見栄を張る。
これは本人にしてみれば真剣そのものだが、端から見れば滑稽きわまりない言動でしかない。
前から自分は根性悪だと分かってはいたが、まさかここまでこじらせていたとは知らず、愕然とする。
なのできっと、ユキが声を殺して爆笑したのはそのせいであろう。
自分がくそ真面目な表情と口調で、コントとしか思えぬせりふを吐いていたからだ。しかも頬を真っ赤にし、大汗までかいてだ。
ああ、みっともない。顔から火が出るほど恥ずかしい。逃亡どころの話ではない。穴があったら入りたい――佐野は鼻水をすすりながら再び赤面する。
古山建設というブラック企業に長く居すぎたせいで、すっかり人間不信となり、社内で唯一、気心の知れた仲である鈴木にでさえ壁を作っていたことに。
また、人の優しさや思いやりなどは単に理想であり、この世には絶対に存在しないのだと心の奥底で頑なに信じていたことも。
その結果、病的な保身に走り、くだらぬ見栄を張る。
これは本人にしてみれば真剣そのものだが、端から見れば滑稽きわまりない言動でしかない。
前から自分は根性悪だと分かってはいたが、まさかここまでこじらせていたとは知らず、愕然とする。
なのできっと、ユキが声を殺して爆笑したのはそのせいであろう。
自分がくそ真面目な表情と口調で、コントとしか思えぬせりふを吐いていたからだ。しかも頬を真っ赤にし、大汗までかいてだ。
ああ、みっともない。顔から火が出るほど恥ずかしい。逃亡どころの話ではない。穴があったら入りたい――佐野は鼻水をすすりながら再び赤面する。
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