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第275話 今すぐにでも、この場から逃亡したい
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『あー……そうなんだ』
鈴木はそう言ったきり、喋らない。これ以降、気まずい沈黙が続く。
そんな中、遙か遠くでカラスが一羽、カーと鳴く。それがまた辛さを助長する。
スマホの向こうで鈴木が激怒しているのが目に見えるようだ。佐野は眉根を寄せ、喉の奥で小さく呻く。
でも当たり前だ。自分だってそうされたら絶対に腹が立つからだ。
そしてユキも、さぞかしがっかりしていることだろう。
小さな自分を大きく見せるために友達をも平気であざむく根性の悪さに心底あきれて、見損なったと自分をののしり、もう口を聞いてくれなくなるだろう。
もちろん、これで橋本建設にはいられなくなるから、両親を落胆させてしまう。
また、キャラメル・フェアリーの特別室にも行けなくなる。もう、あのケチャップの文字まみれの絶品オムライスも食べられないのだ。そして、花壇にも――
自分の人生、これで終った。再び無職生活に戻るのだ。でも、自業自得だから仕方がない。
手にしたスマホが異様に重く感じる。できることなら今すぐにでも電源を切って、この場から逃亡したい。隣にユキがいることが、今の自分には、どうにもいたたまれない。
しかし――そのように激しく打ちひしがれている佐野の横で、何やら奇妙な声がする。
鈴木はそう言ったきり、喋らない。これ以降、気まずい沈黙が続く。
そんな中、遙か遠くでカラスが一羽、カーと鳴く。それがまた辛さを助長する。
スマホの向こうで鈴木が激怒しているのが目に見えるようだ。佐野は眉根を寄せ、喉の奥で小さく呻く。
でも当たり前だ。自分だってそうされたら絶対に腹が立つからだ。
そしてユキも、さぞかしがっかりしていることだろう。
小さな自分を大きく見せるために友達をも平気であざむく根性の悪さに心底あきれて、見損なったと自分をののしり、もう口を聞いてくれなくなるだろう。
もちろん、これで橋本建設にはいられなくなるから、両親を落胆させてしまう。
また、キャラメル・フェアリーの特別室にも行けなくなる。もう、あのケチャップの文字まみれの絶品オムライスも食べられないのだ。そして、花壇にも――
自分の人生、これで終った。再び無職生活に戻るのだ。でも、自業自得だから仕方がない。
手にしたスマホが異様に重く感じる。できることなら今すぐにでも電源を切って、この場から逃亡したい。隣にユキがいることが、今の自分には、どうにもいたたまれない。
しかし――そのように激しく打ちひしがれている佐野の横で、何やら奇妙な声がする。
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