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第243話 根性曲がり、発動する
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「田上課長」
佐野はユキを真っ直ぐに見て言った。
「僕、御社へ入社する前に、やっておきたいことがあるんです」
「何をだ」
「古山建設の全ての女性社員が、星崎によって解雇されるおそれがあるんです。それをどうにか食い止めたいのです」
「ほう」
ユキが興味深げに右眉を上げる。
「というのも、星崎が前に、『社内の女の整理をする』と言っていまして」
「はあ? 何だそりゃ」
「つまり、今、在籍している女性社員を全員クビにして、若くて可愛い女性だけを入れると。そして正社員ではなく、アルバイト枠で採用し、一年で全員を総入れ替えにすると」
「セクハラとパワハラの極致だな。で、入れ替えの理由は、昇給させないためか?」
「いいえ。『美人でも飽きるから』です。けれど多分、レイナは別でしょうけれど」
「なにからなにまで、あいつはクソだな」
ユキが吐き捨てるように言う。
「ええ。ですから、そうなってしまう前に労働基準監督署へ相談に行きたいんです」
「つまり、タレコミか」
「はい。しかも不幸中の幸いというか、僕はまだ古山建設の社員なので、それができるんです。星崎と社長が共謀して、僕に失業保険を受給できないように書類を作らず放置しているものですから。それに給料の未払いもありますし」
「あー……そういえばこの前、様子を探りに星崎へ電話したら、あの野郎、ぬけぬけと、『佐野は一月の仕事始めの日からずっと無断欠勤していて連絡が取れない。だから失業保険関係の書類も渡せてない』ってぬかしやがった」
「でしょう? 実はその電話のあと、星崎は僕に電話をよこして、橋本建設でバイトするなら絶対に阻止してやると言ってきまして。どうやらあの会社、どこのゼネコンからも仕事がもらえていないようです。たとえわずかでも、取り分が減るのを恐れてのことかと」
「ほほう……。これは面白いことになってきたな」
ユキの瞳が怪しく光る。
それは紛れもなく、『根性曲がり』が発動した証拠であった。
佐野はユキを真っ直ぐに見て言った。
「僕、御社へ入社する前に、やっておきたいことがあるんです」
「何をだ」
「古山建設の全ての女性社員が、星崎によって解雇されるおそれがあるんです。それをどうにか食い止めたいのです」
「ほう」
ユキが興味深げに右眉を上げる。
「というのも、星崎が前に、『社内の女の整理をする』と言っていまして」
「はあ? 何だそりゃ」
「つまり、今、在籍している女性社員を全員クビにして、若くて可愛い女性だけを入れると。そして正社員ではなく、アルバイト枠で採用し、一年で全員を総入れ替えにすると」
「セクハラとパワハラの極致だな。で、入れ替えの理由は、昇給させないためか?」
「いいえ。『美人でも飽きるから』です。けれど多分、レイナは別でしょうけれど」
「なにからなにまで、あいつはクソだな」
ユキが吐き捨てるように言う。
「ええ。ですから、そうなってしまう前に労働基準監督署へ相談に行きたいんです」
「つまり、タレコミか」
「はい。しかも不幸中の幸いというか、僕はまだ古山建設の社員なので、それができるんです。星崎と社長が共謀して、僕に失業保険を受給できないように書類を作らず放置しているものですから。それに給料の未払いもありますし」
「あー……そういえばこの前、様子を探りに星崎へ電話したら、あの野郎、ぬけぬけと、『佐野は一月の仕事始めの日からずっと無断欠勤していて連絡が取れない。だから失業保険関係の書類も渡せてない』ってぬかしやがった」
「でしょう? 実はその電話のあと、星崎は僕に電話をよこして、橋本建設でバイトするなら絶対に阻止してやると言ってきまして。どうやらあの会社、どこのゼネコンからも仕事がもらえていないようです。たとえわずかでも、取り分が減るのを恐れてのことかと」
「ほほう……。これは面白いことになってきたな」
ユキの瞳が怪しく光る。
それは紛れもなく、『根性曲がり』が発動した証拠であった。
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