かなり遅れたクリスマス～最悪な出逢いから始まる、人生の大逆転と恋の予感の物語

第２２９話 過酷なテストの裏側で

「その試験内容だが――」
　ユキが言う。
「ケイに対する彼らの態度が冷たかったのは、過酷な人間関係の中で、どのように振る舞うかのテストだったんだ。そこでくさらずに淡々と正確に作業ができるかどうか、つまり、メンタルの強さと施工技術のバランスを見たんだ」
「はい」
　そこはどうにかクリアできたと思う。
　佐野は心の中で自己採点する。
「次に、想定外の工期短縮を利用して、ケイの施工のスピードと、その正確さ、そして徹夜作業における体力の配分と自己管理力のチェックだ。もちろんその間も周囲は決してフレンドリーではない。迫り来る工期と緊張と疲労、人間関係のいたたまれなさの中で、ケイがどこまで耐えられるかを全員でこと細かに見ていたんだ」
「それって、圧迫面接の実践版ですよね」
  佐野は苦笑する。思い返せば、学生時代の就職活動で何度かやられて面食らった記憶がある。
「うん。まさしくそうだ」
　ユキがうなずく。
「でもな、彼らもまた、ケイに対して激しい申し訳なさと強い罪悪感のなかで作業をしていたんだ」
　その点については全く異論はない。
　あの現場で理不尽なことを言われたり、嫌がらせをされたことが一切ないからだ。
「そしてケイが、このとんでもなく常識はずれな入社試験に合格し、古山建設が警察沙汰になる前に、一日でも早く引き抜きたいと全員が強く願っていたんだ。それだけは信じてくれ。俺からも頼む」
「はい。もちろんです」
  佐野の脳裏に彼らの顔が次々と浮かぶ。
  温かな気持ちとともに。