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第126話 逆ギレ称賛
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「すまんな。ケイ」
ユキがぽつりと言う。
「え? なにがです?」
佐野は驚き、ユキの方へ向き直る。
「ケイは俺と出会ってから、坂道を転げ落ちるように不幸になっている気がしてならない」
確かにそうだ。けれど短絡的にそうですねとは言えない。なぜならそのとばっちりとひきかえに、自分の本当の気質が自覚できたのだ。もしもそれを知らないまま周囲に流され、漠然と女性と結婚していたら――想像しただけで背筋が凍る。
「逆ギレしまくる俺は疫病神だ。やっぱりAの言っていた通り、 『お前みたいな奴、男はみんな逃げる』なんだろうな」
「それは違います!」
佐野は慌てて否定する。
「田上課長のお陰で、当社の闇の部分が一気に表へ出ることができたんです。こう言ってはなんですけど、その逆ギレが大いに役立っているんです」
「そうかなあ」
疑わしげに首をかしげる。
「そうですよ。けど正直に言えば、自分はそのせいで思いっきり矢面に立たされてる感は否めません。でもいつかは表面化する運命だったんです。そのきっかけを作ってくれたのが田上課長です。だからどうか気にしないでください。そして今後も心おきなく逆ギレしてください」
「それって、ほめられてるのか、けなされてるのか分からんぞ」
いぶかりの目で佐野を見る。
「もちろん、ほめてるんです」
そして、これに続き、そんなあなたが好きなんです、と言えたらどんなにいいか。でも言えない。さっきのハイテンションの時なら勢いに任せて告白できたかもしれないが、今は無理。
「……そうか」
ユキはそこでようやく険しい表情をゆるめ、小さく笑った。
ユキがぽつりと言う。
「え? なにがです?」
佐野は驚き、ユキの方へ向き直る。
「ケイは俺と出会ってから、坂道を転げ落ちるように不幸になっている気がしてならない」
確かにそうだ。けれど短絡的にそうですねとは言えない。なぜならそのとばっちりとひきかえに、自分の本当の気質が自覚できたのだ。もしもそれを知らないまま周囲に流され、漠然と女性と結婚していたら――想像しただけで背筋が凍る。
「逆ギレしまくる俺は疫病神だ。やっぱりAの言っていた通り、 『お前みたいな奴、男はみんな逃げる』なんだろうな」
「それは違います!」
佐野は慌てて否定する。
「田上課長のお陰で、当社の闇の部分が一気に表へ出ることができたんです。こう言ってはなんですけど、その逆ギレが大いに役立っているんです」
「そうかなあ」
疑わしげに首をかしげる。
「そうですよ。けど正直に言えば、自分はそのせいで思いっきり矢面に立たされてる感は否めません。でもいつかは表面化する運命だったんです。そのきっかけを作ってくれたのが田上課長です。だからどうか気にしないでください。そして今後も心おきなく逆ギレしてください」
「それって、ほめられてるのか、けなされてるのか分からんぞ」
いぶかりの目で佐野を見る。
「もちろん、ほめてるんです」
そして、これに続き、そんなあなたが好きなんです、と言えたらどんなにいいか。でも言えない。さっきのハイテンションの時なら勢いに任せて告白できたかもしれないが、今は無理。
「……そうか」
ユキはそこでようやく険しい表情をゆるめ、小さく笑った。
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