119 / 334
第119話 謎の沈黙
しおりを挟む
窓の向こうでビュウビュウと風の音がする。晴れてはいるが、かなりの強風だ。
倉庫の養生シート、大丈夫かな。何せガムテープで留めてるだけだし。
佐野はユキと社長とのやり取りを気にしつつも気が気ではない。
チラリと横目で窓を見る。案の定、シートの端の部分から風が入り込み、空気をはらんでバタバタと大きくはためいている。
『さて、田上課長。いかがいたします?』
社長が挑発を含んだダミ声で聞く。
『なんだったら、今すぐにでも佐野をそこから引き上げてもいいんですよ。あるいは本日から差額を日割り計算で佐野の給料から差し引きするか……あとは田上課長の決断次第でございますよ』
だがユキは黙っている。口をへの字にして腕を組み、スマホを厳しい眼差しで睨んでいる。
一方、佐野はユキの動向と倉庫の養生シートを目で交互に見ていた。風はますます強くなり、シートは激しくのたうっている。
まずい。このままではシートが飛ばされてしまう。そしてユキは、どうして黙っているのだろう。
佐野はユキの意図が読めずいぶかり、そわそわし始める。
『わかります、わかりますよおー。そのお気持ち、痛いほどわかります。悩みますよねえ。佐野が抜けたら人手不足だし、かといって給料差し引きでは佐野が悔し紛れにあちこち言いふらし、結果、周囲から橋本建設さんはブラック企業と陰口叩かれますもんね』
そんなことなどするもんか。佐野はムッとする。これは自分のプライドの問題だ。
すぐさま社長に言い返してやりたいが、それができない状況にあるので憤懣やるかたなしである。
倉庫の養生シート、大丈夫かな。何せガムテープで留めてるだけだし。
佐野はユキと社長とのやり取りを気にしつつも気が気ではない。
チラリと横目で窓を見る。案の定、シートの端の部分から風が入り込み、空気をはらんでバタバタと大きくはためいている。
『さて、田上課長。いかがいたします?』
社長が挑発を含んだダミ声で聞く。
『なんだったら、今すぐにでも佐野をそこから引き上げてもいいんですよ。あるいは本日から差額を日割り計算で佐野の給料から差し引きするか……あとは田上課長の決断次第でございますよ』
だがユキは黙っている。口をへの字にして腕を組み、スマホを厳しい眼差しで睨んでいる。
一方、佐野はユキの動向と倉庫の養生シートを目で交互に見ていた。風はますます強くなり、シートは激しくのたうっている。
まずい。このままではシートが飛ばされてしまう。そしてユキは、どうして黙っているのだろう。
佐野はユキの意図が読めずいぶかり、そわそわし始める。
『わかります、わかりますよおー。そのお気持ち、痛いほどわかります。悩みますよねえ。佐野が抜けたら人手不足だし、かといって給料差し引きでは佐野が悔し紛れにあちこち言いふらし、結果、周囲から橋本建設さんはブラック企業と陰口叩かれますもんね』
そんなことなどするもんか。佐野はムッとする。これは自分のプライドの問題だ。
すぐさま社長に言い返してやりたいが、それができない状況にあるので憤懣やるかたなしである。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
81
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる