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第107話 不信と敵愾心の沼へ堕ちる
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佐野は激しく憤った。社長はユキを軽視していると。元請とはいえ、自分よりもずっと年下であるからだ。こんな若造なんぞ、ちょっと脅せばすぐに折れると高をくくっているのだ。
そこでふと思う。自社の社員も同様に見ているのではないかと。鈴木の解雇がその証拠だ。社長は社員を使い捨ての駒だと思っているのではないか。もちろん会社の組織とはそういうものだと重々承知はしている。
けれど去年のクリスマス前後から、自分の勤務先の闇の部分がものすごい勢いで浮き上がってきているような気がしてならない。いや、気のせいではない。事実だ。星崎の暴走が全てを物語っている。これはもう異常を通り越して狂気だ。
佐野は雇われている身でありながら、会社への不信感と、星崎を擁護する社長に敵愾心を抑えられない。
その感情は無意識に歯を食いしばらせ、体を硬くする。室内の温度はちょうど良いはずなのに手足が冷たくなり、全身に悪寒が走る。呼吸も浅い。
落ち着け。佐野は自分に言い聞かせる。しかし心と体の混乱はそう簡単にはおさまらない。
するとその時――佐野の背中へ不意に何か温かいものが触れた。
それは、ユキの手のひらだった。
そこでふと思う。自社の社員も同様に見ているのではないかと。鈴木の解雇がその証拠だ。社長は社員を使い捨ての駒だと思っているのではないか。もちろん会社の組織とはそういうものだと重々承知はしている。
けれど去年のクリスマス前後から、自分の勤務先の闇の部分がものすごい勢いで浮き上がってきているような気がしてならない。いや、気のせいではない。事実だ。星崎の暴走が全てを物語っている。これはもう異常を通り越して狂気だ。
佐野は雇われている身でありながら、会社への不信感と、星崎を擁護する社長に敵愾心を抑えられない。
その感情は無意識に歯を食いしばらせ、体を硬くする。室内の温度はちょうど良いはずなのに手足が冷たくなり、全身に悪寒が走る。呼吸も浅い。
落ち着け。佐野は自分に言い聞かせる。しかし心と体の混乱はそう簡単にはおさまらない。
するとその時――佐野の背中へ不意に何か温かいものが触れた。
それは、ユキの手のひらだった。
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