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第101話 他社の不幸は当社の利益
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通話が始まった。社長はすぐに電話に出た。
『今までどこに行ってたんだ!』
開口一番、苛ついた怒号である。
「申し訳ございません。スマホを事務所に置いたまま、田上課長とずっと倉庫で作業をしていまして。今戻って来たところです」
佐野はシナリオ通りの言い訳をさも事実のように言った。
『ふん……そうか。で、星崎君から聞いたぞ。シャッターの件』
やはり連絡していたか。佐野とユキは顔を見合わせ互いにうなずく。
「はい。ですので、ひとまず養生シートで覆って、休み明けにリース会社と相談するとのことです」
『バカタレ。おれがわざわざお前に電話したのは、そんなことを聞くためじゃないッ』
来たぞ。佐野はユキに目配せする。ユキは素早くメモ用紙にボールペンを走らせた。そして佐野の前に置く。
〈どんどん喋らせろ。ケイは弁解しないで、ただあいづちを繰り返せ〉
了解。佐野は目で返事をする。昨夜と同じく不愉快ではあるが胸はワクワクしている。
スマホの向こうで社長は続ける。
『あのドケチなクソ会社がどんな目に遭おうと、こっちは知ったことじゃない』
ひどい言い草だ。橋本社長に聞かせてやりたい。
『でも新年挨拶であの会社へ行く時、今回の事件の情報は絶対に必要だ。点数稼ぎになるからだ。
大げさに心配するふりをして、あっちの印象を良くしとくんだ。つまりうちのイメージアップの材料にするんだ。そしたら優先的に下請のオファーが来る。これはライバル会社を蹴落とせる恰好のチャンスだ』
スマホの向こうで社長がフヒヒッと笑う。
他社の不幸は当社の利益というわけか。何とも卑しく浅ましい思考回路。隣ではユキがあきれ顔で首をぐるぐると回している。
『今までどこに行ってたんだ!』
開口一番、苛ついた怒号である。
「申し訳ございません。スマホを事務所に置いたまま、田上課長とずっと倉庫で作業をしていまして。今戻って来たところです」
佐野はシナリオ通りの言い訳をさも事実のように言った。
『ふん……そうか。で、星崎君から聞いたぞ。シャッターの件』
やはり連絡していたか。佐野とユキは顔を見合わせ互いにうなずく。
「はい。ですので、ひとまず養生シートで覆って、休み明けにリース会社と相談するとのことです」
『バカタレ。おれがわざわざお前に電話したのは、そんなことを聞くためじゃないッ』
来たぞ。佐野はユキに目配せする。ユキは素早くメモ用紙にボールペンを走らせた。そして佐野の前に置く。
〈どんどん喋らせろ。ケイは弁解しないで、ただあいづちを繰り返せ〉
了解。佐野は目で返事をする。昨夜と同じく不愉快ではあるが胸はワクワクしている。
スマホの向こうで社長は続ける。
『あのドケチなクソ会社がどんな目に遭おうと、こっちは知ったことじゃない』
ひどい言い草だ。橋本社長に聞かせてやりたい。
『でも新年挨拶であの会社へ行く時、今回の事件の情報は絶対に必要だ。点数稼ぎになるからだ。
大げさに心配するふりをして、あっちの印象を良くしとくんだ。つまりうちのイメージアップの材料にするんだ。そしたら優先的に下請のオファーが来る。これはライバル会社を蹴落とせる恰好のチャンスだ』
スマホの向こうで社長がフヒヒッと笑う。
他社の不幸は当社の利益というわけか。何とも卑しく浅ましい思考回路。隣ではユキがあきれ顔で首をぐるぐると回している。
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