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第56話 根性曲がりと根性悪
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「俺はこの根性曲がりと無精のせいで、今まで恋愛関係がまともに続いたことがない」
ユキが口をへの字にする。
「では、通常の人間関係は?」
あえて答えを知りつつ質問する。自分もかなりの根性悪だ。
「お世辞にも良好とは言えない。だからラインもメールもやってない。というか、そこまで親しい友人がいない」
やっぱりか。佐野は同情の顔を作りながら腹の中では大きくうなずく。
「けど、職場や花壇では社会人としての常識を踏まえたうえで振る舞っている。なので特に軋轢はない」
「じゃあ、つねに真実の田上課長の上には取り繕った田上課長が覆い被さっていると」
「そうだ。偽りの俺が、偽りの人生を歩んでいるんだ」
つまり、花壇でユキにモーションをかける人達は、メッキをほどこしたユキに惚れているのだ。なんとも不毛な話である。
「でも、どんなに取り繕っても何かの拍子で本性が出る。さっきの部屋の話とか、今の星崎との電話みたいにな」
「こう言ってはなんですけど、実に大人げない通話でした。もちろん星崎もですが」
「ああいう場面になると、信じられないくらいスムーズに言葉が出てくるんだよ」
ユキは顔を両手でゴシゴシとこする。根性曲がりを自覚しているとはいえ、あのやり取りはさすがに恥ずかしく感じているらしい。
「幻滅しただろう? 正直に言っていいぞ」
「しませんよ」
即答する。そこが逆に人間くさくて好ましいのに。
「下請だからって気を使うな。仕事とプライベートは切り離しているから本音を言え」
「気なんか使っていませんよ。そもそも、なんでそこまで取り繕うようになったんですか。ボロが出るのはわかっているのに」
大晦日、根性悪が仕事そっちのけで根性曲がりへ深く切り込む。
ユキが口をへの字にする。
「では、通常の人間関係は?」
あえて答えを知りつつ質問する。自分もかなりの根性悪だ。
「お世辞にも良好とは言えない。だからラインもメールもやってない。というか、そこまで親しい友人がいない」
やっぱりか。佐野は同情の顔を作りながら腹の中では大きくうなずく。
「けど、職場や花壇では社会人としての常識を踏まえたうえで振る舞っている。なので特に軋轢はない」
「じゃあ、つねに真実の田上課長の上には取り繕った田上課長が覆い被さっていると」
「そうだ。偽りの俺が、偽りの人生を歩んでいるんだ」
つまり、花壇でユキにモーションをかける人達は、メッキをほどこしたユキに惚れているのだ。なんとも不毛な話である。
「でも、どんなに取り繕っても何かの拍子で本性が出る。さっきの部屋の話とか、今の星崎との電話みたいにな」
「こう言ってはなんですけど、実に大人げない通話でした。もちろん星崎もですが」
「ああいう場面になると、信じられないくらいスムーズに言葉が出てくるんだよ」
ユキは顔を両手でゴシゴシとこする。根性曲がりを自覚しているとはいえ、あのやり取りはさすがに恥ずかしく感じているらしい。
「幻滅しただろう? 正直に言っていいぞ」
「しませんよ」
即答する。そこが逆に人間くさくて好ましいのに。
「下請だからって気を使うな。仕事とプライベートは切り離しているから本音を言え」
「気なんか使っていませんよ。そもそも、なんでそこまで取り繕うようになったんですか。ボロが出るのはわかっているのに」
大晦日、根性悪が仕事そっちのけで根性曲がりへ深く切り込む。
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