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第22話 反撃と警告 

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 ユキの発言には星崎と女もギョッとした。けれど星崎はこれを好機とばかりに頬をゆるめて懐柔を始める。
「いやはや、田上課長もあの店ご存じで? なーんだ、早く言ってくださいよお。今度一緒に行きましょう」
 すると女も同調し、「レイナでーす! ご指名よろしくお願いしまーす!」と腰をくねらせお辞儀する。
「いいえ、お断りします」
 ユキは即座にはね返す。
「あの界隈で、ぼったくりとしつこい客引きで有名な店だから知ってるだけですから。で、あなた――レイナさんも通行人に声をかけては顔写真付きの名刺を配りまくっているでしょう? それ、私の知り合いが見せてくれましてね。しかもいくら断っても執拗に誘ってくるうえに、香水もきつくて辟易したって言ってました。それって営業戦略としては逆効果じゃないですか? 集客方法、ちょっと見直した方がよろしいんじゃないですか」
「あー……はい」
 女は、ばつが悪そうにうなずく。
「ちなみに昨晩、星崎係長が私に電話してきた場所もその店かと思われますが?」
 矛先が今度は星崎へ向く。
「かなりお酒が入って、ご機嫌なようすでしたよね」
「いや、その」
  星崎は目を泳がせてたじろぐ。
「佐野さんをぶん殴ってくれと、ろれつの回らぬ口で何度もおっしゃっていましたよね」
「うう」
「あいにく当社はそんな時代錯誤で野蛮な社風ではございません」
「ぐぐ」
「ましてや酒場の女性と同伴出勤のついでに現場事務所へ冷やかし半分で挨拶に行くような常識外れな社員は一人もおりません」
 眼光鋭くユキに睨まれ、星崎の頭は落ち着きなく左右に揺れる。動揺している証拠だ。
「ですから、もうお引き取り下さい。メリークリスマス。せいぜい楽しい聖夜をお過ごしください。そしてもう二度と佐野さんをぶん殴れなどと言ったり、泥酔して電話をかけてこないでください。とても不愉快で迷惑です。それでも再度やるのなら、当社の下請リストから外されるのを覚悟のうえでしてください――佐野さん、事務所に戻るぞ」
 ユキは星崎に挨拶もせず、きびすを返して歩き出す。もちろんわざとだ。
「は、はい。では、あの……失礼します」
 佐野は星崎におずおずと会釈してからユキのあとを追う。一方、ユキからこてんぱんに反撃された二人は返す言葉もなくその場で茫然と突っ立っている。
 ああ、よかった。佐野は安堵する。一時はどうなるかと肝を冷やした。しかもユキの気質にまで。けれどそれは杞憂に終わった。
 されどなんて恐ろしいクリスマスだろう。佐野は額に浮かんだ脂汗を手のひらで拭った。
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