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第10話 行き先も想定外
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予想だにしていなかったユキからの誘いに佐野の声が驚きと安堵で思わず弾む。どうやら自分はユキに心の底から失望され、嫌われているのではないらしい。だが油断は禁物。食事の席で何か言われるかもしれない。星崎からの泥酔電話の件もある。
「では、どちらへ」
佐野は緊張と警戒をないまぜにしつつ聞く。
「そうだな、キャラメル・フェアリーに行こう」
「え!」
考えもしなかった店の名が飛び出し、佐野の目が点になる。そこは花壇の姉妹店のメイド喫茶。平日の昼間に作業服で行くにはかなり抵抗がある場所だ。
「ここから少々距離はあるが、ついでに会社にも寄るから少しぐらい時間が押しても問題はない」
佐野の困惑と驚愕をよそにユキは平然と言う。
「あの、そこって……メイド喫茶ですよね。花壇の」
おそるおそる言う。可能性は低いが、もし星崎に出入りしているところを見られたら、とんでもないことになるからだ。
「ふふふ。安心しろ。ビルの裏口から入って秘密の別室で食うから誰にもバレないよ」
「秘密の別室?」
「花壇の常連だけが使える個室なんだ。もちろんメイドさんも来ない。オーナーが直接対応する。注文も配膳もな。味はお墨付きだ。ケイも花壇で食ったから覚えてるだろ?」
「……!」
予告もなしにユキは突然ケイと呼び、佐野はさらなる驚きで息が詰まる。
「ええ――はい。クラブサンドイッチ、絶品でした」
言葉もままならず、声を絞り出すようにして答える。
「だろ? じゃ、行こう。俺が運転する」
ユキは車のキーを握って席を立ち、玄関へと向かう。
いきなりケイと呼ばれ、しかも行き先はメイド喫茶の秘密の別室。想定外の展開に思考が追いつかない。佐野は防寒ジャンバーを抱え、混乱しながらあとを追う。
「では、どちらへ」
佐野は緊張と警戒をないまぜにしつつ聞く。
「そうだな、キャラメル・フェアリーに行こう」
「え!」
考えもしなかった店の名が飛び出し、佐野の目が点になる。そこは花壇の姉妹店のメイド喫茶。平日の昼間に作業服で行くにはかなり抵抗がある場所だ。
「ここから少々距離はあるが、ついでに会社にも寄るから少しぐらい時間が押しても問題はない」
佐野の困惑と驚愕をよそにユキは平然と言う。
「あの、そこって……メイド喫茶ですよね。花壇の」
おそるおそる言う。可能性は低いが、もし星崎に出入りしているところを見られたら、とんでもないことになるからだ。
「ふふふ。安心しろ。ビルの裏口から入って秘密の別室で食うから誰にもバレないよ」
「秘密の別室?」
「花壇の常連だけが使える個室なんだ。もちろんメイドさんも来ない。オーナーが直接対応する。注文も配膳もな。味はお墨付きだ。ケイも花壇で食ったから覚えてるだろ?」
「……!」
予告もなしにユキは突然ケイと呼び、佐野はさらなる驚きで息が詰まる。
「ええ――はい。クラブサンドイッチ、絶品でした」
言葉もままならず、声を絞り出すようにして答える。
「だろ? じゃ、行こう。俺が運転する」
ユキは車のキーを握って席を立ち、玄関へと向かう。
いきなりケイと呼ばれ、しかも行き先はメイド喫茶の秘密の別室。想定外の展開に思考が追いつかない。佐野は防寒ジャンバーを抱え、混乱しながらあとを追う。
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