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Chapter.46
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ベッドに寝転がりながらまだ見慣れない天井を眺めていると、新しい家での生活が始まる実感がじわじわとわいてくる。
はっと思い出して、クロゼットに入れたジーンズのポケットから合鍵を取り出した。
「あぶない」
これがないと、ちょっと外出しただけでも閉め出されてしまう。
一緒にしまっていたバッグからキーケースを取り出し、カチリと新しい鍵を装着する。
「結婚……かっこかり、か……」
攷斗から言われたその言葉は、プロポーズではなく提案だ。
気持ちが通じ合って、というのではない。ただ、利害が一致しただけ。
それだけなのだ、と自分に言い聞かせる。でないと、いまこの部屋に一人でいることが寂しくなってしまう。
素直な気持ちを言えないままモダモダ過ごしたら、どのくらいの月日が経つのだろう。また、他に好きな人が出来たと一方的に告げられ、別居しなければいけなくなるのだろうか。
元婚約者を引きずっているわけじゃない。攷斗にそれを言われたら、本当に人生が立ち行かなくなりそうな気がしているのだ。
だから、白黒はっきりつけずに二人で会って、二人の時間を過ごせる関係を保っていたかった。
一方的に好きなだけでは、気持ちを伝えた段階でその関係性を維持出来なくなってしまう。
なのに、差し伸べられた手を取ってしまった。
果たしてそれは、正解だったのだろうか。
もう放したくないそのぬくもり。繋がっているのか確信が持てない心。
何度否定されても、自分の都合を押し付けたのではと、優しい攷斗が自分の境遇に見かねたのではないかと、疑心暗鬼になってしまう。
いつかこのモヤが晴れる日が来るだろうか。気持ちが通じ合ったと安心出来る日が……。
なんだかどんどん暗い気持ちになってきたので、明日の朝の献立を決めることにした。
スーパーで食材を選んだときに併せて買った自分の朝食用と常備食材の中で組み合わせを考える。
パンと何かしらの卵料理とハムかソーセージかベーコンか、とにかく加工肉食品を焼いたもの。あと粉末のスープ。
本当に簡単なものになりそうだ。
(それでも喜んでくれるんだろうなー)
ニコニコと朝食をほおばる攷斗の顔が目に浮かぶ。
ふふっと笑って、スマホのアラームをセットした。
ドキドキして眠れないかもと思ったが、昼間の疲れも相まって、その心配は杞憂に終わった。
* * *
はっと思い出して、クロゼットに入れたジーンズのポケットから合鍵を取り出した。
「あぶない」
これがないと、ちょっと外出しただけでも閉め出されてしまう。
一緒にしまっていたバッグからキーケースを取り出し、カチリと新しい鍵を装着する。
「結婚……かっこかり、か……」
攷斗から言われたその言葉は、プロポーズではなく提案だ。
気持ちが通じ合って、というのではない。ただ、利害が一致しただけ。
それだけなのだ、と自分に言い聞かせる。でないと、いまこの部屋に一人でいることが寂しくなってしまう。
素直な気持ちを言えないままモダモダ過ごしたら、どのくらいの月日が経つのだろう。また、他に好きな人が出来たと一方的に告げられ、別居しなければいけなくなるのだろうか。
元婚約者を引きずっているわけじゃない。攷斗にそれを言われたら、本当に人生が立ち行かなくなりそうな気がしているのだ。
だから、白黒はっきりつけずに二人で会って、二人の時間を過ごせる関係を保っていたかった。
一方的に好きなだけでは、気持ちを伝えた段階でその関係性を維持出来なくなってしまう。
なのに、差し伸べられた手を取ってしまった。
果たしてそれは、正解だったのだろうか。
もう放したくないそのぬくもり。繋がっているのか確信が持てない心。
何度否定されても、自分の都合を押し付けたのではと、優しい攷斗が自分の境遇に見かねたのではないかと、疑心暗鬼になってしまう。
いつかこのモヤが晴れる日が来るだろうか。気持ちが通じ合ったと安心出来る日が……。
なんだかどんどん暗い気持ちになってきたので、明日の朝の献立を決めることにした。
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パンと何かしらの卵料理とハムかソーセージかベーコンか、とにかく加工肉食品を焼いたもの。あと粉末のスープ。
本当に簡単なものになりそうだ。
(それでも喜んでくれるんだろうなー)
ニコニコと朝食をほおばる攷斗の顔が目に浮かぶ。
ふふっと笑って、スマホのアラームをセットした。
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