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Chapter.45
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「あ、お帰りなさい」
ソファに座ってテレビを視るひぃなに「うん、ただいま」軽く返事をしてキッチンに立ち寄る。
ミネラルウォーターを持ってリビングへ行き、ひぃなの隣に座った。テレビは丁度CM中で、何を視ていたのかわからない。
「なんか面白そうなのあった?」
「いつも視てるバラエティ番組を点けてる」
「そうなんだ。一緒に視ようかな」
「ほかに視たいのあったらそれでいいよ? 自分のデッキで録画してるから」
見逃してもいいように毎週予約をしてるが、放送時に視聴出来たらリアルタイムで視るようにしている。自室で視ても良かったのだが、同居初日だし攷斗が戻ってくるのを待ちたかった。
「いや、大丈夫。一緒に視たい」
「うん。明日は? お仕事?」
「そうだね。ちょっと休めなくて。ごめん」
「全然。忙しいのに、今日お休みさせちゃってごめんね。ありがとう」
ひぃなが有休期間中というだけで、世間的には平日だ。
「そりゃ休むでしょ。今年の最重要案件なんだから」
「おおげさ」
言って、ひぃなが笑う。
「いやいや、最重要でしょ。奥さんが自分ちに引っ越してくるなんて。いままで生きてきた中での最重要案件でもいいよ」
「そっか、そうだね」
確かに、電撃結婚した夫婦が同居するその初日は、いままでの人生に於いて最重要案件かもしれない。
なんだかちょっと、くすぐったい気持ちになる。
相手の肌に触れたい気持ちが湧いたことには気付かないフリをして、二人でテレビを眺めていると、朝にはパンをお勧めするという旨の歌詞が、軽快なメロディに乗ってテレビから流れてきた。大手食品メーカーのCMだ。
「そういえば、朝ごはん食べる派?」
「食べたり食べなかったり派」
「パン派? ご飯派?」
「パンでもご飯でも嬉しい派」
「曖昧な派閥だなぁ……」
「ひなに合わせるよ。あったら食べたいし、なければ食べないし」
「じゃあ、明日から朝ごはん食べる派で」
「えっ、作ってくれるの」
「うん。いつも朝食べてるから。簡単なのだけどいい?」
「もちろん!」
「いつも何時に家出るの?」
「フレックスだから何時でもいいんだけど、起きるのは大体7時くらいかな」
その時間なら、食べてからでも出勤に間に合う。
「了解しました」
「えー、楽しみ」
「がんばります」
多大な期待に副えるかどうかわからないが、楽しみにしてもらえるのは悪くない。
テレビに映る番組のタイトルが切り替わった。時刻は22時。寝るにはまだ早いが、昼間の疲れも出ているからそろそろ休みたいな、という感じ。
「部屋、戻ろうかな」
「そうだね。俺ももう寝るよ」
テレビを消して、立ち上がる。
「なにか困ったことがあったら、夜中でもいいから部屋来てね」
「うん、ありがとう」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
食事の帰りに駅で別れ、自宅に帰るときとは全く別の感情が二人に降りかかる。新婚初夜なのに家庭内別居をしているようだ。
ひぃなが自室のドアを開け、電気を点ける。
リビングの照明が消え、背後でドアが閉まる音がする。その音は攷斗が自室へ移動した合図のように聞こえた。
そっと振り返ってみるが、そこに攷斗はもういない。
当たり前のことなのに、寂しく感じてしまう。
(ドラマじゃあるまいし……)
電気が消えドアが開閉したあともそこに攷斗がいて、溢れ出る感情に身を任せ駆け寄る攷斗に抱き締められたいとでもいうのか。
都合のいい自分の妄想に苦笑しながら自室に入って、大きく深呼吸した。
長いような短いような、時間の経過が体感に伴わない一日だった。
ソファに座ってテレビを視るひぃなに「うん、ただいま」軽く返事をしてキッチンに立ち寄る。
ミネラルウォーターを持ってリビングへ行き、ひぃなの隣に座った。テレビは丁度CM中で、何を視ていたのかわからない。
「なんか面白そうなのあった?」
「いつも視てるバラエティ番組を点けてる」
「そうなんだ。一緒に視ようかな」
「ほかに視たいのあったらそれでいいよ? 自分のデッキで録画してるから」
見逃してもいいように毎週予約をしてるが、放送時に視聴出来たらリアルタイムで視るようにしている。自室で視ても良かったのだが、同居初日だし攷斗が戻ってくるのを待ちたかった。
「いや、大丈夫。一緒に視たい」
「うん。明日は? お仕事?」
「そうだね。ちょっと休めなくて。ごめん」
「全然。忙しいのに、今日お休みさせちゃってごめんね。ありがとう」
ひぃなが有休期間中というだけで、世間的には平日だ。
「そりゃ休むでしょ。今年の最重要案件なんだから」
「おおげさ」
言って、ひぃなが笑う。
「いやいや、最重要でしょ。奥さんが自分ちに引っ越してくるなんて。いままで生きてきた中での最重要案件でもいいよ」
「そっか、そうだね」
確かに、電撃結婚した夫婦が同居するその初日は、いままでの人生に於いて最重要案件かもしれない。
なんだかちょっと、くすぐったい気持ちになる。
相手の肌に触れたい気持ちが湧いたことには気付かないフリをして、二人でテレビを眺めていると、朝にはパンをお勧めするという旨の歌詞が、軽快なメロディに乗ってテレビから流れてきた。大手食品メーカーのCMだ。
「そういえば、朝ごはん食べる派?」
「食べたり食べなかったり派」
「パン派? ご飯派?」
「パンでもご飯でも嬉しい派」
「曖昧な派閥だなぁ……」
「ひなに合わせるよ。あったら食べたいし、なければ食べないし」
「じゃあ、明日から朝ごはん食べる派で」
「えっ、作ってくれるの」
「うん。いつも朝食べてるから。簡単なのだけどいい?」
「もちろん!」
「いつも何時に家出るの?」
「フレックスだから何時でもいいんだけど、起きるのは大体7時くらいかな」
その時間なら、食べてからでも出勤に間に合う。
「了解しました」
「えー、楽しみ」
「がんばります」
多大な期待に副えるかどうかわからないが、楽しみにしてもらえるのは悪くない。
テレビに映る番組のタイトルが切り替わった。時刻は22時。寝るにはまだ早いが、昼間の疲れも出ているからそろそろ休みたいな、という感じ。
「部屋、戻ろうかな」
「そうだね。俺ももう寝るよ」
テレビを消して、立ち上がる。
「なにか困ったことがあったら、夜中でもいいから部屋来てね」
「うん、ありがとう」
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
食事の帰りに駅で別れ、自宅に帰るときとは全く別の感情が二人に降りかかる。新婚初夜なのに家庭内別居をしているようだ。
ひぃなが自室のドアを開け、電気を点ける。
リビングの照明が消え、背後でドアが閉まる音がする。その音は攷斗が自室へ移動した合図のように聞こえた。
そっと振り返ってみるが、そこに攷斗はもういない。
当たり前のことなのに、寂しく感じてしまう。
(ドラマじゃあるまいし……)
電気が消えドアが開閉したあともそこに攷斗がいて、溢れ出る感情に身を任せ駆け寄る攷斗に抱き締められたいとでもいうのか。
都合のいい自分の妄想に苦笑しながら自室に入って、大きく深呼吸した。
長いような短いような、時間の経過が体感に伴わない一日だった。
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