0(ゼロ)同士の恋愛  ほんとは愛されたい。【完結】

mamaマリナ

文字の大きさ
12 / 52

12  落ち人とは

しおりを挟む
「クックッ、ダメだ。お前見ると笑える」

「アラン、いい加減にしろよ」

「だって、家族にビスクドール愛好家だと思われてたなんて笑えるだろ。」

「落ち人について教えて欲しくて呼んだんだ。話にならん」

「わかった、わかった。」

「隣国では、どのように言われているんだ。」

「俺が聞いたのは、落ちて人は、向こうと違う顔になって落ちて来たり、体格が変わたりするらしい。」

「ゼロは、髪と目の色が変わったらしい。」

「あとは、新しい考えを持っていたり、新しい物を作り出すみたいだ。だから幸福を運ぶとか幸福を呼ぶとか言われている。金運をもたらすらしい。」

「他は」

「総じてみんな優しくて真面目、でも孤独や苦悩を持っているらしい。だからか、なかなか心を開かない」

「そうか」

「あとは、傷付いて落ちて来る。体の外側のみならず、心の内側にも。」

「ゼロも…」

「師匠が診察した落ち人一人は、病的に痩せこけていた。女性が怖いようだった。物がほとんど食べられなかった。もう一人は、俺が師匠につく前の話らしいが、男性が怖いようだったみたい。身体に触るのを極端に嫌がっていたらしい。健康そうに見えたが、とりあえず診察すると体はひどい有り様だったようだ。」

「どういうことだ。」

「性的暴力」

「そんな」

「そういう風に傷付いていることもある。」

「ゼロは、」

「ディランのところ落ち人は、痩せていたが病的では、ない。」

「確かに」

「腹は刺されて傷があった。手首は、少し赤かったから拘束の後かもしれん。」

「他は覚えてないか」

「性的暴力はわからん、尻の穴まで見てないからな」

「当たり前だ」

「だが、性的暴力がないとは言えない。落ち人の半分は、性的暴力を受けていると報告があるらしい。」

「そうなのか」

「そうだ、それでも受け入れられるか?」

「関係ない。」 

「そうだな、お前の運命のビスクドールだからな」

「おい、お前また」

「でも、なかなか心を開いて貰うの大変だぞ、体の傷は治るが心は難しい。何を抱えているのか分からんからな」

「ああ、すでに俺にだけ壁がある。好意を気付かれてから一線を引かれている。」

「あー、御愁傷様です。」

「近づくと逃げられる、猫みたいだよ。」

「でも、近寄ることも甘えることもないんだろ?」

「俺にはない。ミランダとかには何か頼みごとしたりしてるらしいのに。」

「人を選んでる」

「俺がやっぱりダメなのか?嫌いなのか?でも、かっこいいって言ってたぞ」

「うーん、下心がわかるんじゃないか?」

「うっう、それを言われると。でも、性的暴力がもしあって、そういうことがイヤならしなくても大丈夫だ。一緒にいるだけでいいんだ。」

「まぁお前は、したことないから、しなくても居れるよな。」

「し、仕方ないだろ、怖がって誰も近づいくれないから、童貞で何が悪い。」

「悪くないさ。でも、お前だけ壁があるのは、もしかしたら、向こうも好意が少しあるかもよ。自衛本能で近づいたらダメだって思っているかもね。」

「それが、本当なら嬉しいが、本能的に怖いと心で思っていたら、どうしよう。」

「まあ、そういうこともある。」

「そんなこと言うなよ。」

「お前が言ったんだろうが。」

「まあ、頑張れとしか言えない。早く捕まえないとキレイだから、誰かにとられるぞ。」

「わかっているって。ハァー」

「頑張れ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

世界を救ったあと、勇者は盗賊に逃げられました

芦田オグリ
BL
「ずっと、ずっと好きだった」 魔王討伐の祝宴の夜。 英雄の一人である《盗賊》ヒューは、一人静かに酒を飲んでいた。そこに現れた《勇者》アレックスに秘めた想いを告げられ、抱き締められてしまう。 酔いと熱に流され、彼と一夜を共にしてしまうが、盗賊の自分は勇者に相応しくないと、ヒューはその腕からそっと抜け出し、逃亡を決意した。 その体は魔族の地で浴び続けた《魔瘴》により、静かに蝕まれていた。 一方アレックスは、世界を救った栄誉を捨て、たった一人の大切な人を追い始める。 これは十年の想いを秘めた勇者パーティーの《勇者》と、病を抱えた《盗賊》の、世界を救ったあとの話。

異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた

k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
 病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。  言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。  小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。  しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。  湊の生活は以前のような日に戻った。  一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。  ただ、明らかに成長スピードが早い。  どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。  弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。  お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。  あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。  後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。  気づけば少年の住む異世界に来ていた。  二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。  序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...