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12  落ち人とは

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「クックッ、ダメだ。お前見ると笑える」

「アラン、いい加減にしろよ」

「だって、家族にビスクドール愛好家だと思われてたなんて笑えるだろ。」

「落ち人について教えて欲しくて呼んだんだ。話にならん」

「わかった、わかった。」

「隣国では、どのように言われているんだ。」

「俺が聞いたのは、落ちて人は、向こうと違う顔になって落ちて来たり、体格が変わたりするらしい。」

「ゼロは、髪と目の色が変わったらしい。」

「あとは、新しい考えを持っていたり、新しい物を作り出すみたいだ。だから幸福を運ぶとか幸福を呼ぶとか言われている。金運をもたらすらしい。」

「他は」

「総じてみんな優しくて真面目、でも孤独や苦悩を持っているらしい。だからか、なかなか心を開かない」

「そうか」

「あとは、傷付いて落ちて来る。体の外側のみならず、心の内側にも。」

「ゼロも…」

「師匠が診察した落ち人一人は、病的に痩せこけていた。女性が怖いようだった。物がほとんど食べられなかった。もう一人は、俺が師匠につく前の話らしいが、男性が怖いようだったみたい。身体に触るのを極端に嫌がっていたらしい。健康そうに見えたが、とりあえず診察すると体はひどい有り様だったようだ。」

「どういうことだ。」

「性的暴力」

「そんな」

「そういう風に傷付いていることもある。」

「ゼロは、」

「ディランのところ落ち人は、痩せていたが病的では、ない。」

「確かに」

「腹は刺されて傷があった。手首は、少し赤かったから拘束の後かもしれん。」

「他は覚えてないか」

「性的暴力はわからん、尻の穴まで見てないからな」

「当たり前だ」

「だが、性的暴力がないとは言えない。落ち人の半分は、性的暴力を受けていると報告があるらしい。」

「そうなのか」

「そうだ、それでも受け入れられるか?」

「関係ない。」 

「そうだな、お前の運命のビスクドールだからな」

「おい、お前また」

「でも、なかなか心を開いて貰うの大変だぞ、体の傷は治るが心は難しい。何を抱えているのか分からんからな」

「ああ、すでに俺にだけ壁がある。好意を気付かれてから一線を引かれている。」

「あー、御愁傷様です。」

「近づくと逃げられる、猫みたいだよ。」

「でも、近寄ることも甘えることもないんだろ?」

「俺にはない。ミランダとかには何か頼みごとしたりしてるらしいのに。」

「人を選んでる」

「俺がやっぱりダメなのか?嫌いなのか?でも、かっこいいって言ってたぞ」

「うーん、下心がわかるんじゃないか?」

「うっう、それを言われると。でも、性的暴力がもしあって、そういうことがイヤならしなくても大丈夫だ。一緒にいるだけでいいんだ。」

「まぁお前は、したことないから、しなくても居れるよな。」

「し、仕方ないだろ、怖がって誰も近づいくれないから、童貞で何が悪い。」

「悪くないさ。でも、お前だけ壁があるのは、もしかしたら、向こうも好意が少しあるかもよ。自衛本能で近づいたらダメだって思っているかもね。」

「それが、本当なら嬉しいが、本能的に怖いと心で思っていたら、どうしよう。」

「まあ、そういうこともある。」

「そんなこと言うなよ。」

「お前が言ったんだろうが。」

「まあ、頑張れとしか言えない。早く捕まえないとキレイだから、誰かにとられるぞ。」

「わかっているって。ハァー」

「頑張れ」
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