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3級商業簿記編
chapter23 「引出金」って何!?
しおりを挟む「嶋尻さん!」
「先生、こんにちは!」
この先生は藍堀(あいぼり)先生。
商業科の郷中先生と一緒に美術部の顧問をしている、けやき商の美術の先生だ。
「確か嶋尻さんの美術の課題は終わっているはずだけど…」
「すみません先生、私の課題が終わるまで、一緒にいてもらっているだけなんです…」
今日はパソコン部の活動もなく、紗代の美術の課題が終わっていないということで、私は美術室に居候している、という訳だ。
「三枝さんは、あとどの位で終わりそうなのかしら?」
「あと1時間位だと思います…」
「そう…その間、嶋尻さん、暇にならない?」
「先生!それなら心配要りません!紗代が課題を制作している間、私はこれをやっていますから!」
そう言うと、私は先生に簿記の問題集を見せた。
「それは、簿記の問題集ね!私もせっかく商業高校で美術の先生をやっているんだから、簿記も覚えようかなぁ~って思ってはいるんだけど…」
「そうなんですね!先生が本気になったら、私たちなんかより比べ物にならないほど早いスピードで、3級に合格できますよきっと!」
「だと良いんだけどね…ちなみに、今はどんなことを勉強しているの?」
「え~と………あった!ここです!!」
私は問題集の該当ページを開くと、指を差した。
「「ヒキダシキン」でいいのかしら?」
「はい!先生、ご存知ですか?」
「伊達にけやき商で美術を教え始めて5年は経っていないわ!えっと…「引出金」でしょ…確か…「銀行から引き出したお金」だったかしら…」
「確かに意味は通じますけど…違います…」
「待って待って…ここまで出掛かってるの…」
「分かった!「引き出しにしまっておいた現金」のことでしょ!」
「先生…それじゃ「タンス貯金」と同じですよ…」
「「引き出しにある現金」でもないのね…なんだったかなぁ…」
「失礼します…って、美琴と紗代じゃないか!」
「煉先輩!」
「部長!お疲れ様です♪」
「パソコン部エースで部長の沢継君!久しぶりね!今日はどうしたの?」
「郷中先生から預かり物をしまして…」
「そうだったの…。………確かに、美術部の部費、お願いしていた通りだわ!沢継君、ありがとう!」
「いえ、俺は郷中先生から預かったものをお届けしただけですから…ところで、何故美琴と紗代が美術室に!?」
「紗代が美術の課題終わっていなくて、今仕上げているんです。で、私はその付き添いで…」
「そうだったのか…で、美琴は今「簿記」の問題集をやっている、という訳だな!」
「はいっ!「引出金」について、藍堀先生と話をしていたところです」
「そうなのよ。「銀行から引き出した現金」でもなければ「引き出しにしまっておいた現金」でもない…引出金って、何だったかしらね…」
「確かに、引出金はどちらでもありませんね…」
「引出金は…
・店主が店の現金を私用で持ち出したり
・店の商品を家事用として消費した時
・店舗の固定資産税を店の現金で支払った際の居住部分の割合分を計上する際
等に使用する、資本金の「評価勘定」です」
「出ました「評価勘定」!貸倒引当金も、売掛金を評価している勘定科目だから「評価勘定」と言われていて、貸借対照表では売掛金から貸倒引当金を差し引いて売掛金の額とする場合もあるってことでしたよね!」
「美琴!よく覚えているな!!」
「えっ!?まぐれ、ですよ!ま・ぐ・れ!」
「(「煉先輩に教えてもらったことは、一字一句覚えてます」なんて、恥ずかしくって言えない…)」
「嶋尻さん!?どうしたの?顔が赤いわよ?」
「先生!大丈夫です!何でもありませんから!!」
「…話を戻します。例えば、店主がお店の現金を私用で持ち出した場合は…」
「(借方(左側))引出金
/
(貸方(右側))現金
ですよね!」
「美琴!大正解!!これが店の「商品」だった場合は「現金」が「仕入」に変わります」
「「仕入」って、商品を仕入れたときに使われる勘定科目よね…商品を仕入れた時は
(借方(左側))仕入
/
(貸方(右側))買掛金
みたいな仕訳をするはずだから…」
「先生!簿記の基本、分かっているじゃないですか!!」
「だから、伊達に5年商業高校で美術の先生をやっていないって言ったでしょ!で、お店の商品が「売れた」以外で無くなったから「仕入」が右側に来る訳ね!」
「その通りです!ちなみに、固定資産税を1000円支払い、店舗の居住部分が40%だった場合は…」
「はいは~い!
(借方(左側))租税公課600
引 出 金400
/
(貸方(右側))現 金1000
みたいな感じになりま~す!」
「その通り!引出金は、資本金を評価している「評価勘定」なので、決算には資本金と相殺(そうさい)します」
「引出金を設定した時は(借方(左側))にある訳だから…
(借方(左側))資本金
/
(貸方(右側))引出金
って仕訳になるのかしらね…」
「はい!3級で資本金は「資産-負債」という式で算出される「純資産」の大半を占める勘定科目です。「純資産」つまり「純粋な資産」を、店主が私用で現金や商品を持ち出したことで減少させる、という訳なんです」
「最終的に「資本金」を減らすなら、毎回の仕訳で「資本金」を減らした方が面倒臭くないんじゃない!?」
「確かに、そういう方法もあって、検定の問題で引出金が選択肢になければ「資本金」を使うことになります」
「「引出金」は、店主が私用で店の現金や商品を多用する場合に用いられる勘定科目のようですね」
「なるほどね!さすが、商業科以外の先生方からも有名な沢継君!説明がうまいわ!!」
「そうですよね!先生!!」
「…先生!終わりました!!」
「三枝さん!思ったよりも早く仕上がったのね!!どれどれ…」
「………うん!よくできてる!!合格よ!!」
「はいっ!ありがとうございます!!」
「良かったね、紗代!!」
「三枝の課題も終わったみたいだし…2人がこの後暇なら、3人で「あそこ」にいかないか!?」
「いいですね!」
「私も行きたいです!課題で神経使ったので、ちょうど頭が欲しているみたいです!」
「ねえねえ「あそこ」って…」
「駅から学校に来る途中にある「クレープ屋」ですよ!」
「あぁ、あそこのクレープ屋ね!!けやき商生のお墨付きって聞いたことがあるけど…」
「そうなんです!とっても美味しいので、先生も是非今度行ってみて下さい!」
「そうするわ!それじゃ、忘れ物のないように、気をつけて帰るのよ!」
「はいっ!先生、ありがとうございました!」
「沢継君もありがとうね!」
「いえ、こちらこそ失礼しました!」
「それじゃ、失礼します…」
「…クレープか…今度、部員と一緒に放課後行ってみようかしらね!!」
chapter 24 に続く
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