転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

文字の大きさ
上 下
91 / 96
第4章 入学試験編

第4章ー⑤

しおりを挟む
 自分の頭が少しの間フリーズしていた。魔物が襲って来たと思っていたこともあるが、襲っている人間達が一瞬あの時の魔物達と重り、同じ人間だとは思えなかった。

 「いやぁ、離してっ!」

 「へへへへ! そんな嫌そうな顔すんなよ姉ちゃん」

 集団の男の一人が、嫌がる女性の両腕を抑えて身動きを取りづらくしながら下卑た笑いを浮かべていた。

 「おいおいおい、そんな逃げんなって! 俺達は金と女さえ手に入ればおさらばしてやっからよぉ! 逃げるならその辺に金置いてってくれよぉ!!」

 「出来れば若ぇ女もその辺に置いといてくれると助かるんだけどな、ぎゃはっはっはっ!!」

 「…」

 更に集団の内の男二人が意気揚々とした態度で金と若い女性を要求。村の人達はそれどころではなく、ひたすら奴等から遠ざかっていた。

 男達は明らかに荒くれ者のような振舞を働いており、それぞれの手には短剣やら銃をチラつかせていた。身なりも正直まともな生活を送っていなさそうな程厳つい恰好をしていて、恐らく反社、というより賊に違いない。

 「おらおらぁ! 逃げてばっかいねぇでありったけの金と女置いてけやぁ!! じゃなきゃ、地の果てまで追いかけんぞ!!」

 「ひぃっ!?」

 「…」

 逃げる村人達に向かって、面白がるように脅迫を迫る賊の男達。それに対して、村人達は怯える一方。その様子を見て、更に奴等は面白がっていた。

 「有り金全部落とさなきゃあ、お前達の身体で存分に稼いでもらわなきゃなぁ!?」

 「ッ!?」

 賊の脅迫はエスカレートを増し、今度はとっ捕まえていた女性複数人に向かって脅迫し始めた。捕まっていた女性達はそれを聞いて絶望する表情を浮かべていた。

 「お願い、それだけは止めて」

 「あ゛あ゛ん?! 嫌ならあの連中に言えよ! 『皆お願い、私の為にこの人達にお金を渡してぇー!』ってな!!」

 女性の一人が恐る恐る止めて欲しいと懇願するが、賊の一人は汚い裏声女性モノマネで女性に皆を説得するよう促して来た。

 「…」

 その様子をしばし見ていて、段々苛立って来ていた。あまりにも卑劣。ここまで醜悪な人間は生まれて初めて見た。やってることはほぼあの時の魔物達と一緒だ。

 「…あっ、なにガン飛ばしてんだ、ガキィ?!」

 「ッ!?」

 苛立つ表情が顔に出ていたからか、初めて賊と目が合う。目が合うや否や向こうもガンを飛ばして来る。前世ではヤンキーの先輩相手にガンを飛ばすなんて到底出来なかったし、向こうからガン飛ばされたら萎縮していた。だけど今は違う。恐怖よりも怒りの方が勝っている。

 「おい、お前その袋ぉ、買い物の途中なんだろ? だったら金持ってるよなぁ? 出せ」

 賊は睨み合っている自分の買い物籠を見るや否や金を要求。悪い奴程こういうのは鋭い。だけど…

 「…ざけんな」

 「あ゛っ?」

 そんなこと関係ない。こいつらの言うことを聞く必要なんてないと、少し強めの口調で返す。

 「ふざけんな。とっとと帰れよ、クソ野郎」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...