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第4章 入学試験編
第4章ー⑥
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「クソ野郎? 帰れだぁ??」
「ああ。そう言ったんだ。聞こえたんならとっとと消えろ!」
自分も負け時と圧を掛ける。けど、奴等が真に受けて引き下がるとは思っていない。目的は相手を挑発すること。これで相手がキレて怒りに身を任せて攻撃してこようものならこっちも反撃に打って出る。こういうタイプは恐らく、相手に舐められればキレるタイプ。怒ればほぼ間違いなく自分を攻撃してくるだろう。だが、決して殺したりはない。相手が魔物でない以上、流石にそこまでは出来ない。あくまで暴動を鎮静化させる。人数は多少多いが、あの状況の時に比べれば問題ない。さあ、来るなら来い!
「…ぷっ!」
「なっ!」
しかし、自分の想定とは違う反応を見せる。さっきまで沸点まで到達してそうな程のキレ顔をしていたにも関わらず、自分の挑発に対して奴等はぎゃははと高笑いしていた。目の前でガン飛ばしていた相手も、吹き出すように笑い出した。
「はっはっはっは、クソ野郎はとっとと帰れ、だってよ?!」
「おーこえーこえー!!」
「な、なに笑ってやがる!?」
笑い出す賊を見て、何がそんなに可笑しいのか問いただす。ガキ(中身はおっさんだけど)一人に舐められてんだぞ? なんでこいつらは悠長に笑っているんだ。
「はっはっはっは、そりゃあ笑うしかねーだろ」
「はっ?」
「おいおいおい、やっぱこのガキ、全然状況飲みこめてねーみてーだぞ!?」
「そりゃあ正義感気取りたくなるわけだ!」
しかし、こいつらの返しを聞いて益々分からなくなる。状況? 状況って、なんの…
「おいガキィ、この状況見てなんもわかんねーか?」
「ッ!?」
ことを言っているのか、その時までは理解し損ねていた。賊に言われてようやくその意味を理解出来た。
「こっちには人質がいんだぞ!? それがどういう意味かわからねー程馬鹿じゃねーだろ?」
「い、いやぁ…」
「くっ!?」
そうだ。単純な話だった。向こうには女性の人質が居るんだ。相手を舐めていたのは自分の方。怒れるあまり、こんな単純な事にさえ気が付かなかった。
「お前がもし俺らに歯向かおうってんなら、そこに居る女共がどうなるかな?」
「いいぃっ?!」
「…」
賊の男は自分に見せつけるように一人の女性の首に短剣を突きつけた。短剣を突きつけられ、女性はビクビクと怯えている。
自分の行動が裏目に出てしまった。いや、元よりそうするつもりだったのかもしれないが、自分の浅はかな行動のせいで余計な事態を招いてしまったのは事実だ。
本当に自分は馬鹿だ。前世だったらこんなこと絶対にしなかった。勇者に憧れて変な正義感に目覚めてしまった。その結果がこのザマである。最悪だよ。
「わかったら金置いてけ。それと、お兄さん達に舐めた口聞いた悪い子にはしっかり教育しないとな」
男は自分が何もできないことを知ってか、金を要求すると同時に右腕を大きく振りかぶった。その際、しっかりと自分の視界の端で女性の首元に短剣をチラつかせる他の賊の男達の姿があった。抵抗すればわかってるよなと警告しているのだろう。
殴られるのはっとくに慣れている。だから甘んじて受け入れるつもりだ。しかし、それを受け入れるのは至極屈辱的だった。また同じ目に遭わなければならないのか自分は。
「よーし、そこを動くな…」
そう思っていた。
「そらよっ、と!」
自分が殴られようとした最中、青色の巾着袋が一つ、自分達の頭上から落ちて来た。
「ああ。そう言ったんだ。聞こえたんならとっとと消えろ!」
自分も負け時と圧を掛ける。けど、奴等が真に受けて引き下がるとは思っていない。目的は相手を挑発すること。これで相手がキレて怒りに身を任せて攻撃してこようものならこっちも反撃に打って出る。こういうタイプは恐らく、相手に舐められればキレるタイプ。怒ればほぼ間違いなく自分を攻撃してくるだろう。だが、決して殺したりはない。相手が魔物でない以上、流石にそこまでは出来ない。あくまで暴動を鎮静化させる。人数は多少多いが、あの状況の時に比べれば問題ない。さあ、来るなら来い!
「…ぷっ!」
「なっ!」
しかし、自分の想定とは違う反応を見せる。さっきまで沸点まで到達してそうな程のキレ顔をしていたにも関わらず、自分の挑発に対して奴等はぎゃははと高笑いしていた。目の前でガン飛ばしていた相手も、吹き出すように笑い出した。
「はっはっはっは、クソ野郎はとっとと帰れ、だってよ?!」
「おーこえーこえー!!」
「な、なに笑ってやがる!?」
笑い出す賊を見て、何がそんなに可笑しいのか問いただす。ガキ(中身はおっさんだけど)一人に舐められてんだぞ? なんでこいつらは悠長に笑っているんだ。
「はっはっはっは、そりゃあ笑うしかねーだろ」
「はっ?」
「おいおいおい、やっぱこのガキ、全然状況飲みこめてねーみてーだぞ!?」
「そりゃあ正義感気取りたくなるわけだ!」
しかし、こいつらの返しを聞いて益々分からなくなる。状況? 状況って、なんの…
「おいガキィ、この状況見てなんもわかんねーか?」
「ッ!?」
ことを言っているのか、その時までは理解し損ねていた。賊に言われてようやくその意味を理解出来た。
「こっちには人質がいんだぞ!? それがどういう意味かわからねー程馬鹿じゃねーだろ?」
「い、いやぁ…」
「くっ!?」
そうだ。単純な話だった。向こうには女性の人質が居るんだ。相手を舐めていたのは自分の方。怒れるあまり、こんな単純な事にさえ気が付かなかった。
「お前がもし俺らに歯向かおうってんなら、そこに居る女共がどうなるかな?」
「いいぃっ?!」
「…」
賊の男は自分に見せつけるように一人の女性の首に短剣を突きつけた。短剣を突きつけられ、女性はビクビクと怯えている。
自分の行動が裏目に出てしまった。いや、元よりそうするつもりだったのかもしれないが、自分の浅はかな行動のせいで余計な事態を招いてしまったのは事実だ。
本当に自分は馬鹿だ。前世だったらこんなこと絶対にしなかった。勇者に憧れて変な正義感に目覚めてしまった。その結果がこのザマである。最悪だよ。
「わかったら金置いてけ。それと、お兄さん達に舐めた口聞いた悪い子にはしっかり教育しないとな」
男は自分が何もできないことを知ってか、金を要求すると同時に右腕を大きく振りかぶった。その際、しっかりと自分の視界の端で女性の首元に短剣をチラつかせる他の賊の男達の姿があった。抵抗すればわかってるよなと警告しているのだろう。
殴られるのはっとくに慣れている。だから甘んじて受け入れるつもりだ。しかし、それを受け入れるのは至極屈辱的だった。また同じ目に遭わなければならないのか自分は。
「よーし、そこを動くな…」
そう思っていた。
「そらよっ、と!」
自分が殴られようとした最中、青色の巾着袋が一つ、自分達の頭上から落ちて来た。
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