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第3章 逆襲編
第3章ー⑦
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「「ッ!?」」
あまりの衝撃的な光景に、自分とミオは言葉を失い顔面蒼白。ほんの一瞬の出来事だった。前に走っていた馬車が黒い槍に貫かれ宙を舞い、宙で半回転した馬車から放り出される子供達はみな胸などをを一突きされ、身体中血まみれで、中には四肢の一部が吹き飛んでいたり、頭部まで貫かれている子も見えた。
そして、その中にはラエルの姿も当然あった。ラエルも胸を一突きされ、身体中血まみれで口から血を流していた。そんなラエルの目はかっぴらいたまま、こっちと視線が合った。瞳孔が開いたまま微動だにしない様子から見て、ラエルはもう息をしていない。放り出されて地面に叩きつけられた後も皆の呻く声が一つも聞こえてこない事から察するに、他の皆も声を出す間もなく即死している。
「ラ…エル…」
ラエルの表情を見て口からか細い声で言葉が漏れ出た。頭の情報処理が追い付かず不意に出た言葉。これ以上の言葉が出てこない。
「う…そ…」
ミオも恐る恐る言葉を出したが、口が上手く動かてせいない様子でその二文字を出すだけで精一杯のようだ。
「『本当ならもう少し様子を見るつもりでしたが、バレてしまっては仕方ありませんね』」
「ッ!?」
そんな二人の様子などお構いなく、馬車を貫いた黒い槍は引っ込んでいき、いつの間にか地面から影がフード姿をした人型の形に浮かび上がってきていた。
「はあ…はあ…、おまえ…」
そいつの姿を見た瞬間、自分の呼吸が荒くなる。悲しみ、怒り、憎しみで感情がぐちゃぐちゃになっていた。原因は言うまでもない。こいつのせいだ。
「『それにしても、随分とやってくれましたね貴方達。おかげで面倒事が増えてしまいましたよ。こんな大事な時に』」
「くっ!」
全てはこいつのせいだ。こいつが居なければ村も父もラエル達も死なずに済んだんだ。そう考えると、この感情は怒りの割合の方が勝ってきた気がする。呑気に話しかけてくるあいつに殺意まで覚える。
「『しかし、残念でしたね。貴方が私に気が付かなければ彼等も死ぬことはなかったでしょうに』」
「あ゛あ゛っ?!」
それを知ってか知らずか、奴は遠慮なく煽って来る。
「嘘吐くんじゃねえよ。最初《はな》から俺達を殺すタイミングを伺ってたんだろ?」
「『…さて、どうでしょう』」
奴の言葉はどこか薄っぺらく感じて余計腹に来る。この状況でヘラヘラしてるのが透けて見えるから尚更だ。恐らく奴は、勇者から逃れる為に自分達を利用しようとしていたのだろう。なんとも狡猾な奴だ。
「…対に、許さねえ」
「『ん?』」
皆を殺したのもそうだが、自分だけ助かろうとしていたこいつのやり方も気に入らない。こんな奴を許すわけにはいかない。
「絶対に許さねえぞ、エイシャ!!」
そう思った自分は、奴に啖呵を切った。
あまりの衝撃的な光景に、自分とミオは言葉を失い顔面蒼白。ほんの一瞬の出来事だった。前に走っていた馬車が黒い槍に貫かれ宙を舞い、宙で半回転した馬車から放り出される子供達はみな胸などをを一突きされ、身体中血まみれで、中には四肢の一部が吹き飛んでいたり、頭部まで貫かれている子も見えた。
そして、その中にはラエルの姿も当然あった。ラエルも胸を一突きされ、身体中血まみれで口から血を流していた。そんなラエルの目はかっぴらいたまま、こっちと視線が合った。瞳孔が開いたまま微動だにしない様子から見て、ラエルはもう息をしていない。放り出されて地面に叩きつけられた後も皆の呻く声が一つも聞こえてこない事から察するに、他の皆も声を出す間もなく即死している。
「ラ…エル…」
ラエルの表情を見て口からか細い声で言葉が漏れ出た。頭の情報処理が追い付かず不意に出た言葉。これ以上の言葉が出てこない。
「う…そ…」
ミオも恐る恐る言葉を出したが、口が上手く動かてせいない様子でその二文字を出すだけで精一杯のようだ。
「『本当ならもう少し様子を見るつもりでしたが、バレてしまっては仕方ありませんね』」
「ッ!?」
そんな二人の様子などお構いなく、馬車を貫いた黒い槍は引っ込んでいき、いつの間にか地面から影がフード姿をした人型の形に浮かび上がってきていた。
「はあ…はあ…、おまえ…」
そいつの姿を見た瞬間、自分の呼吸が荒くなる。悲しみ、怒り、憎しみで感情がぐちゃぐちゃになっていた。原因は言うまでもない。こいつのせいだ。
「『それにしても、随分とやってくれましたね貴方達。おかげで面倒事が増えてしまいましたよ。こんな大事な時に』」
「くっ!」
全てはこいつのせいだ。こいつが居なければ村も父もラエル達も死なずに済んだんだ。そう考えると、この感情は怒りの割合の方が勝ってきた気がする。呑気に話しかけてくるあいつに殺意まで覚える。
「『しかし、残念でしたね。貴方が私に気が付かなければ彼等も死ぬことはなかったでしょうに』」
「あ゛あ゛っ?!」
それを知ってか知らずか、奴は遠慮なく煽って来る。
「嘘吐くんじゃねえよ。最初《はな》から俺達を殺すタイミングを伺ってたんだろ?」
「『…さて、どうでしょう』」
奴の言葉はどこか薄っぺらく感じて余計腹に来る。この状況でヘラヘラしてるのが透けて見えるから尚更だ。恐らく奴は、勇者から逃れる為に自分達を利用しようとしていたのだろう。なんとも狡猾な奴だ。
「…対に、許さねえ」
「『ん?』」
皆を殺したのもそうだが、自分だけ助かろうとしていたこいつのやり方も気に入らない。こんな奴を許すわけにはいかない。
「絶対に許さねえぞ、エイシャ!!」
そう思った自分は、奴に啖呵を切った。
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