転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第3章 逆襲編

第3章ー⑥

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 それから三十分後、特になにも起こらず時が経った。

 「よし、そろそろ出発するぞー」

 ラエルの合図の元、魔道馬に乗る自分とミオ。他の子達も眠そうな表情で馬車に乗っていた。

 「んー、まだ眠い」

 「馬車の中でも寝れるから。もう少し我慢しろー」

 「んー」

 眠そうな子達にラエルは優しく言葉をかけながら馬車に誘導している。流石最年長。上手いこと子供達をスムーズに行動させているのを見て感心させられた。多分、自分じゃここまでスムーズに出来ない。これが兄貴肌というものなのだろうか?

 「皆ちゃんと乗ってるなー? 出発するぞー」

 「「はーい!」」

 皆が乗ったのを確認すると、ラエルは御者席に座り馬車を走らせた。それに自分もついていった。





 それから三十分程走り続けた。少ししか眠れていないが、思いの外目がさえてて眠気をほとんど感じない。やっぱ目の休養は大事だな。

 「ねえサダメ」

 「ん? どうした?」

 そんなことを思っていると、背後からミオが話しかけてきた。

 「魔物の人達全然来ないね?」

 「うん? ああ。そうだな」

 ミオの問いかけを聞いて、一度後ろを確認する。たしかにミオの言う通り、魔物の連中の姿が一向に見えない。まあ、馬と徒歩じゃ移動速度が段違いだ。魔法でひとっ飛び出来る奴が居ない限り追いつくのは不可能だろう。

 「魔法…か…」

 なぜかふと夢の記憶が蘇ってくる。そういえば、エイシャ《あいつ》はあの時一体何処で何をしていたのだろうかなんてことを疑問に感じていた。今思えば妙だ。タイミングを見計らったとはいえ、奴があの状況を全く気付かなかったのはおかしい。なにか大事な事を見落としている気がする。

 「…ダメ、大丈夫?」

 「っ!?」

 などと考え事をしていると、ミオが心配そうな表情でこっちを見ていた。危ない危ない。騎乗中かつ馬を走らせている最中によそ見してしまっていた。

 「ひょっとしてサダメもまだ眠い? あんまりよく眠れなかった? なんか悪い夢でも見た?」

 「い、いや、大丈夫。悪い夢は見たけどなんとも…」

 心配そうなミオをなんとか鎮めようとした最中、あの時の夢の記憶が再び蘇る。なぜこんなに夢の中の話を思い出しているのかは分からない。だが、そこでハッとさせられ前に居たラエル達の馬車の方を見る。いや、正確には馬車の影の方。









 すると、僅かだが馬車の影が妙な動きをしていた。

 「ッ!? ラエル!! その馬車から全員離れ…」

 それを見た瞬間、反射的に口が動いていて、ラエル達を馬車から離れさせようと指示を出そうとした。その矢先…

 「『【黒影《ダーシャ》多槍《・メニスピア》】』」

 馬車の影から無数の黒い槍が現れ、馬車を馬ごと串刺しにしていた。
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