54 / 189
第3章 逆襲編
第3章ー⑥
しおりを挟む
それから三十分後、特になにも起こらず時が経った。
「よし、そろそろ出発するぞー」
ラエルの合図の元、魔道馬に乗る自分とミオ。他の子達も眠そうな表情で馬車に乗っていた。
「んー、まだ眠い」
「馬車の中でも寝れるから。もう少し我慢しろー」
「んー」
眠そうな子達にラエルは優しく言葉をかけながら馬車に誘導している。流石最年長。上手いこと子供達をスムーズに行動させているのを見て感心させられた。多分、自分じゃここまでスムーズに出来ない。これが兄貴肌というものなのだろうか?
「皆ちゃんと乗ってるなー? 出発するぞー」
「「はーい!」」
皆が乗ったのを確認すると、ラエルは御者席に座り馬車を走らせた。それに自分もついていった。
それから三十分程走り続けた。少ししか眠れていないが、思いの外目がさえてて眠気をほとんど感じない。やっぱ目の休養は大事だな。
「ねえサダメ」
「ん? どうした?」
そんなことを思っていると、背後からミオが話しかけてきた。
「魔物の人達全然来ないね?」
「うん? ああ。そうだな」
ミオの問いかけを聞いて、一度後ろを確認する。たしかにミオの言う通り、魔物の連中の姿が一向に見えない。まあ、馬と徒歩じゃ移動速度が段違いだ。魔法でひとっ飛び出来る奴が居ない限り追いつくのは不可能だろう。
「魔法…か…」
なぜかふと夢の記憶が蘇ってくる。そういえば、エイシャ《あいつ》はあの時一体何処で何をしていたのだろうかなんてことを疑問に感じていた。今思えば妙だ。タイミングを見計らったとはいえ、奴があの状況を全く気付かなかったのはおかしい。なにか大事な事を見落としている気がする。
「…ダメ、大丈夫?」
「っ!?」
などと考え事をしていると、ミオが心配そうな表情でこっちを見ていた。危ない危ない。騎乗中かつ馬を走らせている最中によそ見してしまっていた。
「ひょっとしてサダメもまだ眠い? あんまりよく眠れなかった? なんか悪い夢でも見た?」
「い、いや、大丈夫。悪い夢は見たけどなんとも…」
心配そうなミオをなんとか鎮めようとした最中、あの時の夢の記憶が再び蘇る。なぜこんなに夢の中の話を思い出しているのかは分からない。だが、そこでハッとさせられ前に居たラエル達の馬車の方を見る。いや、正確には馬車の影の方。
すると、僅かだが馬車の影が妙な動きをしていた。
「ッ!? ラエル!! その馬車から全員離れ…」
それを見た瞬間、反射的に口が動いていて、ラエル達を馬車から離れさせようと指示を出そうとした。その矢先…
「『【黒影《ダーシャ》多槍《・メニスピア》】』」
馬車の影から無数の黒い槍が現れ、馬車を馬ごと串刺しにしていた。
「よし、そろそろ出発するぞー」
ラエルの合図の元、魔道馬に乗る自分とミオ。他の子達も眠そうな表情で馬車に乗っていた。
「んー、まだ眠い」
「馬車の中でも寝れるから。もう少し我慢しろー」
「んー」
眠そうな子達にラエルは優しく言葉をかけながら馬車に誘導している。流石最年長。上手いこと子供達をスムーズに行動させているのを見て感心させられた。多分、自分じゃここまでスムーズに出来ない。これが兄貴肌というものなのだろうか?
「皆ちゃんと乗ってるなー? 出発するぞー」
「「はーい!」」
皆が乗ったのを確認すると、ラエルは御者席に座り馬車を走らせた。それに自分もついていった。
それから三十分程走り続けた。少ししか眠れていないが、思いの外目がさえてて眠気をほとんど感じない。やっぱ目の休養は大事だな。
「ねえサダメ」
「ん? どうした?」
そんなことを思っていると、背後からミオが話しかけてきた。
「魔物の人達全然来ないね?」
「うん? ああ。そうだな」
ミオの問いかけを聞いて、一度後ろを確認する。たしかにミオの言う通り、魔物の連中の姿が一向に見えない。まあ、馬と徒歩じゃ移動速度が段違いだ。魔法でひとっ飛び出来る奴が居ない限り追いつくのは不可能だろう。
「魔法…か…」
なぜかふと夢の記憶が蘇ってくる。そういえば、エイシャ《あいつ》はあの時一体何処で何をしていたのだろうかなんてことを疑問に感じていた。今思えば妙だ。タイミングを見計らったとはいえ、奴があの状況を全く気付かなかったのはおかしい。なにか大事な事を見落としている気がする。
「…ダメ、大丈夫?」
「っ!?」
などと考え事をしていると、ミオが心配そうな表情でこっちを見ていた。危ない危ない。騎乗中かつ馬を走らせている最中によそ見してしまっていた。
「ひょっとしてサダメもまだ眠い? あんまりよく眠れなかった? なんか悪い夢でも見た?」
「い、いや、大丈夫。悪い夢は見たけどなんとも…」
心配そうなミオをなんとか鎮めようとした最中、あの時の夢の記憶が再び蘇る。なぜこんなに夢の中の話を思い出しているのかは分からない。だが、そこでハッとさせられ前に居たラエル達の馬車の方を見る。いや、正確には馬車の影の方。
すると、僅かだが馬車の影が妙な動きをしていた。
「ッ!? ラエル!! その馬車から全員離れ…」
それを見た瞬間、反射的に口が動いていて、ラエル達を馬車から離れさせようと指示を出そうとした。その矢先…
「『【黒影《ダーシャ》多槍《・メニスピア》】』」
馬車の影から無数の黒い槍が現れ、馬車を馬ごと串刺しにしていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。


集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる