雪に舞う桜吹雪

白凪雪緒

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1話 怠惰と始まり

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「かぁぁぁぁぁぁぁ…」
 あくび。
 怠惰な一日が今日も始まった。
 いつも通り一人で朝を迎える。
 モーニングルーティーンで、ある程度の水を電気ケトルに流し込む。
 その間に辛い歯磨き粉を歯ブラシに垂らし、歯を磨く。
 ミント系のツンとした匂いが鼻腔を刺激した。
 カチ、とケトルのお湯が湧き上がる。
 計三年前から使っているこのケトルは、いつも三分でお湯を沸かす。
 俺はインスタントカフェオレの封を切り、カップに注いで、お湯をかける。
 先程とは打って変わり、いい香りがふわっと広がった。
 これがないと一日が始まった気がしない、と思う。
 因みに未だにブラックコーヒーは飲めない。
 香りは好きなのだがあの苦さがどうも苦手だ。…まぁ我慢すれば飲めなくもないが、苦い思いをしてまですることではないだろう。
 リビングに備え付けてあるPCの電源をつけ、起動する。
 つい数ヶ月前に買い換えたそこそこ高いPCはすこぶる調子が良かった。
 俺の一日は毎日数百件の依頼にうんざりすることから始まる。
 俺は侍を生業としている。
 …侍とは?
 答えは単純。ただ依頼されたものを斬るだけ。
 古臭い言い回しをすれば萬屋というものだ。
 依頼はすくなくとも俺には数百件来る。
 それをいかにこなすかが俺の仕事だ。
 仕事と言ってもやるレベルがあり、庭の雑草を全て刈ってくれだとか、現役を引退した競馬用の馬を安楽死させてくれだとか、
 魚を捌けだとか肉を解体してくれだとか。
 中には殺害依頼も稀にくる。
 しかし、法律で侍の手続きなしの殺害は禁じられているため、俺ら侍に殺害依頼をする際は一つだけルールが存在する。
 それは、実行対象が殺害対象として一致した場合のみ認められるというものである。
 たとえば、家族もおらず、貯金も無く、生きる意味を失ってしまったご老人や、死刑判決が決定して尚逃亡した犯罪者。
 裁判の余地なく死刑が確定している極悪人など。
 つまり安楽死のひとつとしてか、悪の抹消かだけだ。
 ちなみに後者は十中八九裁判所や警察などのお国からの依頼だ。
 だからある種侍は正義の象徴として語れることが多い。(まぁ実の所そんな大層なものではないが。)子供を躾ける常套句として「悪さをするとお侍さんに斬られる」という言葉があるほどだ。
 俺が友人に頼んで作って貰ったホームページの専用フォームの複数人に、きょうお伺いしますよ的なことをひょいひょいと書いていく。
 そして難易度の低いものから切っていくということだ。
 少し冷めたカフェオレを煽る様に飲み干し、
 侍協会の紋をあしらった羽織を着る。
 ドタバタと身支度を終わらせ、深呼吸する。俺は畳の部屋に置かれた仏像に手を合わせ、「行ってきます」と言う。
 そうして俺は刀を手に、今日も青空へとかけてゆくのだ。
 
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