3 / 11
2話 仕事
しおりを挟む
「あ゛ぁ゛…疲れた」
今日は百件程の依頼をこなした。
案外楽な案件の物や、依頼場所が転々と近かったためだろう。
お国のお偉い様達が依頼なんてしてきた日は、その指名手配書と睨めっこしながら日本中を行き来する事になるのだ。疲れたには疲れたが、少なくとも今は楽な方だと思える。
それでもきついものはきついが。
元来俺は運動が得意な方でも、努力するのが得意な方でもないんだ。こんな仕事放っておいてゲームでもしていたいと願わなかった日は…ないわけではないが、かと言って毎日思ってる訳でも無い。
そりゃあ奉仕活動のような事をしているんだ。感謝をされないわけが無い。だからこの仕事はしんどくても憎めないのだ。人に感謝されるのは何にも変え難い幸福があるから。
俺は仕事終わりのコンビニで買ったインスタント食を電子レンジに放り込む。
ろくに家事をせずに怠けてしまうのは俺の悪い癖だ。
毎日コンビニ食だとカロリーと食費が馬鹿にならないのはわかっているが、強制的に街を走り回って多めに依頼料を貰っているので、残念な事にこれを辞める口実が生まれない。もう少し俺がしっかり者だったらこんな事は起こらないんだろうけど。
因みに自分で言うのもなんだが俺は割と料理は出来る方だ。まぁ出来ると言ってもレシピ見れば普通に作れる程度なので、特筆して得意料理も苦手な料理も無い。強いて言えば辛い料理は作るのも食うのも嫌いだ。あんなものを好んで食う奴はイカれてるとまで思っている。
なんてことを考えているうちに電子レンジが長年聞いた電子音で調理を終了する。職業柄腕を酷使する俺は、空腹と疲労と筋肉痛にサンドウィッチされながら、もそもそとカロリーモンスターの弁当を食う。
ふと食べる手を止め、無意識に付けていたテレビから「彼」の話題が出てきた。
『えー、今や侍会のトップとなった焔宗太郎さん、依頼件数は毎日数百から数千と言われていますが、そんな突拍子もない数字を一日でこなしてしまう秘訣をぜひお聞かせ願います![#「!」は縦中横]』
テレビの奥で興奮冷めやらぬ様子で司会者が焔と呼ばれた男に質問を繰り出す。
派手な赤色の髪をして、いい加減に侍協会の羽織を着ている男が笑顔で受け答えする。
『えー、そうですね。まず、なんといってもじt----』
ブツッ。
俺は反射に近い動きでテレビを切った。
焔宗太郎。
侍協会のトップに君臨する絶対者で、類稀な剣術の才能を持つ男だ。
なにせS級なんだから。
S級とは、侍協会に登録している侍が付けられるランクで、そのランクによって受けていい依頼が異なってくる。
階級はC B A Sの4種存在し、A以上は殺生を許される。たったそれだけだ。
因みに階級がSに近ければ近いほど依頼料は高くなり、Cに近ければ近いほどなめて掛かられる。実に合理的な格差社会だ。
ちなみに俺の階級はA。はっきり言って強い方でもない。そんなやつだ。
テレビの電源を切ったことで部屋が無音空間と化す。
今度はスマホから適当なAMラジオを、逃げるように再生し始める。
スマホはたちまち町でよく聞くお涙頂戴な失恋ソングを流し始めた。電波に乗った最近有名な歌手が、失恋したから病んだというワンフレーズで済むようなどうだっていい事を述べ始める。…何がいいんだ。こんなもの。
これ以上チャンネルを変える気も起こらず、俺はただカロリーモンスターを貪ってその曲が終わることを祈った。
今日は百件程の依頼をこなした。
案外楽な案件の物や、依頼場所が転々と近かったためだろう。
お国のお偉い様達が依頼なんてしてきた日は、その指名手配書と睨めっこしながら日本中を行き来する事になるのだ。疲れたには疲れたが、少なくとも今は楽な方だと思える。
それでもきついものはきついが。
元来俺は運動が得意な方でも、努力するのが得意な方でもないんだ。こんな仕事放っておいてゲームでもしていたいと願わなかった日は…ないわけではないが、かと言って毎日思ってる訳でも無い。
そりゃあ奉仕活動のような事をしているんだ。感謝をされないわけが無い。だからこの仕事はしんどくても憎めないのだ。人に感謝されるのは何にも変え難い幸福があるから。
俺は仕事終わりのコンビニで買ったインスタント食を電子レンジに放り込む。
ろくに家事をせずに怠けてしまうのは俺の悪い癖だ。
毎日コンビニ食だとカロリーと食費が馬鹿にならないのはわかっているが、強制的に街を走り回って多めに依頼料を貰っているので、残念な事にこれを辞める口実が生まれない。もう少し俺がしっかり者だったらこんな事は起こらないんだろうけど。
因みに自分で言うのもなんだが俺は割と料理は出来る方だ。まぁ出来ると言ってもレシピ見れば普通に作れる程度なので、特筆して得意料理も苦手な料理も無い。強いて言えば辛い料理は作るのも食うのも嫌いだ。あんなものを好んで食う奴はイカれてるとまで思っている。
なんてことを考えているうちに電子レンジが長年聞いた電子音で調理を終了する。職業柄腕を酷使する俺は、空腹と疲労と筋肉痛にサンドウィッチされながら、もそもそとカロリーモンスターの弁当を食う。
ふと食べる手を止め、無意識に付けていたテレビから「彼」の話題が出てきた。
『えー、今や侍会のトップとなった焔宗太郎さん、依頼件数は毎日数百から数千と言われていますが、そんな突拍子もない数字を一日でこなしてしまう秘訣をぜひお聞かせ願います![#「!」は縦中横]』
テレビの奥で興奮冷めやらぬ様子で司会者が焔と呼ばれた男に質問を繰り出す。
派手な赤色の髪をして、いい加減に侍協会の羽織を着ている男が笑顔で受け答えする。
『えー、そうですね。まず、なんといってもじt----』
ブツッ。
俺は反射に近い動きでテレビを切った。
焔宗太郎。
侍協会のトップに君臨する絶対者で、類稀な剣術の才能を持つ男だ。
なにせS級なんだから。
S級とは、侍協会に登録している侍が付けられるランクで、そのランクによって受けていい依頼が異なってくる。
階級はC B A Sの4種存在し、A以上は殺生を許される。たったそれだけだ。
因みに階級がSに近ければ近いほど依頼料は高くなり、Cに近ければ近いほどなめて掛かられる。実に合理的な格差社会だ。
ちなみに俺の階級はA。はっきり言って強い方でもない。そんなやつだ。
テレビの電源を切ったことで部屋が無音空間と化す。
今度はスマホから適当なAMラジオを、逃げるように再生し始める。
スマホはたちまち町でよく聞くお涙頂戴な失恋ソングを流し始めた。電波に乗った最近有名な歌手が、失恋したから病んだというワンフレーズで済むようなどうだっていい事を述べ始める。…何がいいんだ。こんなもの。
これ以上チャンネルを変える気も起こらず、俺はただカロリーモンスターを貪ってその曲が終わることを祈った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】王太子妃の初恋
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
カテリーナは王太子妃。しかし、政略のための結婚でアレクサンドル王太子からは嫌われている。
王太子が側妃を娶ったため、カテリーナはお役御免とばかりに王宮の外れにある森の中の宮殿に追いやられてしまう。
しかし、カテリーナはちょうど良かったと思っていた。婚約者時代からの激務で目が悪くなっていて、これ以上は公務も社交も難しいと考えていたからだ。
そんなカテリーナが湖畔で一人の男に出会い、恋をするまでとその後。
★ざまぁはありません。
全話予約投稿済。
携帯投稿のため誤字脱字多くて申し訳ありません。
報告ありがとうございます。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
異世界の剣聖女子
みくもっち
ファンタジー
(時代劇マニアということを除き)ごく普通の女子高生、羽鳴由佳は登校中、異世界に飛ばされる。
その世界に飛ばされた人間【願望者】は、現実世界での願望どうりの姿や能力を発揮させることができた。
ただし万能というわけではない。
心の奥で『こんなことあるわけない』という想いの力も同時に働くために、無限や無敵、不死身といったスキルは発動できない。
また、力を使いこなすにはその世界の住人に広く【認識】される必要がある。
異世界で他の【願望者】や魔物との戦いに巻き込まれながら由佳は剣をふるう。
時代劇の見よう見まね技と認識の力を駆使して。
バトル多め。ギャグあり、シリアスあり、パロディーもりだくさん。
テンポの早い、非テンプレ異世界ファンタジー!
*素敵な表紙イラストは、朱シオさんからです。@akasiosio
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
たすくもん~千と律、悪夢の館
流城承太郎
ファンタジー
「どこだ、ここは」
同心、飯岡黒羽左衛門(くろうざえもん)は目を剥いた。
一日の仕事を終え、組屋敷の自宅に戻って刀を置き、さて一風呂浴びようかと思い、廊下に出た……。
人外に愛される隠れ剣豪、飯岡黒羽左衛門の往きて帰りし異世界冒険譚。
全4話短編完結済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる