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情報屋・ブリリアント マル秘情報集めます

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見られるのが恥ずかしい。だから日中は傷跡が見られないように隠そうと努力する。

しかし風呂場ではそう言う訳にもいかない。

人がなるべく来ない時間帯を見計らって急いで入る。急いで失敗することもある。

上がる瞬間に入って来て運悪く見られて苦笑い。

あっちは気にしてないけどこっちは気になる。気になって気になって仕方がない。

結局最後に入ることになる。

ハッピー先生に相談しても気にし過ぎ。大丈夫心配しないでと返されてしまう。

ちっとも大丈夫じゃないよ僕。嫌で嫌で仕方がない。

こっちを見ないでと言えない。

それにしても大河って人がやってきてから何か変なんだよね。

皆そわそわして落ち着かない様子。

特にドルチェさんが警戒してる。何でだろう?


別に見られたって…… 人の視線など気にしない。ましてや女の子同士…… 

でもやっぱりダメ! 

もしかしたら女同士の方が嫌かも。

男の人はここに目も行かないし多少は恥ずかしがって伏せるか違う箇所を凝視する。

だから僕からしてみれば…… ううん。そんな訳ないか……

シャワーを浴び体をきれいにすると湯船に浸り最後に再びシャワーを浴びる。

そして脱衣所へ。

その時間僅か五分。

これなら他の人に見られる可能性が低い。

これが僕のルーティン。

さあ戻ろう。


マウントシーの別館では今宵も例の儀式が厳粛に執り行われていた。

一人が三人の少女を相手に時に厳かに時に激しく時に狂ったように。

ちょうどその頃大河の部屋を訪れる者が。

「大河さん本当に有難うございました」

ブリリアントだ。

「ブリリアントか。どうやら落ち着いたようだね。

心配してたんだなどと言っても信じてはくれないんだろうな」

まずはここから。ブリリアントを味方に付けたのは大きい。

大きな声では言えないがアリアの奴は全く信用が置けない。

いい子だと思えなくもないがあの性格では対立するばかり。

困りましたねアリア先輩。

何となく言動が気に食わないだけでなく嘘をついてる気がする。

アリアの真偽不明の情報に踊らされるよりはブリリアントの力を借りる方がいい。


「そんなこと…… 」

「射撃でも一発も当たらなかったし元気もないみたいだったから」

「大河さん私を見てくれていたんですね。嬉しい」

「いやいや射撃だって俺の目の前で行われたのだから知ってて当然さ。

誰であれ当たり外れは気になるもの。俺よりも上の奴がいないか冷や冷やしてた」

「いえ射撃は元々苦手でしたから…… 」

「訓練すればうまくなるよ」

「あれ…… 大河さんは本土の人ですよね? 銃なんて撃つ機会あるんですか? 」

「それは…… 」

口ごもるしかない。俺が銃マニアだなんて言ったら怖がられる。


「銃はサバイバルゲームしかやったことがないよ。射的なら誰にも負けない」

「そうですよね。ハッピー先生にも無闇に撃ってはダメだと言われてましたから。

そうだ。確かハッピー先生の幼馴染に凄いガンマンが居たとか……

何でもこの島を作った英雄だと言ってましたよ」

さっそくブリリアントからマル秘情報を得る。


「射撃って言えば何でシンディーは棄権したのかな? 得意そうに見えたんだがな」

「それは…… 私の口からは言えません。申し訳ありません。

それに自分のことで精一杯で他の子まで気にしてる余裕ありませんでしたから」

「本当に? まあいいや。話は変わるがもう儀式に参加しないんだね」

「はいもう大丈夫です。でもそうするとここに居る意味がないと言いますか……

どう思いますか大河さん? ハッピー先生にも相談しようと思うんですけど。

もちろん祭りにはきちんと参加しますし誰にも迷惑はかけないつもりです。ハイ」

贅沢な悩みのブリリアント。もう俺の助けも必要ないと言うことか。


「そうか分かった。その笑顔がいい証拠だ」

彼女の表情を観察する。

「それでは改めて。俺の協力者になってくれないか」

「協力者ですか…… 」

「嫌か? 無理にとは言わん」

「いえ協力させてください。それで私は何をすればいいんですか? 」

「他の子たちの情報を集めて欲しいんだ。できるだけたくさん」

「まさか大河さん。私を棄てる気では…… それで他の女に行くんだ」

いつの間に付き合っていたことになったのだろう。妙に生々しいが。

「そんなの私許しませんよ! 」

「そうじゃない。どうしても集めなければいけない。それも祭りが始まる前に」

何とかブリリアントを説得する。


「分かりました」

大声で元気よく返答する純粋なブリリアント。

「ではその証としてこのカチューシャを受け取ってくれ」

自身に与えられるはずだった黄色のカチューシャを取り出す。

これは女性限定なので自分には不要。

ハッピー先生は似合うと思いますよと無責任に勧めるが。

だがいくらなんでも俺には似合わない。

ワイルド過ぎる俺には不要なもの。

そう言う事情があり今まで放置していたが意外にも使い道があった。


カチューシャ外しながら……

今彼女が身に着けている青のカチューシャと取り換える。

「証ですね」

頬を染めて嬉しそうに出て行くブリリアントであった。


ブリリアント…… 済まない……

やはり馬鹿な子ほどかわいいと言うことか?

               続く
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