永遠のトナラー 消えた彼女の行方と疑惑の隣人

二廻歩

文字の大きさ
33 / 59

アトリ計画の詳細

しおりを挟む
落とし主が現れた。何と例の男だった。
男は素直に要請に応じる。

「あんたのところの会社は危険な団体なのかい? 」
同僚は疑惑の目を向ける。
「まさか中身を見たんですか? ただのよくある会社かと。ははは…… 」
笑ってごまかすが同僚の追及は続く。
「では一度確認の意味でも会社に連絡を取りますがよろしいですね? 」
「はあどうして? 」
納得行ってない様子。あからさまに嫌な顔をする。

「あなたが失くしたと主張するにはこの資料が貴社のものだと。
そして自身が社員であることを証明する必要があります。
ライバル会社やスパイの恐れもありますから」
会社の極秘資料であるなら会社の所有物。
男と会社の関係が証明されないまま渡しては大問題になる恐れも。
一警官の失態として騒がれるだけでなく警察全体の信用失墜行為。
だからこそ慎重にならざるを得ない。

「申し遅れました。私こう言う者です」
そうやって名刺を渡す。
「だからその名刺が本当か確かめる必要があるんだって。
それで疑いが晴れれば返すと言ってるんです」
「待ってください! 失態がばれたらクビになる。それだけは何としても避けたい」
「そう言われましても…… こちらとしてはどうすることも出来ません」
非情な同僚。ここまで追い詰める必要はない。

「お願いだ! 助けてくれよ! 」
泣きつかれてしまった。
「分かりました。では別件でお呼びしてはいかがですか? 」
さすがにかわいそうになったので割り込み提案する。
「別件? 」
「失踪事件で協力をと言う形でお呼びいただければよろしいかと」
「はあ…… 何とかしてみます」
納得してくれたようだ。

「アトリ計画だけでも教えてくれませんかね? 興味があるんですよ」
同僚の追及はまだ終わらない。
資料によく出てくる単語。どうしても我々は知っておく必要がある。
「ああそれでしたら新商品のことで今年中には発表できるはず。
画期的な商品らしくて実は俺も社内モニターに選ばれたんです。
だからこれだけの極秘資料を手元に…… 」
隠す素振りも見せずに受け答えしている。これはやはりただの内部資料。
同僚が危惧していた怪しい団体による終末作戦ではなさそうだ。

「分かりました。今日のところはお引き取り下さい。
明日にでも会社の方と証言の裏が取れ次第お返ししますので」
「ありがとうございます! 」
男は感謝の言葉を述べ行ってしまった。

職務上知り得たことをベラベラ話すことはない。
それは警察官として当然のことだがついうっかり漏れることだってある。
今回のように一見危なそうな落としものは酒のつまみになりやすい。
もちろん私は酔うこともないし誰にも話す気はない。
同僚はどうかと言うと面白がって飲み屋で言い触らしそう。
それが回り回って男の知ることになれば言い訳も出来ない。
だから同僚にはきつく言い触らさないように念を押すがこればっかりはどうにも。

「ははは…… そんなことするものか」
「でも前科があるでしょう? 」
「旦那が浮気した件だろ? あれは俺が言い触らさなくても皆知ってたよ。
だから少し場を盛り上げるために分からないように脚色してだな…… 」
そう彼も理性がある。だから知り得たことをそのまま言い触らすことはない。
今回だって怪しげな会社の間抜けな社員の落としものとでも言うのだろう。
そうやって関心を得ようとするに違いない。まったく困った人だ。

「それでどうします? 」
「個人的には興味はある。協力してやれよ」
「いい加減ですね。ただの失踪事件ですよ」
まだ今のところ見つかってない。
彼が言うように隣人が監禁してるとしたら一刻も早く助け出さなければならない。
「どうかな? 大事件に発展するかもよ」
笑ってからかってる同僚。
確かにここは都会ではないから大きな事件はない。
今日だって落としものや道案内ぐらいで平和だもんな。
たまには刺激が欲しくなることもある。
どこかで大事件でも発生してくれないかなと思ったこともある。
でもやはり平和が一番。
警察官たる者いたずらに刺激を求めてはいけない。
それくらい分かってるのだが悲しいかこれも人間の性。

                続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

冷たい王妃の生活

柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。 三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。 王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。 孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。 「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。 自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。 やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。 嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...