なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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最悪のシナリオ

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最悪のシナリオが浮かぶ。
まさかあり得ないこと。でもそれが起こるのがボノでありセピユロスでもある。
ついでに国王様でもある。
ハンティングで国王様を。そして爵位を剥奪。お家没落。
この最悪なシナリオだけは避けなければなりません。

明日来る予定の国王様。予定を早める何かが起きなければいいのですが。
ブクブクに太った国王様はのんびりしたお方です。
ただそのお付きの者はせっかち。いつお越しになられるか分からない。
まさか山をのんびり散策などしないでしょうが。
それでも夫婦揃って出迎えなければ恥ずかしい思いするのは私。恥を忍べと言うの?

「ヴィーナ。その子をこちらに」
脱走猫チャウチャウを受け取る。
「さあ急いで歓迎の準備に取り掛かりますよ」
日暮れまで休憩なしで体を動かすことに。
こんな時ばかりはメイドも主人もない。
国王様の為に皆懸命に準備に取り掛かる。

夕方。
どうにか間に合いそうだ。今日中に何とか。
「ご主人様これはどうしましょう? 」
「それはメイド頭に確認して。ちょっと誰かこれをお願い」
「ああご主人様。私が運びます」
「慎重に」
「お任せください」

ふうう……
ヴィーナがため息を吐く。これで何度目?
「どうしたのヴィーナ。浮かない顔をして? 」
未だに帰らずにいるセピユロスたちを心配してのことだと分かるが表情が冴えない。
それにさっきからため息ばかりついてる。何かあった? 
「実は喧嘩して…… それで彼ったら思いつめた顔していたから…… どうしよう」
そう言うと俯いて涙を流す。
いつになく素直なヴィーナ。いつもこれくらい素直だといいんですが。
また喧嘩? いくら何でも多すぎる。相性が悪いのは決定的。

「ほら泣かないでヴィーナ。原因は何? 」
つい余計なことをしようとする。
本来二人は別れた方が幸せ。未だにどちらも決心がつかないのでしょう。
セピユロスだってとっくに気持ちが離れているはずなのにまだ切り出していない。
彼の優しさでしょうけど。もっと早くヴィーナを解放してあげたらいいのに。
その優しさがヴィーナを苦しめているのが分からないのでしょうか?
私との関係とは別に二人は早く別れるべきなのです。
「それがセピユロスが浮気してるって噂が」
「ええっ? 何です? 」

寝耳に水どころか思い当たる節がある。
その浮気相手こそがこの私なのだから。いえ正確にはまだ浮気はしてませんが……
もちろん正直に名乗り出たりはしない。
それは私たちの為である。ヴィーナの為でありボノの為でもある。
認めたら最後。関係が破綻してしまう。
今はまだ二人の関係を告白できない。
まずはヴィーナとセピユロスが完全に切れること。
その上でどうにか幸せになれたら。

「浮気してるって言うの…… 」
「セピユロスさんが? 」
さも驚いたかのような表情を作る。
演技するのも楽じゃない。
「分からない。でも噂になってるのは事実」
これは一体? カマをかける気? 
「大丈夫ですよ。セピユロスさんがそのような方に見えますか? 」

見えるも何も実際密会してる事実がある。
ヴィーナを忘れた訳ではないですが逢瀬を重ねるごとについ歯止めが利かなくなる。
このままではまずいと何度も思った。引き返そうと。でもそのたびに疑問がよぎる。
ヴィーナはもちろん彼にとって本当に理想の相手なのか?
だからもし今回のように唐突にセピユロスについて相談されたら心が酷く痛む。
ただ喧嘩しただけならいくらでも聞いてあげられるのに。
前回はお姉様もいたので冷静でいられた。でも今回はどうでしょう?
それに私はずるいですから相談に乗る振りをして自分の都合のいい方向に誘導する。
ヴィーナが苦しんでるのに。罪悪感で張り裂けそうになる。

「セピユロスは最近特に変。呼びかけても上の空で聞いてる振り。
でもきっと理解してない。何を怒ってるのかさえ分かってくれない」
我がままにも聞こえるしただの被害妄想とも取れる。
でもその原因が私だとするとどう言い訳していいのか。もう顔を見てられない。
アドバイスをすればいいの? ただ黙っていればいいの?
まさか気付いてる? 謝れと? 白状しろと?
どれ? どれが正しいの? 
もう頭が痛くなってくる。ああどうしましょう?
傷つけずに悟られずに別れさせる方法。
もうこうなってはのんびりなどしていられない。
行動開始!

                   続く
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