なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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ご主人様禁止

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副村長のところでお世話になっていたらしい。
「これですか? 」
確認を取るがさあとはっきりしない。
イビキを掻き大の字に眠るただの親父猫。
本当に猫かと疑いたくなる。
「ほらチャウチャウ。行きますよ」
寝ぼけたチャウチャウを抱いて連れて帰るはずが……

「どうかしました騒がしいようですが? 」
異変に駆け付けたセピユロスの両親。
「あらディーテさん。どうしたんです? 」
まずい気付かれては厄介。
「いえご心配なく。それではごきげんよう」
セピユロスの両親にはただの娘ディーテとして接した。
今更この屋敷の主人と言っても遅い。
セピユロスの婚約者としての振る舞いが無駄になってしまう。
せっかく挨拶を済ませたのだからこのままの関係で。
「ディーテさん。またお越しください」
「ああお義母様。お気遣いなく」
気付かれる前にどうにか逃げ切った。

さあこのぽっちゃり親父猫を連れ帰らなければ。
「ご主人様。私が代わりに」
「静かに。ここではご主人様は禁止。いいですね? 」
「はあ…… ではチャウチャウを」
騒ぎを聞きつけたメイドに後のことを任せて部屋へ戻る。

真夜中の冒険が終わりを迎えた。
こんなドキドキ体験も久しぶり。うん悪くない。
でもトラブルはもうこりごり。
明日からはもう少し静かに過ごしたい。
どうかこの願いが届きますように。

「あらセピユロスさんは? 」
猫の捜索を手伝ってもらってる内にはぐれてしまった。
「それでしたらもうおやすみになられています」
「そう…… 」
急な騒ぎに巻き込まれてセピユロスとの甘い時間が取れなかった。
もう少しだけでも一緒にいられたら良かったんですけどね。
残念。まあ明日でいいでしょう。

「ほらチャウチャウ起きなさい! 」
メイドがいくら揺らしても起きない。
「申し訳ありませんご主人様」
「いいの。それよりもこの子の体調はどう? 」
「問題ないかと。ただ詳しくは明日一番獣医に見せなくては詳しいことは」
チャウチャウの健康チェック。
まずはそこから始めることになる。
「ではおやすみなさいませ」
チャウチャウ捜索で時間が経過したがまだ深夜一時を回ったところ。
睡眠不足になる前に寝るとしましょう。
ついに明後日国王がお見えになる。
失礼のないように気を着けなければ。
ああそれから……

翌日。
今日は朝から大忙し。
日課の礼拝を済ませると朝食もそこそこに歓迎の準備に取り掛かる。
本来一日や二日でどうにかなるものではない。
運よく国王様はあまり細かいことを気にするタイプではない。
のほほんとした余裕の国王様。
「大変です。チャウチャウが居ません」
少し目を離した隙に逃亡したとのこと。
せっかく昨日連れ戻したと言うのに。
本当に自由な子。
「ご主人様。見つかりましたよ」
チャウチャウは大人しくしていない。
メイドも手を焼いている。

「ほらチャウチャウ」
ヴィーナに抱かれ気持ちよさそう。
まったく本当に人騒がせな猫。
忙しいと言うのに余計な手間を取られてばかり。
「あらセピユロスさんは? いつもでしたら姿をお見せになるのに」
「申し訳ございません。旦那様と山の方へ」
「またですか? 」
呑気なセピユロス。ボノもいい加減にして。セピユロスを連れ回すんだから。
お客様のセピユロスはともかくボノは分かっているはずでしょう。
それなのに二人で呑気に山へ。
断われないセピユロスを強引に誘ったに違いない。
「ちょっと待って。山ってまさか? 」
いつもなら湖か海に釣りに出かけるがもしやハンティング?
とんでもない。国王様に当たりでもしたらどうするの?
いや一発でもかすめたら謀反の疑いを掛けられる。
そうなれば当然爵位も失い家は没落。それだけでは済まず打ち首?
命がけで先々代から守って来た土地を明け渡すことになる。
そうなったらどうでしょう?
ここよりももっと貧しいところで寂しく暮らす。
そうなれば薄情なボノは良い機会だと離婚を迫るだろう。
もちろんヴィーナも無関心。異国の地へ逆戻り。二度と帰ってこない。
セピユロスだって惹きつけられないかもしれない。
最悪のシナリオが頭に浮かぶ。

              続く                 
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