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教育

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「どうしましたディーテ。言葉もありませんか」
「ふふふ…… ダメよセピユロス。あなたには教育が必要みたいね。
ほら少し早いでしょうけど言ってごらんなさい。
お義母様と呼ぶのです。もう名前は許しませんよ」
本当はフランクな感じが良かった。名前で呼んでくれるセピユロスに好感が持てた。でも違った。それは彼を助長させるだけだった。彼ももちろんヴィーナもまだ幼い。私が教育してあげなくてはいけない。
ヴィーナに関して言えば再教育かしら。
ほらお義母様に従うのです。
「ディーテ。自分にはどうしても無理なんだ」
酷く落ち込んだセピユロスになぜか心が動かされそうになる。
「ですからお義母様と」
寂しそうにするセピユロスを見ると堪らなくなる。
彼はただ受け入れてもらいたいだけなのだろう。
「分かりました。もう好きに呼びなさい。ただしこれ以上は私を困らせないで。
ヴィーナを悲しませないで」
セピユロスは非礼を詫びて去って行く。
その後ろ姿は敗走する兵士のようで切なくなる。

一人に。
セピユロスのことがどうしても頭から離れなくなる。
ヴィーナも変わった恋人を選んだわね。
どこがいいの? あの男の何がいいの?
別れたほうが良い。セピユロスではヴィーナを幸せにできない。
残念だけどそう進言するのが人生の先輩である私の役目。
ヴィーナに話す前にボノとも相談する必要がある。

翌朝。
「ちょっとボノ。お話があるのだけど」
「済まない。今セピユロス君と出かけるところなんだ。後にしてくれないか」
まあ急ぐ必要もない。ただ話はそこの彼についてですけどね。
焦らなくてもいいが早く伝えなくてはいけない。
少なくても二、三日中にはヴィーナの耳に入れる必要がある。
でもどう説明したらいいか。ただダメと言っても賛同どころか逆に返されてお終い。
言い逃れのできないぐらいの証拠を掴むしかない。
彼の正体を暴くにはもう少し近づく必要がある。

取り敢えずメイドに話を聞く。
「セピユロス様ですか。はい実に立派な方でそれに優しいんですよ。
上の方になると椅子を使っても届かなくてそんな時自然と抱き上げてくれたんです。少しドキドキしてしまいました」
何だやっぱりボノと同じ。ヴィーナを裏切る気満々。
困った人。
「それで迫ったりはしなかったの? 」
「はい? どう言うことでしょう? 」
まったくこの女尻軽なんだから。
「ほらボノみたいに口説いたりしてないかと」
焦るメイド。
「セピユロス様は違います。ただ優しい紳士的なお方です。旦那様のように…… 
済みません。ついつい」
口が滑ったらしい。ボノはやっぱりこの女にも手を出していたのね。
これは配置転換しなくてはいけません。
「もういいわ。メイド頭を呼んできなさい」
こうして口を滑らせたメイドはお庭係に回される。
もうボノの女癖の悪さは気にしてない。
でも放っておけば他のメイドたちに示しがつかない。
残念だけど発覚したら切るしかない。
この屋敷の主人として当然。
少々意地悪だったかしら。

「ちょっと」
この件が広まってしまいセピユロスに関する話は聞けずじまい。
ただセピユロスがメイドに手を出してることはなさそうだ。
「誰か! 誰かいませんか! 」
「どうなさいましたご主人様」
「この手紙をセピユロスさんのご実家に」

今彼は都会で一人暮らし。
家を出て傲慢さが見受けられるのではないか。
とにかく文句の一つでも書き連ねる。
そうしなければ落ち着かない。
もしこれでヴィーナとの関係に亀裂が入っても致し方ない。
彼には真剣さが足りない。
恋愛はお遊びでも駆け引きでもない。
ただ誠実にただ思いやる心を持つ。
それが大事。でも彼は失っている。
私が気付かせる。そして彼を更生させる。
決して悪い人ではない。でも自分を過信してる。
ヴィ―ナと添い遂げると言う覚悟が足りない。
これではボノの二の舞。
ヴィーナが不幸になってしまう。

手紙は三日もあれば届くでしょう。
先方次第では私が出向くことも厭わない。
これはもう仕方ないこと。
セピユロスを真面目ないい夫にしたい。
そうしなければならない義務が私にはある。

                  続く
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