なぜお義母様と呼ばないのです

二廻歩

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告白

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セピユロスさんの急な訪問。どうも様子がおかしい。
「ヴィーナは我がままで気分屋ですぐに不機嫌になるんです」
いきなり愚痴を言い始めた。関係を分かっているの?
仮にも私はそのヴィーナの母。あなたにとっても義理の母になるのよ。
そこは理解してるでしょう?
「どうしたのセピユロスさん。あなたはそのような人間ではないはず」
生意気で横柄な態度を取る若者を諭す。
「ではどのような人間だと? 」
化けの皮が剥がれたか。あの優しく誠実なセピユロスがまさかまさか。
ヴィーナを任せられない。こんな二面性を持つ男にヴィーナを渡す訳にはいかない。
ごめんなさいねヴィーナ。あなたは苦しむでしょうが別れるのがいい。
セピユロスは曲者だった。

「あなたは優しく立派な方」
「お褒めに預かり光栄です。しかしこのセピユロス決してあなた様を傷つけるつもりはありません。どうかそれだけは分かって頂きたい」
訳の分からない御託を並べる。
どうしてしまったのだろう。ヴィーナの面倒で疲れてしまったのかしら。
我がままに育ててしまったから。
ボノが余計なことに誘うから彼がおかしくなった? 悪い影響を受け始めている。

「あなたはなぜ呼ばれたかお分かり? 」
「それでしたら承知しております。ヴィーナの代わりにお叱りを受け彼女に伝える。
と言ったところでしょうか」
「そうです。ですからもう用が済んだのはご理解できると思いますが」
「ヴィーナの機嫌が直り全てが丸く収まった。その為もうよろしいと」
聞き分けは良い。だから余計にもったいない。
「はい。ではお戻りください。手間を取らせたことはお詫び申し上げます」
「休めと? 」
「はい。お休みください」
ようやく理解してくれたようだ。今夜のことは無かったことにしよう。
ただ悪ふざけがしたかったのでしょう。ここでは私以外頼れないものね。
ヴィーナも癒せないしボノでは役不足。必然的に私か。

用済みなのでもう相手にはしない。
セピユロスに背を向ける。

「ディーテ! 」
まるで恋人を呼ぶように叫び情熱的に闊歩する。
「ちょっと何をおふざけになってるんですか? 」
まだ物足りないの。嘘でしょう? 私は満足ですよ。
情熱的に叫ぶと今度は抱擁を求める。
もう訳が分からない。この人は何を考えてるのかしら。
「ちょっとセピユロスさん」
怒鳴りつけるが効果は無し。
中途半端に叱りつけたのが逆効果に。

「ディーテ。我が愛しのディーテ」
もはや酔っぱらい。
羽目を外し過ぎだ。
「もうボノに唆されたのね。変な遊びを覚えてはダメよ」
「ディーテ。おおディーテ」
情熱的なのは構わない。でも相手が違うでしょう?
ヴィーナが悲しむ。ボノだって。
「冗談はおやめください」
セピユロスを突き飛ばす。
彼は倒れることなく踏みとどまる。

「ディーテ。おう麗しのディーテ」
もうダメ。からかうのもいい加減にして。
誰が私を求めるものですか。
メイドからは恐れられボノからは相手にされず。
ただお茶会できれいだの若いだの素敵だの。
誰が信じると言うのです? 
もうやめて欲しいの。からかうのはもう耐えられない。
お世辞を言ってくれるのも嬉しいけど正直に私を見て欲しい。
ヴィーナの、恋人の母なのよ。
ふざけるにも限度があるでしょう。
限度を守らず貶めてどうしようと言うの?
自分に自信なんかない。
彼にきれいだと思われることなどあるはずがない。

「止めて。これ以上私を惨めにしないで」
ついに言ってしまった。
彼だって悪気があってやってる訳じゃないのに大人げないのは分かってる。
でもどうしても許せない。
ヴィーナも私もボノさえも裏切ったことになる。
これ以上は止して欲しい。

「ディーテ私ではダメですか? 」
ついに明らかな愛の告白を始める。
「私はあなたに初めて会った時に一目で心を奪われたのです」
何の恥ずかしがりもせずにただ真っ直ぐ見つめるセピユロス。
どんな女性にも言っている口説き文句。
彼はそんな人ではない。でもそうとでも考えないと理解できない。
セピユロスは一体?
いつの間にか心奪われる。

               続く
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