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第二章 シアニン帝国~緑士ノ乱平定編~
闇の中の青龍①
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俺は白い光に包まれながら、浮遊していた。
小さな青い髪の少年を、3人の男が取り囲んでいる。
静かに近づいた。
3人の男のうち1人は見覚えがあった。シアニン帝国フサロ皇帝陛下その人だったのだ。残りの二人は青年と壮年の紳士である。風貌からフサロの若い頃のようだ。
声が聞こえてくる。
「余には、そなたの様な弱者は必要ない」
フサロが厳しい口調でそう言った。2人の男達も、それに同調する。ずっと俯いていた少年が、とうとう泣き出してしまった。
俺は、フサロに飛びかかった。
ボンッ!
風船が弾けたような音ともに、黒煙へと変化する。流れるように、左右の2人にもパンチをお見舞し、まとめて業火で焼き尽くした。
少年は突然の爆発音に驚き、頭を守るようにしてその場に蹲っていた。
「大丈夫か。お前、青龍だろ? 」
俺の問いに男の子がおずおずと顔を上げた。
「お兄さん、誰」
「俺はピロルだ。ピロロ姫の守護魔獣をしている」
お兄さん? そう言われて、手を確認してみる。五本の指、ツルツルの肌。それは、少し前まで見慣れていた、人の手だった。思わず、顔に触る。耳の位置や口と鼻の形は、間違いなく人の顔だ。どうやら、精神年齢をもとに具現化されているようだ。
少年が辺りをキョロキョロとしだした。
「フサロはどこ」
「ここは、お前の心の中だ。フサロはここにはいない。あれは、お前が作り出した幻影だ」
「嘘だ! フサロは言った。僕なんか要らないって! あれが、幻影なもんか」
少年は、キッと目を吊り上げて俺を睨んだ。これは一筋縄ではいかなそうだ。思念通話で本物のフサロを、精神世界に具現化できないか試みる。ここに呼ぶためには、フサロの色素を識別し、俺とリンクさせる必要があった。その識別が困難を極めたのだ。
とりあえず、時間稼ぎをすることにした。
「フサロはお前を心配していた。お前が黒竜として暴走したことを憂えていた。そして、何より、お前に戻ってきて欲しがっていた」
俺は青龍を刺激しないように、穏やかな声で言った。
少年の青い髪が逆立つ。
「だまれ! だまれ! だまれ! そんなの嘘だ! フサロはいつも、僕の存在を疎ましがっていた」
全く聞く耳を持たない。何処でここまで、すれ違ったんだ。完全に、お手上げ状態だった。
少年の隣で黒煙が具現化し、フサロが出現する。
「彼奴の言葉に耳を貸すな。余は、ずっと、そなたのことが疎ましかった。もっと、強い守護魔獣に隣にいてほしかった」
少年が大絶叫しながら目を閉じ耳を塞いだ。フサロが巨大な黒煙となり少年を飲み込もうとする。
俺は体を滑り込ませた。さらに、少年を屈ませ、抱き抱えるようにして守る。黒煙はドンドン広がり俺たちを呑み込んでいく。
完全に呑み込まれるギリギリのところで、フサロの色素識別とリンクに成功した。
視界が真っ暗になり、奈落の底へ引きずられていく感覚におそわれた。それはまるで、少年の闇の深さを物語っているようであった。
小さな青い髪の少年を、3人の男が取り囲んでいる。
静かに近づいた。
3人の男のうち1人は見覚えがあった。シアニン帝国フサロ皇帝陛下その人だったのだ。残りの二人は青年と壮年の紳士である。風貌からフサロの若い頃のようだ。
声が聞こえてくる。
「余には、そなたの様な弱者は必要ない」
フサロが厳しい口調でそう言った。2人の男達も、それに同調する。ずっと俯いていた少年が、とうとう泣き出してしまった。
俺は、フサロに飛びかかった。
ボンッ!
風船が弾けたような音ともに、黒煙へと変化する。流れるように、左右の2人にもパンチをお見舞し、まとめて業火で焼き尽くした。
少年は突然の爆発音に驚き、頭を守るようにしてその場に蹲っていた。
「大丈夫か。お前、青龍だろ? 」
俺の問いに男の子がおずおずと顔を上げた。
「お兄さん、誰」
「俺はピロルだ。ピロロ姫の守護魔獣をしている」
お兄さん? そう言われて、手を確認してみる。五本の指、ツルツルの肌。それは、少し前まで見慣れていた、人の手だった。思わず、顔に触る。耳の位置や口と鼻の形は、間違いなく人の顔だ。どうやら、精神年齢をもとに具現化されているようだ。
少年が辺りをキョロキョロとしだした。
「フサロはどこ」
「ここは、お前の心の中だ。フサロはここにはいない。あれは、お前が作り出した幻影だ」
「嘘だ! フサロは言った。僕なんか要らないって! あれが、幻影なもんか」
少年は、キッと目を吊り上げて俺を睨んだ。これは一筋縄ではいかなそうだ。思念通話で本物のフサロを、精神世界に具現化できないか試みる。ここに呼ぶためには、フサロの色素を識別し、俺とリンクさせる必要があった。その識別が困難を極めたのだ。
とりあえず、時間稼ぎをすることにした。
「フサロはお前を心配していた。お前が黒竜として暴走したことを憂えていた。そして、何より、お前に戻ってきて欲しがっていた」
俺は青龍を刺激しないように、穏やかな声で言った。
少年の青い髪が逆立つ。
「だまれ! だまれ! だまれ! そんなの嘘だ! フサロはいつも、僕の存在を疎ましがっていた」
全く聞く耳を持たない。何処でここまで、すれ違ったんだ。完全に、お手上げ状態だった。
少年の隣で黒煙が具現化し、フサロが出現する。
「彼奴の言葉に耳を貸すな。余は、ずっと、そなたのことが疎ましかった。もっと、強い守護魔獣に隣にいてほしかった」
少年が大絶叫しながら目を閉じ耳を塞いだ。フサロが巨大な黒煙となり少年を飲み込もうとする。
俺は体を滑り込ませた。さらに、少年を屈ませ、抱き抱えるようにして守る。黒煙はドンドン広がり俺たちを呑み込んでいく。
完全に呑み込まれるギリギリのところで、フサロの色素識別とリンクに成功した。
視界が真っ暗になり、奈落の底へ引きずられていく感覚におそわれた。それはまるで、少年の闇の深さを物語っているようであった。
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