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第十二章 分水嶺
⑩・国王、要らなくね?
しおりを挟む当時を懐古していたのはお祖父ちゃんだけではなかった。『逆鱗に触れたお館様を宥めるのは骨がオレオレで折れましたぞい』と相変わらずのザクワン節で当時の記憶を彩る。何食わぬ顔でお茶を啜りつつポロリ『ファーレン家の事件簿』と宣った。
‥‥爺ちゃん、楽しんでない?
取り敢えず後悔と懺悔と敵愾心のお祖父ちゃんを宥めて、やれやれ。
落ち着いたので今後の話となった。
「ティにラムよ、本気か? 公爵当主らは契約魔法の枷があるじゃろ? ‥‥方法があるのか?」
冷静な口調が妙な迫力を帯びてて、ヒュっとなる。
計画の破綻を予想させた以上、お祖父ちゃんなら、方法を知る俺達の協力が欲しいとこだ。今後の協力体制を話し合いたいはず。漸く、皇帝の念願?に王手が掛かるこの機会をみすみす逃がすとは思えない。恐らく使える者は誰でも使いたい心境なことと思う。立ってるものは親でも使えを知っている俺なら遠慮しない。
国王は不当な縛り血の盟約で歪な関係を築き上げ自分の守りを固めている。
契約魔法は見事に抑止力となってるけど、牽制し合うだけで不利益を被らない契約じゃなかったの?
聞いた話では、国王と当主達の関係は、ウィンウィンだって。
‥‥ソレ、違うよね。
俺の勘違い? 尋ねれば苦々しい表情の義兄は「二枚舌」と吐き捨てた。
成程。国王はただの卑怯者か。かなり失望したわ。
‥‥うん、もう国王、要らなくね?
俺のナケナシの愛国心は無残にも‥‥散った。
「契約は王弟を除いた四公爵」そう聞いたお祖父ちゃんは、王太子が未定の今「最も簒奪が容易い男は野放しだったのか」と首を傾げる。違和感を感じたようだ。
「一代限りの公爵位を賜った王弟は子を成しておりません。勿論、養子もです。悪評を覆すこともなく。後継を不要とし不甲斐なさを曝け出し貴族達から侮られていました。中には優秀な王弟の愚考は擬態だと妄信する者も現れ、一時期国王の不興を買っていましたね。裏の世界で名が知れる頃には国王の関心は薄れていました」
「うむ、余計な波風を避けたわけじゃな‥‥それでも嵐に呑まれおったか‥‥‥留学を終え帰国の際、兄王を助け国の繁栄にその身を捧げると誓っておったのじゃが、何があったんじゃ‥‥」
瞼の裏に当時の熱いジオルドの姿が浮かんでいるのか。今では悪事に加担した(疑惑)零落れたジオルドである。多分、いろいろ納得いってないよね、お祖父ちゃん。腕を組んでうんうんと唸りだした。
「‥‥国王の異常性が垣間見えるのう」
それな!
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