212 / 345
別視点
ダルの願いー②
しおりを挟む「若君、協力を申し出た身です。計画をお教え下されば私も動きやすいのですが」
恐る恐るの態で、話すダルの言葉で現実に引き戻されました。そうです、彼の話も聞かなくてはいけません。
「‥‥ダル、申し出は感謝いたします。その前に義母上との交渉内容を教えなさい。私の話はそれからです」
勿論、倒れても働いてもらいます。ああ、回復薬ぐらい飲ませますよ。遣い潰せば困るのは私です。それぐらいの分別はあります。
ふふ、優秀な彼の協力があれば仕事は捗るでしょう。良い人を寄越して下さってありがとうございます義母上。
「はい。公爵夫人からはお二方の安全と協力を。勿論、守秘の契約魔法を結びますので他言できません。私からは‥‥ジオルド様の、救出でございます」
「…‥仮初であっても‥‥主思いですね」
やはり彼のためでしたか。余程の恩義を感じてか、本来の潜入目的のためか。
「お前を派遣した義母上は元よりそのおつもりです。親の意を汲むのも子の役目。良いでしょう。だが、優先順位は私が決めます。いいですね」
「はい」
「守秘契約はギルガもです。同時に行います。ギウ、準備しておきなさい」
必要以上、手間暇かけたくないので、一括で終わらせます。
「ダル、あれから情報を掴みましたか?」
「…碌に得れずに申し訳ございません。本邸にも領地にも戻れず、ジオルド様の部下に紛れ込んでいた者すら特定できておりません。誰が味方で敵か、わからないのです」
情報入手が上手くいっていないですね。ダルは単独の諜報員でしたか。他に協力者はいない‥‥から私に。
「‥‥ふむ。手下については今更です。既に逃亡の可能性が高いですからね。それよりも動機です。殺人罪が確定と聞きましたが、その理由は? 供述内容は掴んでいますか?」
そうです。私と彼の御仁の接点は無きに等しいのです。二人の間に確執も何もない、動機が何か私としてはそちらが大変興味深いです。
「それですが公爵夫人の手の者の調べでは‥‥そ、その‥…」
「何ですか? 歯切れが悪いですね。はっきり言いなさい」
「…‥あのう、聞かれても‥‥お怒りにならないとお約束頂けますか、でないと私の口から申し上げるのは憚れます」
その物言い、イラっとします。
怯えた表情に、更にイラっとしました。
「…‥いいでしょう。話なさい」
「…あぅ、きょうがおれのめいにちかも‥‥」
よく聞き取れません。何ですか。顔色が悪いですよ。
「‥‥じょ、…‥ち、…‥ゴボッ、フゥ…。一人の女性を巡る痴情の縺れ‥‥と、もう一つは、ご子息が卑劣な罠により陥れられた…報復が動機と供述書にはあったそうです」
はっ?
「‥‥よくわかりませんね。謂れのない罪を被せられるのが冤罪ですから。ですがわかるよう言いなさい」
どうでもいいですが、ダル、額の汗が酷いですね。汗はしっかり拭わないと臭いますよ。レティの前で臭ったらハイデに消毒させますからね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
61
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる