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第九章 王国の異変
フードの男の正体は
しおりを挟む「農作物の育ちが悪くてなぁ 野菜の値が上がっちまったんだ。おまけに贔屓の行商人達が来なくなっちまって困ってんだよ」とは亭主の言葉だ。
領地経営は領主の采配で如何様にもなる。
領民を困窮させない為に手腕を振るうのも領主の役割だと俺は親父から教わった。その親父の背をみて育った俺には、この悲惨さに胸がモヤる。
俺達は掛ける言葉が見つからなくて苦い想いを味わっていた。
この雰囲気の中で食事をするの‥‥勇気要るぞ
人目を考慮して一番奥の端の席に座っていたのだが、新たな客である男達の目を惹いたらしい。ズカズカ近付いて来る。
彼等はこの領地の私兵団の者か、騎士服着用の上に帯剣していた。
その彼等がまじまじと俺達‥‥ではなくて俺とハイデさんに注目している。
‥‥目つきがイヤラシイと思うのは自意識過剰じゃないよね?!
不躾に舐め回す視線が痴漢されたと錯覚させる。ごっつう胸糞悪うっ!
その視線は昼食に来た人が見慣れない俺達を思わず見てしまった‥…のと違う。ニヤニヤと下卑た笑みに寄越す視線は値踏みと視姦。
セ、セクハラ反対! はんたーい!
「おい、亭主来てやったぞ!」
「あ~腹が減った!」
「へっ、へい! いらっしゃいませ。す、直ぐにご用意しやす!」
過度に怯える亭主の姿が【店に嫌がらせをしに来たチンピラとビビる亭主】に見えて涙を誘う。
そのチンピラさを板につけた二人は態々俺達の隣に座した。これって、いちゃもんつける気だよね、君達!
「へぇ~美人じゃねぇか。お前、俺達と同席しろや。俺らの服装を見てわかるだろ? 素直に言う事聞きゃぁ、痛い目には合わせねえよ」
「おう、そうだ俺達とちょっと良い事しようぜ~。都合よく女二人いるじゃねえか。丁度いい、上は客室だ。寝台があるしな! わははは」
‥‥やっぱり! このチンピラめ。
雑魚セリフを言ってのけた男共を蛆虫を見る目で睨むハイデさんが…超怖っ!
フードの男は肩をピクリと動かす。ぶわっと放った気迫に圧倒された俺達は余りにも尋常ならぬ気に充てられ身を震わせ竦ませた。
魔力は無いと聞いていたが‥‥母さんの威圧も圧倒的な強者のオーラだけど、この男も負けず劣らずめちゃくちゃ怖い!!! 威圧‥‥?! じゃねえよ! 殺気だよ!
なにこいつなにこいつなにこいつなにこいつ!
悪魔? 魔王? 何者?!
向けられた殺気はチンピラ騎士を直撃か。ガチガチガタガタ歯を盛大に鳴らし震え捲った二人は卒倒しそう。
何かねぇもう殺気だけで人殺す勢いなのこの人。
敵味方関係なく殺っちゃう勢いなのこの人。
現にハイデさんももう一人のフードの男も竦んじゃって竦んじゃって。
あれじゃ‥‥身動きできないわ。
ギルガは辛うじて手を動かそうと頑張ってる。
俺? 俺は‥…めちゃくちゃ怯えてビビり泣いてます。
恐怖の渦に突き落とされるってのを生で味わってます。
でも、この恐怖‥‥こいつの気迫に覚えが、既視感が。
これ‥‥確か以前にも…‥あっ?!
「お、お義兄様?!」
「!」
めちゃくちゃ震えた声で呟いた俺の言葉にフードの男が驚いたのがわかった。直ぐ様、放たれた気を収めた男がポツリ。
「すまない。レティ‥‥」
やっぱり! お前かよーーー!!
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