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第八章 出揃った駒

金の為?

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ライオネルがまた懸念を口に出す。彼はこうやって情報を共有させ考えられる危険を教えてくれる。



「騎士達は明らかに奥様とお嬢様を拐かどわかす気だったのでしょう。奥様はザックバイヤーグラヤス公爵夫人であられますが帝国貴族のお方です。しかも皇族の御血筋。第一騎士団であれば奥様の背景は知っていてもおかしくない。なのに奥様まで攫おうとしました。お嬢様を狙う犯人とは別の者がいると考えられませんか」



うわぉ、そう言う考えもあるのか。

レティエルが狙われ過ぎてて考えが鈍ってたわ。そうなると、どうなる?

禄でもない可能性が頭に浮かび気分が滅入る。



「‥‥公爵家で魔力をお持ちなのはお二方です。その線も考慮されてみては如何でしょうか」とはダルの指摘。



魔力を持っているから狙われた? ただの金目的の誘拐じゃない?



「そうですねその理由ならば騎士達が人身売買組織を視野に入れていたのも頷けます。旦那様に身代金を請求し、その裏で組織に渡す。非道な行いで許せませんが明らかに公爵家を狙っての凶行だと思われます」

ライオネルが金目当の騎士の悪行に憤慨しながら同時に公爵家に与える打撃も教えてくれる。これ考えた首謀者ってえげつない。血も涙もない奴だ。



‥‥レティエルだけでなく家もかぁ。



「‥…ダル、貴方まだ話していない事があるでしょう? 全て教えなさい。ああ王国内だけでいいわ。帝国情報を流すのは不味いのね?」



うううう母さんめっちゃ機嫌悪! 





騎士から聞き出した話の続きは、ジオルド邸に内通者が居たことを示唆する。

俺達がジオルド邸にいたのを事前に知らなければ取れない行動だった。それを証明するかの如く副団長は捕縛当日の朝、公爵家の女二人を攫うよう金を積まれた。肝心の女には護衛が二人しかおらず、しかも訳アリ。犯行に及んだところで公に出来ない、黙って身代金を出すしか手はない状況だからと誘拐計画を持ち掛けられたと言う。それ以上の金が欲しければ奴隷として売ればいいとアドバイスまで受けたのだと。とんでもなくふざけた話だった。



残念ながら騎士達は主犯の人物を知らない。

見知らぬ男に大金を積まれ、金持ちになりたいのならと手っ取り早い大金の稼ぎ方のアドバイスと共に犯行計画を持ち掛けられた。副団長と仲間は金欲しさに引き受けたなどと騎士に有るまじき行為を白状した。



(でも、こんな奴等でも貴族、由緒正しい貴族、腐っても貴族なんだよな)



犯行に及んだ背景には彼等の境遇が。

将来性のない自分達を憂い、半ば自暴自棄と思える犯罪行為を繰り返した彼等に同情の余地はあるのか。



貴族子息であっても長男以外の将来は不安定。長男が跡目を継げば身分が無くなる。運が良ければ家の余分に持つ爵位を貰えるかもしれない。無ければ一代限りの騎士爵である準貴族位まで落ちる。金を積めば余った爵位を他の貴族から売って貰える可能性は無きにしも非ずだ。そんな境遇の自分達に不満を日頃から持っていたのだろう。



奴等から見れば生粋の王国貴族ではない俺と母さん、おまけに財源豊富な領地を持つ公爵家だ。乗らない手はない、そう安易な思惑で犯行に手を染めたのだと。呆れた。呆れすぎて冷静になれた。彼等に報復しても何の解決にもならないのだ。黒幕を引き摺り出さないと意味がない。

犯罪行為を後押ししたのが彼等の差別意識。魔力持ちはこの国に不要だと言う彼等に憎しみの意を感じたとダルは苦々しい表情で報告する。


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ちょこっと補足です。

公・侯・伯・子・男爵までが貴族。騎士爵は一代限りで身分は準貴族扱いです。功績を上げるか金で買うか(下級)で爵位は手に入ります。
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