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第八章 出揃った駒
緊迫してたよね
しおりを挟む緊迫状態が続く。俺の緊張は高まり上手く魔力を動かせないでいた。
強心臓の母さんはどうだか知らないけど、多分平気なんじゃないかな。
むしろ喜んでそう。
…‥‥‥‥気になる。
めちゃくちゃ気になる。
一触即発の状態なのに、緊迫した状況なのに、身の危険なのに。
…‥気になるのだ。
何がって?
俺の目端に映り込む男の手振りに意識を持って行かれるのだ。
ダルの横で傍観していた御者の男が、イヤ男の動きが気になるのだ。
知らない間に馬車からダルと御者は離れて俺達の近くに来てて、全然気が付かなかったけどダルもこの男も素人じゃないと思う。かと言って騎士かと言われれば良く分からない。正体不明な二人だけど‥‥敵だよね?
敵認定していいの? でもそれより御者の動きが気になって判断が出来ない。
‥‥ちょっとその動き、何なの? 何か前世の野球監督のサインみたい。手振りがソレっぽい感じで俺の目端に移り込むもんだから、めちゃくちゃ気になって気になって。目で追ってしまう。
…‥ねぇそれ何か意味あるの? ねえ、ねえってば!
最後は指パッチン×2してきたよ此奴。何なの一体。
多分、護衛も母さんも目にしたと思うんだけど、スルーかよ。まあね、今そんな事に突っ込む暇ないよね。御者のおかげで緊張は和らいだのは良かったんだけど気が抜けてしまった。
…‥冷静になれたからいいか。いいのか?
「騎士様、お急ぎ下さい」
急かしたのはダルだ。これで裏切りは確定したな‥‥うう、ショックだよ。イイ人だと思っていただけに敵だとは、残念だ。
「…‥‥あ、ああ‥…そ、そうだな。そうしよう」
ん?
「お前達、命が惜しくば大人しく馬車に乗れ。護衛もだ」
んん?
「副団長! このまま行かせて宜しいのですか!」
「ああ、構わない。此方には人質がいる。俺とお前だけで充分だ。後の者は邸の監視に戻れ。いいなこれは命令だ」
「「「「はっ!」」」」
「私と二人でですか? ですが‥…せめて此奴らの武器の回収と拘束をさせて下さい」
んんん?
副団長の態度が軟化して緊迫の場面が嘘のように和らいだ。護衛達も大人しく従うと決めたのか従順の姿勢を見せる。母さんも異を唱えない。何で? 俺の疑問は高まったがこの場の誰もそれに応えてはくれない。何が起こった? 君達今の今まで睨み合ってたよね。母さんも。
戸惑っているのは俺と同行が決まった騎士の二人だけ。
流れ作業のように淡々と進むのを黙ってみるしか成す術がない。拘束された護衛と俺達四人は仲良く一緒の馬車に乗せられた。護衛の二人は恐縮しまくりで見ているこちらが申し訳なくなる。とても拘束され何処かに連れて行かれる人が取る態度じゃないよね? さては君ら、何か知ってるな?
後の面子‥‥副団長と母さんに刃を突き付けていた騎士は用意された馬に騎乗し馬車に並走し、それ以外の騎士団は副団長の命令通りに引き上げる。
こうしてこの場の騒動は終焉したのだが何とも腑に落ちない結末に俺は不満を募らせる。ちょっと君達、後で口を割って貰うからね!
それまで縛られていなさい!
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