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第七章 それぞれの思惑
ある日の会話
しおりを挟むライムフォード殿下とランバードの留学時代、殿下視点です。
レティエル断罪イベントの一年ぐらい前のお話。
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「君の話を信じろと?」
「俄には信じられませんが貴女は何故私達にその話をしたのでしょうか」
「信じられないのはごもっともだけど、真実です。私が他にも言い当てた事ってあるでしょう? こればかりは信じてもらうしかないとしか言えないわ」
ある日の放課後共に行動していた私とラムドは一学年下の少女に重要な話ですと呼び止められました。私の記憶が正しければ初対面です。ですが堂々と私に話しかけてくる強者の少女に少々面食らいました。礼儀も知らぬ厚顔無恥です。
突如始まった厚かましい少女の話。信じてと両手を胸辺りで組んで上目遣いに見つめてきますが、これは‥…うっとおしいです。
ラムドは私を守ることなく汚物を見るかのような視線をぶつけてきます。遠慮なしです。
それよりも話の内容に驚かされました。帝国出身であろう少女が他国の事情を‥‥我が国の内情を語るのです。
目的を、いえ、望みを言わずに自分を信じろと詰め寄ってくるのです。彼女の行動原理が意味不明で不気味ですが私も王族の端くれ、噯にも出さず対応しなければなりません。嫌ですが。
信じろと言われ、では信じましたと答えたその後は?
私が欲しいのはその後の言葉です。
貴女の目的を述べて頂きたいのです。
それにしても少女の狙いは何でしょうか。
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「ラムド、先程の話をどう思いました」
私はランバードに先程の得体の知れない少女について意見を求めました。
「どう…‥でしょう。彼女は入学時より言い当てを行っていたかと。だが個人的な話ばかりでしたから過去の話を判断材料とするには些か物足りないでしょう」
「でしたね。ですが一蹴してしまうのも如何なものかと思ってしまうのです」
「ふむ。確かに我が国にとって聞き捨てならない話でした。それを我等の耳に入れるとは些か度が過ぎた行ないでは? 苦情申し入れましょうか」
「それねぇ‥…悩むところです。他愛無い少女の戯言と終わらせていいのでしょうが、彼女はあの能力を持つ者として認知され始めています。発言の重みに対して責任と自覚を持ち合わせているのでしょうか。甚だ疑問です」
私とラムドは件の少女の言動に些か頭を悩ませてしまいました。
思惑が読めない相手‥‥と言うよりも話が通じない相手と評した方が早いです。
「仮に公言された場合、外交問題に発展しかねませんね。それを理解しているのかいないのか分かりませんが、親切心だとは思えません。油断せず暫く様子を見ては如何でしょう」
「そう‥‥それが良いのでしょう‥…」
私は心に引っ掛かりを覚えラムドには歯切れの悪い返事で心情を悟らせました。
「気が進まないのですね、でしたら彼女に語らせば宜しいのでは。細部まで聞き出した後で判断しても遅くはないでしょう」
やはりラムドは私の気持ちを慮ってくれます。
そうですね、のこのこ此方に近付いて来たのですから、彼女の思惑は分かりませんがこの際、使えるかどうか判定しても良いですね。使い勝手が良ければ、私の駒にしてしまえば良いだけの話です。勝手が悪いと分かればそこまででしょう。
‥‥外患誘致を企む不届き者の存在を示唆する彼女。
固有の能力『先を見る』を持つ少女と噂された彼女の力は本物でしょうか。
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