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目覚める前の遣り取りー③ 【導師視点】
しおりを挟むこの教区にあった薬は低ランクの回復薬。確かにこの薬は安くないのだがこの領地は魔物の被害が少なくは無かった筈だ。結界は外の魔物を寄せ付けないだけで国内の魔物まではどうしようもない。僅かな個数の薬を前にして『今までこれで?』と俄には信じられない現実を見た。
――薬、魔力減少の際、手っ取り早く回復させなければ命に関わる為、回復薬が処方される。これは魔力と体力を回復させるのだがランクにより効果は変わる。低ランクだとそこそこ上がる程度だ。それこそ応急処置的で急場凌ぎにしかならん。ここの状況を思えば仕方のない事なんだろう。
俺はじっくり眠ったままの坊主を診る。本当に生きているのが不思議なくらい魔力がギリギリでいやがる。このガキ、昨日の側定で教会に引き取り予定のガキだよな? 元気のいいクソガキだった筈だ。今の様な萎びた瀕死の姿になるなど普通では在り得ない。
‥…何があったんだ。くそっ! 当事者たちがこれでは話も聞きゃあしねえ。全く面倒くせえ。
俺は注意深く診察を続け、特に体に異常はなかったので今はこれで良しとした。
‥‥どの道、意識の無い状態ではわかるもんもわからねぇ、仕方ない。
✿
孤児院長が失踪して今日で三日目。
…‥人手を割いて探しているが見つからねえでいやがる。くそ! イライラするぜ、ああ、酒飲みてぇなぁ
苛つきと喉の渇きを酒で潤したくて堪らん俺は傍らでぐうぐうイビキかいて寝てやがるクソガキに、イラっとしていた。こいつさっさと起きやがれ! 殴れば起きるか?
外見上の異常はない。だがこうも眠り続ければ若干心配だ。治療魔術も魔力を食うからこの教会では大変だろう。今は俺の魔力があるから問題は無いが。
坊主は昨日目覚めた。まだ安静中だが意識もはっきりしているし会話も出来る。あれなら暫く安静にしていれば大丈夫だろう。ただ記憶の一部が欠けていたのが気になる。ショックからなのか、それ以外の要因なのか。まだ判断が尽かない。この二人の間で何かしら揉めるような事でもあったのか、それともふざけただけなのか。理由は分からんが魔力を放出したのは間違いない。でなければ二人して魔力減少‥‥一人は生命量ギリギリまで失うことは無い。
(この事件、神官は肝心な時に不在で事情を知らない。切っ掛けとなった孤児院長も何故か行方不明。当事者の一人は記憶の欠損、もう一人は未だ目を覚まさないでいる。俺がいながらこの様とは、くそ腹が立つ。酒を飲まなきゃやってられねえぜまったく。これから二人から聞き出さなきゃならんてのに)
不可解すぎるこの状況に頭を悩ませながらもう一人のクソガキの目覚めと姿を消した孤児院長の消息を知らせる報をイライラしながら待つしかない。予定ではこの領地を出立して次の領地で馴染みの女と親交を深めていたのに。予定外の出来事でショボい教区に足止めされ今はガキのお守りだ、遣る方ない。
‥…チッ! ガキは嫌いだ。
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