目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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目覚め

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 「起きたか。おい、わかるか?」


 (ひぇっ! な、なにごと!?)


 ‥‥目を覚ましたら無精ひげのオジサンの顔が。いきなり見覚えのない顔だったので焦った。変質者かとビビってたら、アレだ、自称師匠さんだった。それに、師匠って言い方やだな、芸人っぽいなんて考えていたらめちゃくちゃ不機嫌な顔で睨まれた。ひどぉ。


 「おい、ガキンチョ、起きたか」
 「…‥‥‥‥はい、おはようございますぅ?」

 良く分からないけど取り敢えず挨拶しておこう。挨拶は基本だよね。

 「ちっ、呑気だな、まあいい。ところで覚えているか?」

 挨拶どころか舌打ちしたよ、このオジサン! ガラが悪いなぁもう。挨拶されたら返すのが礼儀でしょ。ホントいい大人なのに。

 「はぁ‥‥何をですか? って言うかオジサンなんでここにいるんですか?」
 「お前‥…答えろ、何を覚えている」

 ちょっと怒ったような顔で聞いてくるけど、何のことか。

 「いやだから何がですか‥…何が聞きたいんですかオジサン」

 寝起きに要領を得ない質問はくるな。イラっとくるのだ。お互い不愛想なまま見据えているとオジサンが苦虫噛み潰した顔で口をモゴモゴ。その素振りオジサンでは可愛くない。

 「…‥‥‥ラグサスだ」

 えっ? なんて?

 「は? 楽さす? え?」

 聞き取れずに聞き返したのだがそれがお気に召さなかったのか

 「チッ、師匠と呼べ。オジサン呼ばわりは止めろ、俺はまだ若い」

 呼称の訂正を求めてきた。若いって私からしたらオジサンだよ。

 「‥‥‥‥‥‥‥‥やだ」

 師匠だなんて絶対認めないんだから! 

 「クソガキ、お前…」

 オジサンの睨み顔、怖いよ。


 理不尽なオジサンの要求に身震いさせていたら扉を叩く音が。返事を待たずに扉を開け入って来たのは、マジシャン神官。ん? マジック神官? どっちでもいいか。私に魔力を教えてくれた神官さん。朝からなんだろう? 


 神官の表情は憔悴しきって目の下に隈まである。不健康っぽいのだ。

 「目覚めたのですね。本当に良かった」

 私の顔を見てホッとした表情が印象深い。でも露骨な安堵はなぜなのか思い当たる事が無いだけに不思議な気持ちで神官を見つめた。

 私の考えを読んだか

 「貴女は三日も寝込んでいたのです。心配しました。どこか痛みませんか。気分はどうでしょう。気持ち悪いなどありませんか」

 矢継ぎ早に出された労わりの言葉に軽く引きながら耳にした言葉の意外さに途轍もなく驚かされた。

 ‥…へっ? 驚いた!! 三日も寝ていたなんて! マジで三日も寝てたの? 

  三日も寝っぱなしの事実に驚いたけど、それよりも気になる事がある。幾ら寝ていても三日となれば‥‥尿意とか諸々あるでしょ排泄物。

 それ一体どうしてたの? 意識の無い間ってどうなってるの? 点滴とかしてなさそうだし、私、ここで寝かされていただけなのかな? ちょっと色々聞きたいんだけど‥…まさかおむつとか…‥うん、手探りで確かめたらしていないしていないおむつじゃない。ちょっとそれにホッとしながら諸々の事は羞恥心で聞けやしないので気付かない事にした。

 乙女の尊厳が守られていればそれでいいのだ。

 私は恐ろしい事実確認を避け内心羞恥に悶えながらオジサン達の話に耳を傾ける。でも本人に記憶がないからそんなに寝ていた気はしないけど普通に考えれば寝れないよね? やだ! 私どっか悪いのかな? 深刻な病気?


 ‥…でも私、何で三日も寝てたんだろう。
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