目が覚めたら奇妙な同居生活が始まりました。気にしたら負けなのでこのまま生きます。

kei

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八つ当たり君

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 「なんで、なんでお前なんだ!」

 一人ぼっちと思っていた部屋に響き渡る男の子の大きな声に驚いた。振り向けばあの騒がしく八つ当たりをしてくる男の子が扉の前に突っ立っていたのだ。ちょっとビックリ。

 「‥‥…‥何か用?」 聞かなくても分かるんだけど一応ね。
 「お、お前が悪いんだ! お前さえいなければ俺が‥‥俺だったんだぞ! なんでお前なんだよ‥‥」

 相変わらず同じセリフに正直ウンザリだ。また絡まれたよ。八つ当たりばかりする男の子、ああ、八つ当たり君でいいか。彼の名前……はて? 聞いたようなないような。もういいや八つ当たり君で。
 
 彼は選考結果が気に入らない。うん、それは私も同意見だ。気が合うね。だからと言って決定権の無い私に食って掛かるのは間違い。オジサンズに言うべき話なのだよ、八つ当たり君。

 それに君の言う『俺が選ばれる』はちょっとどうかと思う。だって選ばれた子はもう一人いたんだよ? 彼女も『選ばれて悪い』人ではないの? そう思うものの私には見当が付いている。八つ当たり君は自分より口が達者な彼女‥‥ルイちゃん。孤児院の年長さんで小さい子達の面倒を見てくれる。お姉さん的な存在で私も偶に世話になる。そのルイちゃんに口喧嘩では負けるのだ。だから自分より弱っちそうな私に対しては強気な態度が出来るのだ。こんな子供のうちから小物臭漂わせて。お姉さんは悲しいよ。きっと疚しさがあるから誰もいない今を狙って来たんだろうね。それにしても幼児の私を狙うとは案外性格の悪い子だ、根性悪か。

 (さて、どうしたものか。私が慰めたとしても納得しないよね)

 多分だけど選ばれるのは自分だと思い込んでいたのだろう。それが外れたのは私の所為ではない。‥‥のだが八つ当たり君は納得できないで不満を私にぶつけてくるのだ。これは本当にいい迷惑ではなかろうか。私の方こそ『お前が悪い、お前の所為だ。お前がちゃんと選ばれなかったのが悪い』と声を荒げたい。

 ‥‥大人だからしないけど。これはお互い様なんだよ。




 「なんでお前なんだ‥…お前さえい・な・く・な・れ・ば・俺が‥‥‥」

 ゆっくりと歩み寄る姿も、声も、何だか様子がおかしい。
 薄暗い廊下から明るいこの部屋に入ってきたにも関わらず、彼の周囲は薄暗くて黒っぽい。男の子を薄い黒っぽいモノが覆っている。

 (うわぁ、この子、煤汚れてる! ヤダー、煤撒き散らさないでよ)

 八つ当たり君の歩みに合わせる様に煤がゆらゆら、ゆらゆら揺らめく。その揺らめき方はロウソクの炎を思わせる。揺れながら自己主張する様はまるで生き物だ。

 彼が一歩一歩と近付くにつれ煤は段々と黒い靄状と成り周囲に広がり行く。これだと私も薄汚れる。何という嫌がらせか、これは憤慨ものだ。

 (ちょっちょっと! 煤、舞ってるよ! 動かないでジッとしてて!)

 

 「俺‥…おまえいなく…なれ‥‥いな‥…ければ、おれぇがぁ」

 スローな動きだが両手を私に向かって差し出す様は、前世見たゾンビ映画だ。
 ‥…ゾンビっぽい。目を凝らして見ると彼は口から涎を垂らし目が虚ろ。まさにゾンビの動き。彼は一体何がしたいのだろうか。おふざけにしては笑えないな八つ当たり君は八つ当たりだけではなく嫌がらせまで始めたのだろうか。



 「グフゥ、ガハッア、ううぅ…まえ‥‥わるう、ゲフェ」

 (うぇぇ吐く? 吐くの? ここで吐いちゃダメだよーー)

 吐かれたらゾンビがエクソシストになる。それだけはマジ勘弁。
 食べ過ぎなのかと彼のお腹の具合を心配したのだが、どうも様子が変だ。嗚咽にうめき声、呂律も回らない彼の状態が異常なのだと気が付いた。
 

 そう、今、気が付いたのだ。

 (これは大人を呼ばないと駄目なやつだ。急いで人を呼ばなくちゃ)

 緊急事態だ、急がないと! と気は焦る一方なのに何故だか自分の身体が動かない。自分に異変を感じたのだが、どうやら遅かった。

 (えっ? う、動かない!? 嘘! なななんで?)

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