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何てこった!

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 彼の動きに合わせて蠢く黒い靄が間近に迫る。煤だと思っていたソレは煤とは違う。とても気持ちの悪いモノだ。自分の目が異常でなければ在り得ない現象を目撃している。煤だったモノがまるで生き物の様に蠢いているのだ。

 何てこった! 超常現象Again!



 ゆっくりと歩み寄る八つ当たり君の異常さに気が付いたがこれはトンデモナイとばっちりではなかろうか。

 異常な現象を目撃しておきながら…と言うより巻き込まれているのだが、どこか他人事で現実を受け止め切れていない。八つ当たり君はどんどん異常さを増したではないか。


 「わわわ! こっち来ないでーーーだ、誰か助けてーーー!」

 身体の自由はないが声は出せる。こうなりゃやけだ。

 「きゃああああああああああああ!!」

 子供の高い声で叫んでやったが、神官さんいい加減戻って来てよ! 一体何処迄行っちゃったの?! 泣きたいのと恨めしいのと怖いのと気色悪いので情緒が忙しい。誰でもいいから助けて欲しい。

 未だ自分の身体が動かない。手も足も指先だって動かない。空間に縫い付けられたみたいだ。もう八つ当たり君は目の前で私の首に手を掛けようとしているじゃないか。何で誰も来ないんだ!

 沸々と怒りが湧いた。怒り、妬み、憎しみ、悔しさに絶望。そんなマイナスな感情に自分が包まれると感じる。私はこの状況に陥った元凶に、有無を結わさぬ師弟関係に、子供を捨てた親に、孤児となった不幸な自分に、そして全ての理不尽さに怒りが湧いたのだ。


 ‥‥何故、私が、私なの? 私が何をしたって言うの? 何もしてないじゃない! なんで恨まれなきゃならないの? 選ばれた私が悪いの? 選ばれない方が悪いんじゃないの? なんで捨てられたの? 捨てた方が悪い! 選ばれないのが悪い! 私は悪くない! お前が…お前が悪いんだ!!!

 これは私の感情なのか、誰の感情なのか分からない。頭の中がぐちゃぐちゃと色んなネガティブな感情が混じって辛い。頭も痛い。苦しい。

 苦しいのは首が絞められているからだ‥‥どこか遠くで誰かが教えてくれた。今私は命の危機にあるのだと。でも私は自分が自分でない感情に引き摺られて何も考えられないでいた。ただ首に誰かの力が込められているのを黙って受け入れているだけだ。


 (‥‥‥オ…イ、タ…‥テ‥‥ロウ)

 だ、だれぇ

 (…スケ‥‥ヤロ‥‥カ…‥)

 な、なにぃ

 (オイ…‥ケテヤロウ…‥ヨコセ…オマエノマリョク)

 ‥…‥‥‥‥

 ( 笑 タスケテヤル)


 脳内に響く音の無い声が笑った。

 そう感じたのを最後に私は意識を完全に失くした。
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