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邂逅
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しおりを挟む「確かに……ドラマとかも親父がこんな店に通って母ちゃんと喧嘩してるな」
「そうだろ?普通の親父はここに来ねぇんだよ」
「けど、この前部屋で茜とヤっちまった……
そういうのも控えた方がいいのか?」
「当り前だろが……」
性に対する認識は悉くすれ違い、虚しくも理解する。
あきれ顔のおっさんに見送られながら、夜の街に背を向けた。
その途中、好みの女の子に誘われて理性を捨ててしまった事は内緒にしよう。
「ただいまー」
すっかりと朝日が昇り、眩しい太陽に照らされて軋んだドアを開ける。
乾いた鉄の音を鳴らして扉は動くと、そこにあいはいた。
「―――え、何してんの?」
「………」
「あい?どうした?」
「………っ」
「おいおい、とりあえず座れよ、なんで立ってんだよ」
あいの手を取り、玄関から離れようとしたその瞬間。
拒絶が、俺の手を払った。
「どこかに……消えたのかと……」
「は、何言って―――」
「あさッ…おきたら、誰もいなくてっ……それでッ……」
「あ、い……?」
「―――ごめん、なさい……」
なぜだか、おっさんの言葉が脳裏を過る。
『ちゃんと一緒の時間を過ごしてやれや』
当り前の事を言われ、当り前の様に悪い方向へと事態は進む。
それも当り前だ。
会って初日のダメ男が、何もせずに朝まで遊び惚けていたのだ。
そんなの聖人だって怒るし、神様だって呆れる。
「……すみません、なんでも、ないです……」
だというのに、あいは俯いて何も言わない。
怒る訳でもなく、呆れる訳でもなく、少しだけ声を荒げただけ。
その時、俺は織田の話を思い出す。
『詐欺師についての内情だけど、あいくんには話さないでおこうと思う、
まだ子供だし、詳しい事を説明しても中々理解できないと思うからね』
『は?それだと訳も分からないまま、訳のわからない男といきなり生活しろ、
って言われているもんだぞ、いくら子供でも納得しねぇだろ』
『そこについては僕からきちんと説明するよ、けど、問題があるなら
ようくんの口からきちんと詐欺師について話して貰って構わないよ』
『なんで俺がそんな面倒な事を―――』
『そりゃ、ようくんが一時的な保護者であり、詐欺師だからだよ』
いつだってどこだって、俺は嘘を付く詐欺師。
ならばせめて、その嘘をもって言葉を紡ぐ。
「悪いな、あい」
「え……」
腰を下ろし、目線をあいに合わせる。
これから一緒に生活する上で、いつかは確かめなければいけない事。
騙されない体質というのなら、実際に確かめるまで。
ならば、この力で騙そうじゃないか。
「何があった、言ってくれ」
制御している魅了を、強くする。
アイコンタクト、体の接触、声を聞く事や俺自身を視界にいれる。
それだけで完結してしまうこの力は、間違いなく発揮された。
「―――……」
僅かな静寂、それと呼吸の止まる音。
互いに固まって視線を切らず、束の間の数秒が流れた。
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