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03.

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 その後手際よくタクシーを捕まえた宮川は自宅の住所を運転手に告げると、目的地にたどり着くまで亜美の手をぎゅっと握っていた。その間二人の間には会話はなく、お互いに窓の外を見つめるだけだった。
 宮川の部屋は中層階マンションの七階だった。周りの家と比べると比較的築浅なのかデザインもセキュリティも新しかった。手を引かれるまま宮川の部屋の前にたどり着く。
「あの、本当に……?」
「ここまできて、やっぱやめるはなしだろ」
 振り向いた宮川の瞳は熱っぽく、亜美は覚悟を決めた。よくよく考えてみれば宮川だっていい男だ。能力はあるし、顔は良い方だし、少しだけ性格に難はあるけれど、同期として飲んでいる間は心地が良い。
「どうぞ」
「お、お邪魔します……」
 まだほんのりと熱い頬を抑えながら亜美は玄関に入る。ドアの閉まる音がして、ガチャと鍵の閉まる音が聞こえた。
「んっ……」
 すると靴を脱ぐ間もなく宮川が後ろから抱きしめてきた。振り向けば唇を塞がれて、肩から持っていたバッグがずり落ちる。舌を絡め取られ、上顎を舐められると気持ちよさに力が抜けていく。
「はぁ……いきなり、すぎるよ……」
「俺は結構タクシーの中でも我慢してた方だけどな」
 離れた唇から銀糸が引くと亜美は手の甲で唇を隠す。その間も宮川は服の上から亜美の体を撫でて、その手つきが亜美の体を熱くさせていく。
「このままベッドに行くけどいいよな」
 耳元で囁かれると、脳に直接響いて全身がぞくりとする。本当はシャワーを浴びたいと思ったけれど、宮川に反抗できるわけもなく亜美はただうなずいた。
 部屋の間取りは広めの1LDKで、キッチンとリビングが分けられていた。あまり生活感のない部屋に家に戻ってないと噂されているのは本当なのかもと思ってしまう。
「ん……あっ、はぁ……」
 リビングに繋がっている寝室に抱きかかえられながら連れてこられるとベッドに押し倒された。キスをしながら宮川は亜美の服を脱がしていく。
「ずっと思ってたけどさ、お前結構胸でかいよな?」
 シャツのボタンを外しながら宮川が笑う。くつろげられた胸元にちゅ、とキスをされるとふわりと宮川の香りが鼻孔をかすめた。
「ブルーの下着か。悪くないと思うけど、赤とか黒も似合うと思う」
「なっ……」
 じっと下着を見たかと思うとブラジャーのホックを外されて締め付けられていた胸が開放される。
「ふ……いいんじゃないか。俺はお前の胸の大きさ、好みだよ」
「んっ……」
 そう言うと宮川は亜美の胸をやわやわと揉みながら真ん中の蕾みを口に含んだ。亜美は文句の一つでも言ってやろうかと思ったのに、舐められた箇所に全神経が集中してしまったかのようになる。
「は、あっ……」
「感度も俺好み。多分こっちも……」
 すっと手が亜美の下半身をなぞる。下着の上から触られるだけで、自分でもどうなっているのかわかり、足を閉じてしまう。
「あ、そこ、は……」
「なぁ、もうこんなに湿ってる……」
 艶やかな声でそう囁かれて亜美はもう、降参するしかないと腹をくくった。宮川の手つきも声も、すべて亜美の体は反応してしまう。ないと思っていた相手に、こんなに翻弄されてしまう。
「多分さ、俺たち相性いいと思う」
 宮川がぐっと腰を押しつけてくる。その熱に亜美は心臓がどくんと音を立てたのがわかった。
「やっぱり、試してみるのも重要だよな」
 楽しそうに微笑んだ宮川を見て、亜美は宮川に手を伸ばす。熱に浮かされた意識の中で、覚えているのは宮川の興奮している姿と、自分でも驚くほどに乱れた声が出ていたことだけだった。
朝になると亜美は気まずさでいっぱいになりながらも、宮川との身体の相性は悪くなかったと昨晩のことを思い出した。けれど、宮川はいたって普通の態度で、本当にあの夜は現実だったのかとさえ思ってしまうほどだった。
『悪い、基本家でメシ食わないから大したモンない』
『え、あ、これだけあれば充分だけど……ありがと』
 目が覚めると宮川の姿はそこにはなく、リビングで朝食を作っていた。テーブルに並べられてるのはおにぎりと味噌汁。漬物がいくつか並んでいて、何もない割にはそこそこのメニューだった。
『おにぎりは鮭と梅干ししかないけど』
『いや、充分……』 
 亜美は自分の家だったらと考えるとこれだけのメニューが出せるか正直自信はない。ただ家にあまり帰らないだけで家事スキルが低いわけではなさそうな意外な一面を見たような気がした。

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